「若い遊撃手を獲得し、坂本をサードに」
そう指摘されて久しい。だが、守備力だけならともかく、「打てる遊撃手」はなかなか現れない。ファームにはその可能性を秘めた若手もいないわけではないが、彼らの成長を待っていたら、その前に坂本がつぶれてしまうかもしれない。やはり、巨人は今オフのフリーエージョント(以下=FA)市場に参入するようだ。
「今季、巨人は5人もの育成選手を支配下登録しました。支配下登録期日の7月末を目前にしていた同26日、堀岡隼人投手を支配下登録しました。堀岡投手の成長は他球団も認めていました。FAの大物選手を獲得すれば、人的補償で若手を引き抜かれます。自前の若手選手を支配下登録すれば、28人までのプロテクト名簿に入れなければならない選手が増えるので、あえて来季まで見送るという方法もあります。この堀岡を支配下登録した時、『今オフの巨人は、FA市場に参入しない』と解釈した球団も少なくありませんでした」(ライバル球団スタッフ)
現行ルールでは、FA選手の獲得において、人的補償が発生するのは、旧在籍チームの年俸額の上位10選手まで。上位3位はAランクとされ、「人的補償」を行使しても、旧年俸の50%を獲得球団に請求できる。4位から10位までのBランクも「人的補償+旧年俸40%」を相手方に求められる。人的補償が発生しないのは、年俸11位以下だ。
その“11位以下”に、坂本の負担を軽減できる逸材がいたのだ。
「中日の堂上倫直(31)です。昨年4月、堂上は国内FA権を取得しました。彼は出場機会に飢えています」(スポーツ紙記者)
中日のショートには京田がいる。セカンドには阿部、サードには高橋もいて、ファームには黄金ルーキーの根尾昂も控えている。
地元愛知県の出身で、将来を大きく嘱望された大型内野手ではあったが、若手時代は鉄壁の二遊間・アライバコンビもいて、レギュラーの座は掴めなかった。しかし、坂本の話で彼の名前を出した時点でピンときた野球ファンも多いはずだ。堂上は2006年ドラフト会議で巨人も1位入札している。抽選で外れ、巨人が外れ1位で指名したのが、坂本なのだ。
「堂上も肩が強く、守備範囲も広い。巨人の内野陣ですが、岡本が一塁と三塁を兼任しているように、守備位置が固定されているのは坂本だけ。堂上を獲得できれば、坂本を三塁にコンバートする構想を前倒しできるかもしれません」(球界関係者)
学年は坂本と同じだが、使い減りしていない分、まだまだやれるというわけだ。推定年俸3000万円は中日内11位以下なので、人的補償も発生しない。兄・剛裕は巨人で引退し、現在はファームで打撃・外野守備担当コーチを務めている。
「他球団も堂上は控えのまま終わる選手ではないと評価しています。FA宣言したら、今オフの一番人気になるのでは」(前出・同)
FA制度が設けられた本来の目的は「出場機会を求めて」だったはず。未完の大器・堂上の去就が注目されている。(スポーツライター・飯山満)