朝日がまぶしい店外から、薄暗い店内に入ると目が慣れるまでに若干の時間を必要としたが、店内は8割ほどのテーブルが埋まり、女性客とホストの奇声が飛び交い、驚くほどの活気が溢れている。タバコと酒の入り混じった社交場独特の匂いは早朝のすがすがしさを完全に吹き飛ばし、今が何時かをすぐに忘れさせた。
「主婦で〜す。ダンナさまを見送った後、元同僚と飲みにきました〜」
ほろ酔い加減でご機嫌な女性客Aさん。なんと彼女は専業主婦だという。会社で汗水たらして働いているダンナがこの姿を見たら…。
「もちろんダンナにはナ・イ・ショ」と言い放った後、Aさんは、両脇にハベらしたホストにしなだれかかった。ちなみにこちらのAさん。この後、家に帰り一眠りした後、夕食を作りダンナ様との晩酌を楽しむと言う。
一方、イケメンホストとマッタリラブラブモードを楽しむBさんは「夜勤明けで遊びに来ました。私にとっては仕事終わりに一杯という感覚です」と“まっとうな”楽しみ方をしている。
朝まで飲み続けた流れでお店にやってくるお客さんが一番多いというが、4時ごろ仕事が終わりカラオケで時間を潰してからお店に訪れるキャバクラ嬢や夜勤の看護婦、珍しい所では自身はお茶だけ飲んで帰る主婦や出勤前に一杯引っ掛けてから勤務先に向かうOLもいるという。どうやら女性の勤務形態の多様化が朝ホストに意外な需要をもたらしているようだ。
大盛況の朝ホスト。果たして女性たちが早朝の乱痴気騒ぎにいかほどのお金を使うのか気になるところ。同店代表・咲美結羽(さくみゆう)氏に話を聞いた。
「もちろん、一昔前のホストブーム全盛期のころに比べると客単価は下がっています。ただ、それは当時の無茶なやり方は長く続かないということで業界自体の営業スタイルが変わってきたからだと思います。金額的にはお父さんがキャバクラで遊ぶよりは安いのではないでしょうか」
新風営法以前の深夜帯売り上げには追いつかないものの朝昼営業の売り上げは夕方6時から12時までの営業に比べると遜色がないというから驚きだ。また、白楽(はくら)さんのように多くの指名を重ねるスターホストも育ち、朝ホストの人気が今後伸びる可能性は高い。
「やっぱり歌舞伎町はチャンスの街。営業スタイルは変わってもその本質は変わらない。まずはホストのイメージを変え“安心して楽しめる”という印象を定着させていきたい」(同代表)
この大盛況はホストクラブの営業に時間はあまり関係ないことを証明している。まだ始まったばかりのホストクラブの朝営業だが、すでに、歌舞伎町にある50件以上のホスト、キャバクラが朝昼の営業を行っている。朝ホストが定着するのにそれほどの時間はかからなそうだ。