ドイツ
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社会 2023年07月24日 07時00分
海外旅行先から帰国できない可能性も? ヨーロッパの空港で起こっている大トラブル
今年はお盆に旅行を計画している人も多いのでは。コロナ禍で旅行が難しい時期が続いたが、待ちに待った機会。ヨーロッパなど遠出をする人も少なくない。しかし現在、ヨーロッパではフライトに関して大きな問題が起こっているというのだ。 コロナ禍によってヨーロッパの航空会社は経営難となり、多くの人員を削減した。中でも顕著だったのはドイツの大手航空会社・ルフトハンザ航空だ。2020年7月の時点で従業員2万2千人を解雇したが、1年以上前から人員を募集しているものの十分でなく、グランドスタッフやキャビンアテンダント、パイロットなどの数がコロナ前に戻っていない。なお、フランスのエールフランス航空は約1580人、オランダのKLMオランダ航空は約1700人とルフトハンザ航空に比べると解雇した人数は少なく、現在までにルフトハンザ航空ほどの影響はないといえる。 ルフトハンザ航空において最も大きなトラブルはグランドスタッフの不足により、チェックインカウンターで長蛇の列ができることだ。ドイツのハブ空港、フランクフルト空港やミュンヘン空港では人数が元々少ないことに加え、新たな人員を雇っており新人は教育を受けながら仕事を覚えるため時間がかかる。普段なら1時間以内でチェックインができるところ、現在は繁忙期でなくとも倍の2時間かかることも珍しくはないという。ビジネスクラスも同様で、1時間は待つ覚悟が必要とも言われる。 なお、オンラインチェックインをしておけばカウンターに並ぶ必要はないが、荷物を預け入れる場合はチェックインカウンターに並ばなければならず同様に時間がかかる。自分でラベルを貼り、自動で荷物を預けられるカウンターであれば待ち時間が少ないものの、「いつもは誰も並んでいないのにここ数カ月は列ができて30分以上待ったこともある」と言う人もいるほどだ。 >>「外国人お断り」騒動にみる日本の差別意識、顔の小ささやはしの使い方を褒めるのも差別?<< さらにコロナ禍によって空港スタッフも解雇されており、フランクフルト空港やミュンヘン空港ではセキュリティスタッフも不足しているようだ。繁忙期でない現在でも2、3時間待つことが珍しくなく夏に向けてさらなる混雑が予想される。人手が足らないのか長蛇の列ができていても、すべてのゲートが開いていない。 またロストバゲージにも注意が必要だ。日本からヨーロッパ旅行に行く際によく乗り換え空港として利用されるフランクフルト空港では今年に入ってからロストバゲージが多発している。ヨーロッパ在住の日本人は「日本からフランクフルト空港で乗り換えをするフライトで、自分の周りでは10家族中5家族以上がロストバゲージに遭っている」と言う。ロストバゲージの原因は荷物の運搬に人が足らないこと。荷物が届かないまま次の便が出発してしまうこともあり、そのまま荷物の行方が分からなくなるのだ。 日本ならば空港スタッフができるだけ荷物を届けようと努力してくれたり、探してくれるが「ドイツではそんなことはほぼない」そう。運が良ければ数週間たって見つかるということもあるが、「航空会社の専用番号に電話もつながらないし、探すといって探していないことがほとんど。一度、荷物番号を控えてもらっていたのに数日後にもう一度連絡をしたらそのような電話は受けていないと言われた。ロストバゲージしたら見つかる可能性はゼロと思った方がいい」と言う。 そして最も厄介なのはストライキだ。人員が少ないため一人当たりの労働負担が上がっていることもあってルフトハンザ航空や空港スタッフ、空港のセキュリティスタッフや空港を警備会社が昨年後半から頻繁にストライキを行っている。月に1回はドイツ国内のどこかの空港でフライトに影響するストライキが起きているイメージだ。 ここで問題となるのはその時の客としての対応だ。航空会社がストライキをした場合は後日のフライトを振り替えてくれる。だが、例えば空港のセキュリティスタッフがストライキをする場合、セキュリティゲートは開いていないが、航空会社はチェックインできるという状況になっている。 そのため、空港のセキュリティスタッフがストライキをする前、例えばフライトの12時間以上前などにチェックインしなければならない。航空会社は動いているため、たとえセキュリティスタッフがストライキをしていてもチェックインできないのは自己責任となる。前日にチケットを変更してもらうなどの工夫が必要になるだろう。警備会社がストライキをする場合も同様で、ストライキが始まって空港が閉まってしまう前に空港に入るなど工夫が必要だ。 ここまでの大変さがあると利用する側としては呆れて怒りを感じてしまうが、働いている側も苦労しているようである。 海外ニュースサイト『Business Insider』は2022年7月の記事で、ルフトハンザ航空で働く客室乗務員のインタビューを伝えた。これによると「体調が悪い人がいた時のために自宅で待機をすることがあるのだが、これまでは単なる予防措置で電話がかかってこなかったのに、コロナ明けは誰かの体調不良ではなく単なる人員不足で100パーセントの確率で電話がかかってくるとのことだ。 