19歳でありながら打席での存在感の大きさはもはや誰もが認めるところであり、打撃タイトルにも届きそうな勢いだ。反面、チームは5位に大きく離され最下位に沈んでおり、今季の村上の活躍はヤクルトにとって数少ない明るい話題と言えるかもしれない。
本塁打以外でも、176個を数える三振数、そしてリーグワースト2位となる失策数15という数字もどちらかと言えば、規格外の長打力を武器とする村上のキャラクターとして捉えているファンは少なくない。
ただ、低迷にあえいだ今季の東京ヤクルトスワローズ、今後の巻き返しのためには村上のさらなる成長が求められる。今後、チームの中心として勝利に導く存在となっていくためには攻守にわたり、より確実なプレーを身に付けていく必要があるだろう。
セリーグでは断トツ、両リーグを通じてもトップの三振数は、積極性の表れとも捉えられる。しかしながら、レギュラーとして出場を続けた今シーズン、規定打席以上での打率が2割3分台であることを考えると、今以上に確実性を意識する必要はあるだろう。また、一軍での活躍は今年が実質1年目、来シーズンはさらに他球団からのマークが厳しくなることも明らか。長打力のみが売りのままでは、いわゆる「2年目のジンクス」に苦しんだとしても不思議ではない。
一塁手としてレギュラーに定着したからには失策数を減らしていくことも必須だ。勝負所でのエラーは勝敗に直結する。今季のスワローズは失策も目立ち、村上を含め内野手3人がすでに二桁を記録している。高い得点力とは裏腹に、大きく負け越した低迷の原因はディフェンスのもろさにあった。
今季、その打棒でブレイクを果たした村上。ただし、選手としての「伸びしろ」はまだまだ天井知らずだ。ずば抜けたパワーのみならず、チャンスの場面において逆方向に打ち返すシーンも決して少なくないだけに、そのバッティングセンスには光るものがある。守備面の強化と共に、さらなる打撃技術の向上を期待したい。スワローズの、そして球界の「顔」となるべく、若き主砲のストーリーは始まったばかりだ。(佐藤文孝)