医療現場では最大27万人の看護師が不足していると推計されている。一方、資格はあるものの働いていない「潜在看護師」は70万人もいる。
新しく制度を導入した訪問介護の会社では、週5日のフルタイムの給与を10割とすれば、週4日勤務は8割、週3日勤務は6割となっている。社会保険などは変わらず、ボーナスも昇進もある。この会社の代表は「働ける能力があって、働きたい気持ちがあるのに、自分のライフワークのなかで働けなくなるというのは、もったいない」と話す。
この会社にはこの働き方を希望して県外から引っ越してきた社員もいる。社員は増え続け、2019年の設立時の5人から、現在は113人に増加。その4割は短時間正社員だ。
流通最大手イオンでは、約12万人いる従業員のうち、8割以上がパートだ。3年前から社内試験の合格を条件に、時給・賞与・退職金を正社員と同等にする取り組みを始めた。ある店長は「接客による購買率が飛躍的に上がる」と短時間正社員のモチベーションの高さを評価する。
パートを短時間正社員にすることで人件費は増えるが、会社はそれを従業員への“投資”と捉えている。セルフレジなどでコスト削減した分で従業員を育てていくことが、長期的には会社の利益につながると考えている。
短時間正社員に関する調査はないので正確な数は分からないが、導入企業はまだごくわずかと見られる。企業側が制度導入に後ろ向きなのは、日本ならではの労働慣行があるからだ。例えば、番組で取材した会社は「みなし残業代が含まれた給与になっており、時短だと残業をしない前提になる」と話す。
IKEA(イケア)では2014年に非正規を廃止し、誰でも短時間正社員を選べるようにした。その結果、コロナ禍においても売り上げを伸ばし続けることができ、今も成長し続けている。
海外の労働事情にも詳しい筑波大学の田中洋子名誉教授は、「ドイツでは2001年に『パート法』ができ、誰にも短時間勤務を選択できる権利を保障した。働く人の約4割が短時間正社員になった。人口は日本の3分の2だが、GDPで日本を抜くなど、労働生産性は上がった」と指摘する。
日本にも新しい働き方の導入が必要な時かもしれない。