また1泊のスケジュールが2泊に急きょ変更になることもあり「プライベートは存在しなくなった」「これほど大きな航空会社がこのような失敗をするのは間違っている」と指摘していた。また過去にルフトハンザで働いていたことがあっても、一定の訓練を毎年受け直す必要があり、人を雇ったところですぐに現場に出せるわけではないという。 久々の海外に胸を高鳴らせている人も多いだろう。すでにほとんどの人がマスクをしていないヨーロッパだが、コロナ禍の影響は見えないところにまだまだ大きく残っている。海外旅行に行くのなら、ある程度の注意が必要といえるだろう。記事内の引用について「I'm a flight attendant for Lufthansa. Cuts have led to total chaos — and my private life is nonexistent.」(Business Insider)よりhttps://www.businessinsider.com/work-flight-attendant-lufthansa-collapse-travel-chaos-cancellation-delay-airport-2022-6
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社会 2023年07月18日 06時00分
国民の30%近くが移民のドイツ、差別はないものの深刻な悩みも
日本政府は2023年4月24日、自民党に対し熟練技能を持つ外国人の在留制度「特定技能2号」の資格拡大を検討する方針を示した。これまでの建設業や造船関連業に加え、漁協や航空業の分野などでも特殊技能を持つ外国人を広く受け入れるとし、今後、日本に在留できる外国人が増えることが予想される。 それでも日本の外国人受け入れ体制は欧米諸国に比べてまだまだ整っていない。過去に多くの移民や難民を受け入れてきたドイツは、2015年にシリアなど中東からドイツ人口の約1パーセントに当たる90万人もの難民を受け入れ、昨年もウクライナから90万人の難民を受け入れた。 2019年の時点でドイツでの移民の割合は約26パーセント。対して日本は、法務省の資料から試算すると2020年時点で移民(在留資格を持つ外国人)の割合は約2.37パーセント。受け入れた難民は2019年時点で81人と圧倒的に少ない。なお通常、移民は本人の意思で自国を離れて別の国に移住した人のこと。難民は紛争など自発的でない理由で国を逃れた人々のことをいう。ドイツでは難民は“やむを得ない事情”で国から逃れている人々と思われているため、ボランティアの対応が素早く人々からの助けも手厚い。国も難民のビザ申請を優先させている。 >>車椅子ユーザーのエレベーター問題、ドイツではあり得ない? 原因は国民性か、設備の至らなさか<< ドイツでは移民や難民が身近であることが珍しくはない。母国から察したり、難民が自ら明かしたりして分かることもある。 最近だと近所の人がウクライナ難民を、ホームステイの形で家に住まわせているという状況が学区単位で2、3件、多い地域では10件ほどある。また、学校にウクライナからの難民の生徒が突然来ることも珍しくはないのだ。こうした背景にはドイツでは移民や難民を受け入れる体制が整っていることが挙げられるだろう。難民が大量に押し寄せることが予想されると主要駅には受け入れをスムーズに行うためのセンターが設置され、通訳などのボランティアも大学などを通じて募集されすぐに集まる。さらに今年の2月には移民をより大幅に受け入れるため法律を改正することが決定された。これまでは企業からの招へいがなければ働くためのビザを取得できなかったが、学位やドイツ語能力が一定数あれば最長1年間ドイツに滞在して就職先を探すことができるのだ。 こうした移民や難民を受け入れる窓口を大きくし彼らを多く受け入れることは、ドイツが近年労働者不足で悩んでいるIT産業や医療部門の人材を確保できるというメリットがある。またドイツで深刻になっている少子化解消にもつながり、将来的にドイツ国民一人ひとりの負担を減らすことができるのだ。ドイツ国民は元々移民が多いこともあるが、こういった事情を理解しており、移民に対して嫌悪感を抱きにくくむしろ感謝している面もあるのだろう。 なお、移民の受け入れはEUの中でもドイツが突出して多いが、フランスやスペインなどドイツ周辺国も移民に対しては寛容で、労働者確保や出生率アップのために移民を受け入れている。 一方でニュースにはならないものの、ひっそりとドイツ国民が抱えているデメリットとも言える問題もある。移民や難民が増えたことで当然、小学校や中学校にも移民が来ることになるのだが、言葉や文化の壁でドイツ人の子どもの肩身が狭くなっているというのだ。 ある都心の公立の小学校では移民が多く住んでいる地域ということもあってか、クラスの8割が移民でドイツ語が流暢に話せない子も多いという。11歳の息子を持つ母親は「息子のクラスはトルコ人が多く、教室で聞こえる言葉はほぼトルコ語。ドイツ人が分からない話題も多く、人数的にもドイツ人が圧倒的に少ないので仲間外れのようになっている」と言う。また6歳の娘を持つ別の母親はドイツ語能力の違いからどうしても勉強に差が出てしまうことが悩みだという。「娘のクラスには純粋なドイツ人は1人。ドイツ語ができても問題が解けないという子が多く、友達同士で勉強を教え合い切磋琢磨できない」そうだ。 