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「かもめマシーン」主催の演出家・萩原雄太氏インタビュー

 演劇カンパニー「かもめマシーン」は、現代を深く追求するテーマでさらなる成長をし続ける。

 新作『プライマル・スクリーム』は、土地をテーマにした作品だ。

 下北沢・小劇場楽園の舞台から客席まで敷き詰められた芝生は、とても不思議な光景だった。客は芝生の上に座りながら鑑賞する。

 本来、誰のものでもないはずの土地。

 登場人物は住宅販売会社の営業社員、住宅を買いに来る夫婦、ここは自分の土地だったと主張する若者、無職でヒッピーの男、そして謎の無言の女。

 ひとつの土地を巡って激しく繰り返される議論。土地のアイデンティティーを探るうちに、やがて己のアイデンティティーへと見事にシンクロしていく…。

 はたして、この劇に込められたメッセージとは何なのか? かもめマシーン主催、演出家の萩原雄太氏にお話を伺った。

 −− 自己紹介をお願い致します。

 萩原 劇作家兼演出家です。茨城県出身、27歳、10月1日生まれ。主な受賞歴は浅草キッド「本業」読書感想文コンクール入賞です。

 −− 演劇に興味をもたれたきっかけ、又は演出家を目指されたきっかけを教えてください。

 萩原 元々演劇は全く好きではない、文系サブカルな人間 だったのですが(今もです)、学生の頃に、ひょんなことから演劇サークルに入ってしまいました。なので、それ以降です。ただ、それからそれが楽しくて仕方なかったかといえば、そういう訳ではありません。映画の方が優れたメディアだなと今でも感じます。

 −− 稽古や演出で注意している点はありますか?

 萩原 嘘をつかないということかもしれません。大声を張り上げるのは嘘だし、殺陣とかラインダンスとかは、少なくとも僕のリアリティには必要ありません。そもそも舞台っぽい話し方がすごく嫌いです。なので、大声を張り上げないし、ぱきぱきと身体を動 かすこともありません。けれども、ふとした日常で「すごくおもしろいな」と思わせてくれるのが人間の不思議なところです。例えばワークショップで「他人の自己紹介を真似する」ということをするのですが、無意識に行う身体のクセや話し方のクセは、とても独特で魅力的です。真似しようと思っても真似することはできません。そういったものを舞台にあげるようにしています。

 −− 『プライマル・スクリーム』のテーマを教えてください。

 萩原 『プライマル・スクリーム』は、土地の話です。というのも、土地を所有するということはどういうことなんだろう? と素朴に疑問に思ったことがきっかけです。パレスチナでも、尖閣諸島でも、土地を巡ってトラブルが起きてますよね? 身につけているわけではないのに、持ち運べるわけでもないのに、大事にしまっておくわけでもないのに、どうして「土地を持つ」なんて思うことができるのでしょうか? そんな土地の叫びを聞いてみたいと思いました。

 −− 『プライマル・スクリーム』の見どころを教えてください。

 萩原 芝生の上に座って見ることができる、という芝居はあまりないのではないかとお思います。草いきれの中で演劇を見るのは、他の演劇とは異なっているのではないかと思います。

 −− 今後の野望等ありましたら教えてください。

 萩原 いろいろな所で、フジロックに出たいと書いています。始めは半ば冗談のつもりで書いたんですが、最近どうも本気になってきました。グリーンステージ(3万人収容の一番大きなステー ジ)で演劇をやってみたいし、それが可能な演劇を作りたいと思っています。それはおそらくとても難しいことだと思いますが…どうぞ、よろしくお願いいたします。

 大いなる野望を持ち合わせながら、演出に対する独自の美学にぶれない軸を感じた。

 新作も非常に楽しみだ。かもめマシーン主催、演出家・萩原雄太氏の今後の活躍に注目したい。

※プライマルスクリームとは?:直訳すれば「原始の叫び」。イギリスのロックバンド「プライマル・スクリーム」には関係がない。ジョン・レノンがトラウマを吐き出すために治療を受け、「MOTHER」を生み出すきっかけとなった精神療法「プライマル・スクリーミング療法」に由来する。

■かもめマシーンについて https://sites.google.com/site/kamomemachine/

 チェーホフの「かもめ」と、ハイナー・ミュラーの「ハムレット・マシーン」という戯曲から命名されたカンパニー。2007年旗揚げ。カンパニーとしての当面の目標として、フジロックフェスティバルへの出演を掲げる。

 これまでの上演作品としては「Barrett」(2007年、pit北/区域)、「日本の言葉」(2008年、ギャラリー ルデコ)、「家族」(2009年、西荻窪がざびぃ)など。また、シアターX国際舞台芸術祭にて「かもめ/マシーン」(2010年、シアターX)を上演。

 萩原氏個人としては、江東区民とともに「芝浜」(2010年)の創作、ダンサー・手塚夏子とともに「ASIA INTERACTIVE RESEARCH」(2011年、森下スタジオ)を行う。

 現在、フェスティバル/トーキョー公募プログラムの1次審査を通過中。

(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ) 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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