日本語の動画を多言語に吹き替えるAIサービス「mimidub」を手掛けるのは、AIスタートアップの「タイタンインテリジェンス(Titan Intelligence)」(東京都渋谷区)だ。タイタン社は日本語の音声を話者の声質や感情を再現しながら自然な英語や中国語などに変換するAIを開発・提供している。同社の赤塚育海CEOは「言語の壁を取っ払ってボーダレスな世界を」と抱負を語る。
動画を撮影し、ソフトに入れるとわずか数分でオリジナルの声の印象をそのままに、外国語に吹き替えられる。吹き替えに使用する音声は許諾の取れたものに限定。吹き替えにかかるコストは1分3000円ほどで、現地の声優に依頼する場合の10分の1だという。これにより、これまで海外展開を諦めていた中小規模のアニメ会社などにもビジネスの可能性が広がる。
従来の吹き替えはコストが高いため、収益力のあるコンテンツ以外は、海外において無断翻訳や違法利用があると指摘されていた。今回のmimidubの展開により、国内のコンテンツ制作者がグローバル市場で評価され、経済的にも還元される仕組みが作りやすくなる。
番組が取材した当日も、SNS向けにショートドラマを手掛ける企業の担当者が商談で訪問。担当者は「海外で当たらないとコンテンツ事業としては拡大しない」と強調する。
「伊藤忠商事」は傘下の「伊藤忠テクノソリューションズ」と「タイタン社」で業務提携し、年内にもサービス提供を始める。伊藤忠はアニメなどIPコンテンツに関するビジネスを強化しており、この吹き替えサービスを通じて、コンテンツの海外展開を加速させる狙いだ。2029年までに日本発IPコンテンツを中心に、流通総額1500億円を目指している。
「アニメ産業レポート2024」によると、2023年のアニメ市場は過去最高の3兆3465億円に達し、そのうち海外売り上げは1兆7222億円で、全体の約51.5%と過半数を占めている。
アニメとAIの相乗効果により、世界規模の大きなビジネスに発展するのではないだろうか。