こういった状況から、どうしても移民が多い公立小学校の地域に通う子どもは私立を選ぶ傾向も多いという。そのため私立への入学希望が殺到し、数年前からウェイティングリストに名前を載せてもらうように手配をせざるを得ず、私立のために学費がかさむという問題もある。現地在住の日本人は「こうした状況になっても移民に対して文句を言う親はあまりいないが、内心、ドイツ国民が損をしていると思っている部分はあるのではないか」と推測する。 移民や難民を受け入れることは人間としての権利を尊重しているという点や国際的な観点からも称賛されるべきだろう。しかしながら、現場では子どもたちがちょっとした負担をしいられる。 わらにもすがる思いでドイツをめざす移民の思いを逆手にとる悪質なブローカーの存在もある。悪質なブローカーはある程度の費用を得ながらトラックに移民を押し込むなどして移民を輸送し、途中で移民を窒息死などで死なせる。そんなニュースが数年前は多く出ていた。またここ最近では移民の奴隷化も問題になっている。海外ニュースサイト『InfoMigrants』は10代前半の若いベトナム人の少年少女が、悪質な人身売買業者によってドイツに送り込まれ、ドイツで最低賃金を遥かに下回る賃金で働かされるケースがあることを紹介している。 ドイツでも問題が出てきている面を見ると、移民や難民の受け入れは簡単ではないだろう。しかし日本の将来を考えた際、移民の受け入れ窓口を広くしていくことは日本にとってもメリットがあるはずだ。記事内の引用について「令和2年6月末現在における在留外国人数について」(法務省)よりhttps://www.moj.go.jp/isa/publications/press/nyuukokukanri04_00018.html「令和元年における難民認定者数等について」(法務省)よりhttps://www.moj.go.jp/isa/publications/press/nyuukokukanri03_00004.html「'Disappeared, run away, dead': How gangs trade Vietnamese children, and people, as goods across Europe」(InfoMigrants)よりhttps://www.infomigrants.net/en/post/29803/disappeared-run-away-dead-how-gangs-trade-vietnamese-children-and-people-as-goods-across-europe
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社会 2023年06月26日 06時00分
風邪でもすぐ診てもらえない? ドイツの医療事情、アポが数カ月先ということも
日本では、かぜになればすぐに病院に行くことができ、歯が痛ければすぐに歯科医の予約を取ることができる。しかしドイツでは違うようだ。医療大国とも言われるドイツだが、受診までのハードルは高く、医療事情は日本人から見ると少し不便に思えるかもしれない。 まず、ドイツでは医療機関がHausarztと呼ばれる家庭医、専門医、総合病院と大まかに分かれており、その中で内科、外科、婦人科といった区分がある。かぜを引いたら家庭医の内科医を受診するといったように、何かあればまずは家庭医に相談して、そこから場合によっては内科の専門医や総合病院の内科を紹介してもらう仕組みになっている。 ただ、最初の段階である家庭医を探すのに苦労することが多いのが現状だ。初診の場合は電話をして自分を患者として受け入れてくれるか聞くのだが、今は患者がいっぱいだからと受け入れてくれないことも珍しくない。 >>車椅子ユーザーのエレベーター問題、ドイツではあり得ない? 原因は国民性か、設備の至らなさか<< 日本では、近くのクリニックや評判のいいクリニックを選んで受診することが多い。一方、ドイツでは地域差はあるものの患者が選ぶというより、受け入れてくれるかどうかという部分を優先して家庭医を探すと言ってもいいだろう。子どもの場合は小児科に行くが、小児科の家庭医は住んでいる地域によっては患者がいっぱいということもあり、子どもが生まれる前から探している親も多い。 さらに家庭医を見つけられた場合でも、「かぜ気味だから受診したい」とアポなしで家庭医を訪れ、診てもらえる可能性はゼロではないものの低い。 というのも、基本的にドイツはアポイントメント文化のため、よっぽどでない限りアポがないと追い返される。とはいえ、アポを取ったとしてもすぐに診てもらえるわけではなく、2、3日後、家庭医によっては数カ月後ということもあるのだ。 現地在住者からは「かぜを引いたのに受診できたのが3日後で症状が治っていた」「歯医者のアポが2カ月後で受診時はさらに悪化した」「やけどをしたのに受診する頃には治っていた」という声もある。 このような状況を受け、2019年から状況を改善するための法律が施行された。これまで週に最低20時間だった診療時間を25時間に拡大することが義務付けられるなどしたが、まだまだ不十分であるのが現状だ。 ただ一方で、重症や緊急の場合、また土日でどうしても受診したいが家庭医で診てもらえない場合はアポなしで総合病院に行くことができる。 重症かどうかは自分で判断し総合病院に行くことができ、追い返されることはなく、適切な処置をしてくれる。