A.N.JELLのメンバーは韓国版以上に桜庭美男(瀧本美織)に執心で、恋の五角関係を盛り上げる。桂木廉(玉森裕太)はツンデレである。藤城柊(藤ヶ谷太輔)は美男の廉への想いを知りつつ、「廉の誕生日はナナちゃんが祝ってくれる」と言う黒さも見せる。本郷勇気(八乙女光)はトオル(楽しんご)という日本版オリジナルのオカマを絡ませることで、男性を好きになった微妙な心情を浮き彫りにする。そして美男に嫉妬の怒りを向けるNANAが韓国版とは別次元の怖さを見せた。
韓国版のNANAに相当するユ・ヘイ(ユイ)は清々しいほど憎たらしかった。それに比べると、おっとりしたイメージの強い小嶋陽菜が演じるNANAには、ふてぶてしさが足りない。本当はかわいらしい女の子が無理して性悪女王様を演じる痛々しささえ漂う。ところが、今回は自分が認めたくない現実に直面し、壊れていく女性の怖さがあった。
ユ・ヘイは性格が悪いが、自分を確固として持っている芯の強さがあった。それ故にユ・ヘイの登場シーンには安定感があり、笑いどころでもあった。むしろ主人公のコ・ミナム(パク・シネ)に何をしでかすか分からない不安要素があった。桂木廉に相当するファン・テギョン(チャン・グンソク)の顔色をうかがってオドオドし、思いつめて誰も望まない行動に走る。
これに対してリメイク版の美男は「てっぱん」で明るく元気な女の子を演じた瀧本美織らしくなっている。オドオドすることもあるものの、廉をからかう明るさも見せる。廉はテギョンと比べて子どもっぽくなっており、美男がリードするという韓国版と比べた主人公カップルの逆転現象も見られた。
代わりにNANAに何をしでかすか分からない怖さがある。他の客もいるレストランでグラスを壁に投げつけるシーンが象徴する。ここでは裏表のある女性ではなく、裏の顔が表に侵食している。韓国版の筋書きを知る視聴者にも予想外の波乱を起こしそうな小嶋陽菜の壊れていく悪女の演技に注目である。
(林田力)