巨人・阿部慎之助(40)が今シーズン限りでの引退を表明した。ライバル球団を含め、各方面から労いの言葉が寄せられた。9月21日のリーグ優勝決定の際、原辰徳監督(61)は阿部を呼び寄せている。24日の引退報道前に知らされていたからだろう。
しかし、阿部の引退を知らされていた“ビッグネーム”はグラウンド外にもいたようだ。
「東海大学の強肩捕手、海野隆司が巨人の上位指名リストに残っています。巨人はドラフト会議直前か当日(10月17日)に誰を指名するのか、最終決定をします。小林、炭谷、大城など、阿部がいなくなっても十分にやっていける捕手を揃えています。彼らが元気なうちに『次世代の正捕手』『阿部の後継者』を育てようとしているのでしょう」(ベテラン記者)
球団首脳陣は阿部の引退を聞かされていたようだ。巨人はスカウト部長が現地入りするほど、熱心に海野の視察を続けている。
それだけではない。去る8月29日の対広島戦だった。同日は松井秀喜、高橋由伸両氏によるダブル解説で久々の地上波中継が行われた。
「松井氏が阿部に対し、意味シンな発言をしていました」(前出・同)
3回、二塁打を放った阿部に代走が送られると、松井氏はすかさず、「だいぶ早い交代ですね。ここに慎之助も呼びますか?」と言った。笑いを誘うような軽い口ぶりだったが、その後に出たのは、「今はヨシノブが使った選手たちが躍動している」のセリフ。試合は巨人リードのワンサイド・ゲームだった。阿部の途中交代の後に「若手の活躍」を出したことで、“ピンときた”取材陣も少なくなかったという。
「阿部は松井氏にも引退の報告をしていたようです。松井氏はFA権を行使してメジャーリーグに移籍しており、その時の指揮官が原監督でした。そういう経緯から『現巨人とは距離がある』と見る声もありますが、松井氏が巨人時代の同僚とこまめに連絡を取り合っているのは本当です。阿部との関係も良好です」(球界関係者)
松井氏の現役晩年、一部メディアが巨人帰還の可能性を報じた。それに対し、原監督は「今は阿部のチームだから」と言い、一度退団した選手が帰還することの難しさを伝えていた。9月21日に阿部を呼び寄せ、肩を組んでいたこともそうだが、原監督の後継者は松井氏ではなく、阿部と見るべきだろう。
「来季、阿部がコーチ入閣することになれば、『次期監督』の布石と位置づけられるでしょう」(前出・ベテラン記者)
阿部の今後に関しては、日本シリーズを含めた全日程が終了してからの発表となる。年齢的なことを考えると、45歳の松井氏、40歳の阿部の順番が理想的だが…。
「原監督は3年契約。勝敗に関係なく、延長はないと言うのが本人談です。チームが大敗すれば50代、60代のOBに再建を委ね、禅譲ならば、阿部か、松井。ヨシノブの再登板も予想されています」(前出・同)
全日程の終了前に引退が正式発表された理由だが、巨人側は「明日(25日)、一部で報道されるみたいだから」と説明していた。スキャンダルではないので、記事の差し止め交渉はいくらでもできるはずだが? 阿部の引退声明には、在野の次期監督候補に向けたメッセージも含まれていたようだ。(スポーツライター・飯山満)