またドイツは公的健康保険とプライベート保険の2種類があり、プライベート保険の場合は比較的アポが取りやすいという面もある。 ここまで受診のハードルが高いとドイツの医師数に問題があるように思えるが、世界のさまざまなデータを発表している『World Bank Open Data』によるとドイツ国民1000人当たりの医師数は4.4人(2020年)、日本人1000人あたりの医師数は2.5人(2018年)で日本よりも多いのだ。 ではなぜ、ドイツではすぐに受診ができないのか。それは医師でも働き方を限定しているため、無理やり患者を押し込まないアポの入れ方をしていたり、診察時間内にアポが終わるように調整しているためだ。医師も長期休暇を取り、夏の間、1カ月以上休診ということもある。また都市部に医師が集中してバランスが取れていないことも原因だという。都市部は比較的アポが取りやすく、地方に行くとアポを取ることが難しくなる。 こういった状況をドイツに住んでいる人たちはどう思っているのだろうか。とあるドイツ人は「アポがすぐ取れないことは普通だと思っているし、かぜなど小さなことでは滅多に病院に行かないから気にならない」と言う。 ヨーロッパ出身のドイツ在住者も「よほどのことがない限り、家庭医ではなく薬局を頼る。薬局で薬をもらえばいい」と言う。彼らはあまり不便に思っていないようだ。 現地ではあまり不満は多くないようだが、やはり医師にすぐに診てもらえることは安心感がある。比較的早く、さらにアポなしでも病院で診てもらえる日本の医療制度は恵まれているとも言えるかもしれない。記事内の引用について「Physicians (per 1,000 people)」(World Bank Open Data)よりhttps://data.worldbank.org/indicator/SH.MED.PHYS.ZS
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社会 2023年06月12日 06時00分
電車の遅延で文句はありえない? 時間厳守のドイツ、交通事情はアバウトな理由
新幹線や電車など、公共交通機関の正確さが称賛されることの多い日本。しかし先日の大雨では東海道新幹線が運行を見合わせ、多くの人に影響が出た。状況が状況だけに理解を示す人が多かった一方で、車内や駅構内にとどまらなければならない人もおり、いつ運転が再開するか分からないというアナウンスには「野宿しろということか」と怒りをあらわにした人がいたというニュースもあった。 新幹線や電車が正確に来ることが普通な日本では、遅延や運休が人々に大きな影響を与えるようだ。しかしここまで新幹線や電車が正確な国は日本くらいであろう。 “時間に正確”というイメージを持たれている国の一つがドイツであると思うが、実際、ドイツ人はとても時間に正確だ。9時に待ち合わせをしたならば、9時5分前でも9時過ぎでもなくきちんと9時に来る人が多いのだ。家で待ち合わせをした場合も9時きっちりにチャイムが鳴る。 >>“日本人には優しい”は本当? ドイツ人がアジア人を一括りにせず特別視する理由とは<< ただし交通公共機関に関しては別だ。電車が遅れるのは日常茶飯事で5分どころか20分近く、もしくはそれ以上、予告なしに遅れることがある。そういったことが原因で遅延が起こり、ホームが変わることもしばしばで、ドイツを中心に運行されている高速列車ICE(日本でいう新幹線)が出発数分前にホームが変更になることはかなりの頻度で、遅延も多い。遅延するだけならまだしも「10分遅れる」というアナウンスが入ったのちに「あと10分遅れる」「あと20分遅れる」と次々と変更になり、とにかく来るまで待つしかない状況だ。 遅れる原因の多くは列車のダイヤがアバウトであることだ。前の電車がホームに遅れて到着し、次の電車が前の電車の出発を待つことになり、さらに次の電車も遅れていくという、電車の渋滞が起きる。それが重なり最終的には大きな遅延になっていくのだ。また技術的な問題も挙げられる。重大ではないものの念のため安全のために電車が一時的に止まることがあり遅延につながる。コロナ禍以降は特に人員が削減されており、修理や点検に時間がかかる。まれではあるが動物が線路に侵入したり、雪で徐行運転を余儀なくされることも原因にある。なお、ドイツの公共交通機関はほぼ全て「ドイツ鉄道」が運営しているが、民営化されたものの株式の100パーセントを政府が持つ、実質政府保有の会社である。 そんな状況であるのに人々が文句を言うのかといえばノーである。遅延はドイツ鉄道のHPやアプリケーションで告知されるほか、駅構内のアナウンスや電光掲示板を確認すれば分かるのだが、大幅な遅延でも駅員が大きな声でアナウンスしたり細かな情報を逐一伝えることはない。いくつかの方法で情報を共有しているのだから、全ては客側の自己責任。天候が関係している時は、天気予報を見なかった客側にも責任があるとされる。 ドイツでは台風などは滅多に来ないため、日本のように6時間近く車内に閉じ込められることはないものの、2、3時間車内に閉じ込められるのは珍しくない。一部で大雪などもあるが原因のほとんどは技術的な問題。その場合、電車が止まって「原因が不明でいつ動くか分からない」と車内アナウンスが入り、とにかく待つしかなくなるのだ。 そんな状況になっても客が文句を言うことはない。多少イライラすることはあるかもしれないが「あ、そうなんだ」とすんなり受け入れ、情報をとにかく待つという人が多いようだ。在独5年の日本人によると「最初は運転再開まで1時間くらいかかると言われて、その後さらに1時間、電中に閉じ込められたことがあったが、誰も文句を言わなかった」と語る。万一、車掌などに文句を言おうものなら「“自分たちだって分からない、電車を整備した人のせいだ”と、それ以上の剣幕で怒られるだろう」と話していた。別の在独7年の日本人は、何時間か待った末に電車が動かないから、途中で線路に降ろされ次の駅まで歩くように言われたことがあったそう。そんな時もほとんどの人が「ああ、そうか」といったように電車を降り、近くの最寄り駅まで歩いたという。なお、そういったことは頻繁に起こるため「そもそも大きなニュースにはならない」そうだ。 ただそんなドイツでもドイツ鉄道側は遅延をなくすための努力はしており、2022年までに長距離電車の82パーセント時間通りに到着させるという目標を掲げた。ただ実行できず、目標達成期間を2025年までに延期。ちなみに2022年の長距離電車の定刻到着率は約62パーセントとのことだが、ドイツ鉄道では6分未満の遅れは遅延と見なさないと定義しており、実際にはもっと多くの電車が遅延している。なお、日本の東海道新幹線では2021年の1列車当たり遅延時間は自然災害による遅延も含んで0.9分(54秒)だった。 目標期間を伸ばすなど、なかなか改善が見られないドイツの遅延問題だが、文句を言う人が少ないのは、人々が、当人の責任でないことは当人を責めず、仕方ないとあっさり受け入れられる面があることだ。前出の在独日本人は、ドイツ企業での出勤初日に大幅な遅延に遭い上司に何度も深く謝罪をしたら、むしろ謝罪している姿を不思議がられ「よくあることだから」で終わったという。 別の日にはドイツ人の同僚が、別のルートはいくらでもあるにもかかわらず、「駅まで行くバスが来ないから」と会社に来なかったそうだ。その時も大きな問題にはならなかった。ドイツでは公共交通機関の遅れは公共交通機関側の問題で、本人は悪くないという風潮があり、さらにほとんどの会社が出勤時間にこだわらない。9時出勤で多少遅れても仕事をきちんとこなしていればいいと見なされる。「日本では天候のせいとはいえ遅延があれば会社に迷惑がかかると考えがちだが、ドイツではそれがない。乗客にストレスがかかりにくく文句を言うまでに至らないのかも」と分析した。 日本での今回の大雨での遅延で不満を漏らした人に対しては批判の声もあったが、不満が出る背景には日本人の会社や周りの人に迷惑をかけてはならないという日本人独自の性質もあるのかもしれない。記事内の引用について「ファクトシート2022(Fact Sheets 2022)JR東海」https://company.jr-central.co.jp/ir/factsheets/_pdf/factsheets2022-02-01.pdf
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社会 2023年05月29日 06時00分
日本でSDGsキャンペーンが盛んなワケ 浸透していないドイツ、達成度が高い?
最近、日本で連日のように耳にする「SDGs」。持続可能な開発目標のことで、具体的には世界の環境問題や差別、貧困、人権問題を世界で一丸となって2030年までに解決していこうという目標を掲げている。日本では昨年あたりから人気タレントが企業やメディアとコラボしてSDGsを訴える活動が目を引き、5月にはTBSテレビが「地球を笑顔にするWEEK」と称してSDGsについて考えるキャンペーンを開催。現在も日本テレビが「Good For the Planet」と称して6月4日までSDGsを訴えるキャンペーンを実施するなど、引き続き注目度の高さがうかがえる。ただ、他国では環境に配慮した活動が注目されているものの、とりわけSDGsをプッシュすることはあまりないようだ。 そもそも、SDGsは最近始まったものではなく、2015年9月の国連サミットで採択された。8年弱たつわけだが2022年に国際的研究組織「SDSN」が発表した達成度ランキングで日本は19位。1位はフィンランドで以下デンマーク、スウェーデン、ノルウェーと北欧が占め、5位にオーストリア、6位にドイツと欧州が続く。 中でも環境大国と呼ばれるドイツは、2021年は同ランキングで4位という結果で達成率が高い国とされている。ドイツでは何か特別な活動をしているのだろうか。 >>男女裸で同じサウナが常識のドイツ、ジェンダーレストイレには反対派が多いワケ<< ドイツでは2018〜2019年ごろから多くの企業がSDGsについて発信し始めた。ドイツ大手のチョコレートメーカー「リッタースポーツ」は2025年までの目標として製造の際の電力節約やパッケージを再生可能なものにするなど、環境に配慮した方法でチョコレートを製造することを発表している。また自動車メーカーの「フォルクスワーゲン」は2030年までに乗用車と小型商用車の二酸化炭素排出量を車両1台あたり30パーセント削減する目標を発表するなど、大手をはじめとした多くの企業がよりSDGsに沿った取り組みをしているのだ。 一方で、企業がHPなどで告知しているもののSDGs達成に向けた取り組みを大々的にアピールしていない。ドイツ在住者の多くも実はSDGsという言葉を知らない人ばかりなのだ。在独日本人いわく「自分の周りの20人くらいの20〜40歳代の男女に聞いたが、SDGsというワードを全員が知らなかった」と話す。ドイツでは日本のようにテレビなどのメディアもSDGsをわざわざ取り上げることがあまりなく「はやりのように扱われていない」そうで、知らなくても当然なのかもしれない。 ではなぜ、SDGsという言葉があまり広まっていないのか。それはドイツではSDGsにのっとったような環境に配慮する活動がSDGs採択前から続き、今さら言うまでもなくドイツ在住者にとっては普通のことからだ。 例えば、SDGsの取り組みの一つとしてフェアトレード(公正な貿易)という、発展途上国で作られる原料や製品を適正な価格で継続的に購入するという仕組みがある。フェアトレードは特にチョコレート製造の際、カカオ生産国などで児童を安価で働かせることを防ぐことにつながるのだが、ドイツではすでに5年以上前から一般的なスーパーで見かけるほとんどのチョコレートやコーヒーにフェアトレードマークが付けられているのだ。 また数十年近く前から都心、地方問わず街の至るところに大きな寄付ボックスが置かれていて、貧困地域などに寄付するための洋服などが入れられるようになっている。ボックスには子どもの洋服から大人の洋服、靴などが入れられ、人々は着古したり、サイズが合わなくなった洋服をここに入れるのだ。寄付だけではなく、いらなくなった洋服や子どものおもちゃを売るフリーマーケットも週末となれば街の至るところで行われている。フリーマーケットは趣味で行い、収益を寄付に回す人も珍しくない。 さらにレジ袋は2016年から自主ルールにより有料化される前からレジ袋を持参することが当たり前になっていたが、現在はレジ袋がプラスチック製でなく紙製になっている。食品ロス削減を目的とし、パン屋やスーパーマーケットなどから廃棄食品を安値で購入できるアプリも浸透し、2020年ごろから利用者が増えているようだ。 ドイツではSDGsをうたわなくともエコに対する意識は高い。ヨーロッパ市場の情報を発信しているサイト『AJT』の2023年3月の記事や、ドイツの購買行動を分析するサイト『GfK』の2023年2月の記事では、ドイツ国民の70パーセントが環境問題を深刻に捉えており、2021年からの過去5年間でドイツが持続可能な購買行動に向け、最も大きな変化を遂げた国であると伝えている。調査対象者(人数は不明)の31パーセントが商品購入の際に、環境・社会・経済面で持続可能商品のことを指す、サステナブルな商品を購入すると回答しているのだ。具体的にはリサイクル素材やオーガニックコットンを使用したTシャツやタオル、CO2の排出を抑えるなど環境に配慮して作られた食品などが挙げられる。価格はサステナブルでないものと変わらない、もしくは少し高い程度だが、サステナブル商品とそうでないものがあれば、サステナブルな商品を率先して選ぶそうだ。 またドイツのコンサルティング会社『PwC』が18〜25歳のドイツ国民1000人を対象に調査したところ、調査対象者の約65パーセントが買い物をする際にサステナブルな商品を意識すると答えているという。同記事ではドイツのZ世代にとって洋服や化粧品を買う際に商品が持続可能であるかは重要なことであると伝えている。 日本ではSDGsを広めようと政府やメディアが主体となって力を入れている印象だ。しかしドイツのように、力を入れずとも国民一人ひとりが当たり前のように意識するようになって初めてSDGsが現実的に達成に向かっていくのかもしれない。記事内の引用について「Going green in Germany: How sustainable brands can flourish in a growing eco-market」(AJT)よりhttps://www.teamajt.com/going-green-in-germany-how-sustainable-brands-can-flourish-in-a-growing-eco-market/「Bleibt nachhaltiger Konsum 2023 relevant?」(GfK)よりhttps://www.gfk.com/de/presse/bleibt-nachhaltiger-konsum-2023-relevant「Die Gen Z legt Wert auf Nachhaltigkeit beim Einkauf – und bei der Bundestagswahl」(PwC)よりhttps://www.pwc.de/de/pressemitteilungen/2021/die-gen-z-legt-wert-auf-nachhaltigkeit-beim-einkauf-und-bei-der-bundestagswahl.html
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社会 2023年05月15日 06時00分
数年前に昆虫食が注目されたドイツ、現在の流通は? 昆虫小麦を確認する客も多数
今、世間の注目が集まっている昆虫食。日本国内でも10年以上前から研究されていたが、パンメーカーの「Pasco」が食用コオロギパウダーを使用したパンやバウムクーヘンを販売。徳島の県立高校もコオロギパウダーを使った給食を提供するなどし、ここにきてさらに昆虫食が議論の的となっている。 そもそも昆虫食は、気候変動や世界全体の人口増加で今後、タンパク質不足が予想されることから注目され始めた。大量のタンパク質を確保するためには豚や牛などの家畜を多く飼育しなければならないが、豚や牛などの家畜は飼育過程で大量の温室効果ガスを排出し、大量の水が必要であるため、環境への負担が少ない昆虫食が重要とされ始めたのだ。昆虫食には魚や肉の3倍以上のタンパク質が含まれていると言われている。一方で、アレルギー反応を起こす可能性があるというデメリットもある。 そんな昆虫食、海外ではすでに話題になっており、ドイツでは2020年ごろ特に大きな話題を呼んでいた。当時は面白さもあって、昆虫がそのまま入ったキャンディや、パッケージに大きくコオロギのイラストが描かれたハンバーグがスーパーマーケットなどの店頭で目を引き、怖いもの見たさで購入した人もいたようだ。その後2021年からはミールワームという幼虫やトノサマバッタを加工されたものが食品として正式に認可され、2023年5月からはさらにヨーロッパイエコオロギやトウモロコシハムシというカブトムシの一種が認可されている。認可された昆虫は菓子やパン、シリアルに入れることが可能。昆虫が入った商品は成分リストに掲載される必要があり、消費者は成分リストから昆虫が入っているか判断できる。 >>男女裸で同じサウナが常識のドイツ、ジェンダーレストイレには反対派が多いワケ<< 昆虫食を認めて3年弱がたったドイツ。スーパーでも昆虫入りの食品を見かける機会が多くなると当時は予想されたが、実際のところ、現在ドイツ人にとって昆虫食はどれほど身近になっているのだろうか。昆虫食が話題になった時はそれなりに大手のスーパーマーケットで昆虫入りのパスタやソーセージを見かけたが、現在一般的なスーパーで見かけることはほぼない。現地のドイツ人は「昆虫食入りのドッグフードが出てきて種類も増えているが、専門店やネットで買わない限り昆虫食を手に入れることはできない」と話す。 昆虫食が多く出回らない最大の理由は、昆虫食を食べなくても食料には困らないこと、さらに昆虫食を毛嫌いしている人が多くまだ受け入れられていないこともあるだろう。ドイツのニュースサイト『DW』は2023年1月の記事で、ドイツ環境庁が2020年に発表した報告書でドイツ人の約80パーセントが昆虫食に嫌悪感を抱いていると報じている。 またドイツのニュースサイト『ARD Mediathek』は、現地のパン屋を取材。多くの客が「パンに昆虫入りの小麦が使われているか」を確認すると伝えている。スーパーマーケットにある商品は成分表を確認できるが、店頭で売られているパンは成分表が表示されていない。消費者は心配で、わざわざ確認するそうだ。こういった手間を省くため、最近では「当店では昆虫入りの小麦を使用していません」と張り紙をするパン屋も出てきている。 一方で一定数、受け入れる人はおり、積極的に昆虫食を勧めようとしている。ドイツはヨーロッパの中でもベジタリアンが多い国であるが、多くのベジタリアンが“家畜を食べずに温暖化を防ぐ”という環境保護の観点でベジタリアンになっている。そのため昆虫食を支持して、地方の公民館などで昆虫食の重要性を訴えるセミナーなどを定期的に開催しているのだ。 しかしながら日本より数年昆虫食が早く注目されたドイツでも昆虫食はまだまだすんなりと受け入れられないばかりか、嫌悪感を抱かれているほどだ。今後、日本でも昆虫入りの食品が多く出回る可能性はあるが、人々の身近な食品になるのはまだ遠い先の未来かもしれない。記事内の引用について「Insects on the menu as EU approves two for human consumption」(DW)よりhttps://www.dw.com/en/eu-insects-climate-change/a-64503440「Kein Insektenmehl im Brot」(ARD Mediathek)よりhttps://www.ardmediathek.de/video/abendschau/kein-insektenmehl-im-brot/br-fernsehen/Y3JpZDovL2JyLmRlL3ZpZGVvLzYxYzFiNTljLTM1NjAtNGM2Yi04NTY5LWIyYTRjMDhlOTIyMQ
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社会 2023年04月24日 06時00分
男女裸で同じサウナが常識のドイツ、ジェンダーレストイレには反対派が多いワケ
今、日本で話題になっているジェンダーレストイレ。特に新宿・歌舞伎町にオープンした複合高層ビル「東急歌舞伎町タワー」内にジェンダーレストイレ、いわゆる男女共用トイレが設置されて物議を醸している。ジェンダーレストイレは性別違和を持つ人や異性の親子連れ、介護が必要な人に有益な一方で、安全面を懸念する声も多い。Twitter上では「女性の安全を脅かす」「あんな治安の場所であんなトイレあったら中で誰が何してるか分からなくて使いたくもない」といった声が上がっている。 では他国はどうなのだろうか。ドイツではサウナに男女が裸で入るなどジェンダーレスが進んでいる国の一つと言えるかもしれない。ドイツのサウナは男女共用、ともに裸で入るのが基本で、サウナに入ると全員が真っ裸で隠すことなく座っている。 そもそもドイツではサウナの伝統のようなものがある。一説によると、2000年ほど前のサウナでは、健康とリラクゼーションのために男女が分かれることなく裸で入ることが義務付けられていて、この習わしが現在まで伝わっているそうだ。またドイツのサウナは、水着で入る温泉施設やプールに設置されていることが多い。水着のまま入ると水着についた水が、木でできたサウナの椅子に落ち木材が劣化する、機能面の問題もある。これらの理由でドイツでは、大半のサウナのドアに「サウナには裸で入ってください」と張り紙が付けられている。 >>車椅子ユーザーのエレベーター問題、ドイツではあり得ない? 原因は国民性か、設備の至らなさか<< とはいえ、男女が一緒に裸でサウナに入ることにドイツ人は抵抗がないのか。答えはNOだ。ドイツ人男性に話を聞くと、サウナは心を休める場所だと言い「他人とおしゃべりもしない」そう。そのため「マナーでもあるが、サウナは一人でリラックス時間を楽しむ場所。そもそも人の体をまじまじと見ようと思わない」と言う。また別の30代男性は「サウナで見る異性の体はただの体。性的なものに思えない」と話し、別の20代女性は「サウナに水着で入る方が違和感。サウナで性的な目で見られると考える方がいやらしい」と話していた。ドイツのサウナでトラブルがあったという話はほとんどない。 そんなドイツでもトイレとなると話は別だ。ジェンダーレストイレについては反対派の人が多く「治安を考えたらトイレが男女共用なんてあり得ない」「男女が入れるトイレなんて何が起こるかわからない」とドイツ人は口々に話す。また、LGBTQの当事者である男性は「男女共用トイレは差別と区別の混同だ。共用トイレを嫌がる人がいたらかえってLGBTQの肩身が狭くなるだけ」と指摘し、別のLGBTQの男性は「ジェンダーレスをアピールするために共用トイレは必要ない」ときっぱり話す。 実際、ドイツでは小さな飲食店など一部ではトイレが男女共用になっているものの、ジェンダーレストイレはほとんど見かけず、男女別になっていることがほとんどだ。 ただ、ドイツでもジェンダーレストイレの取り組みがないわけではない。ただし、東急歌舞伎町タワーのように女性トイレをなくしてジェンダーレストイレを設置するのではなく(東急歌舞伎町タワーにも別の階には女性専用トイレがある)、男性トイレ、女性トイレに加えて3つ目のトイレとして共用トイレを設置する取り組みがほとんど。ベルリンではとある男女の公共トイレそれぞれに小便器が設置された。 トイレを男女で分けず、完全なジェンダーレスにすることに関しては、受け入れる人はいるものの、否定的な反応を示すメディアも多い。ネット上でも「男女の境界線までなくすのは間違っている」「コストもかかる」という反対の声が多く、「いきなり完全なジェンダーレストイレに入るのは抵抗がある。子どもの頃から教育を受け、慣れさせる必要がある。まずは小学校のトイレにジェンダーレストイレを増やすことから始めるべき」と教育から見直すことを指摘する声もある。 ジェンダーレスを考えることは決して悪いことではなく、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念であり“誰一人取り残さない”ことを考えれば必要なものであるといえよう。ただし助けられる人がいる一方で不便に感じる人も出てくるのは確かだ。バランスを考えながら、できるだけ多くの人の理解を得られるように進めていくべきだろう。
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社会 2023年04月05日 06時00分
12歳と13歳少女、12歳少女を殺害 男子を巡る争い? 直後にダンス動画など投稿
多感な時期の少年少女はトラブルを抱えやすいが、海外ではそんな若者が小さなトラブルをきっかけに殺人事件を起こした。 ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州で、12歳の少女Aが30回以上刺されて殺害された。犯人はクラスメイトの12歳の少女Bと13歳の少女Cだったことが発覚。殺害動機は男の子をめぐる争いだった可能性があると海外ニュースサイト『The Daily Star』と『Daily Mail Online』などが3月18日までに報じた。 報道によると3月11日、AはCの家に泊まりに行ったという。翌12日、Cの家にBも合流し、3人は近くの森に向かった。森に向かうとBとCが刃物でAを30回以上刺して殺害した。 >>営業時間外のスキー場に侵入、男子高校生が死亡 2人乗りソリでハープパイプを滑り降り雪壁に激突<< 12日中に遺体が発見された。Aの両親はAが帰宅しないことを不審に思い、警察に届けを出していた。遺体はAだと判明し、目撃情報などからBとCが容疑者に浮上した。警察がBとCに問いただした結果、犯行を認め自供。現在2人は保護されている。なお、ドイツの法律では14歳未満の子どもは刑事責任を問うことができないため、2人の処罰については今後決定されることになっている。 容疑者の年齢が14歳未満であることもあり、警察は「全ての詳細を明らかにできない」としているが、報道によると殺害の動機はAがB、Cからいじめを受けていると大人に相談したことだという。大人が両親であるのか、教師であるのかは不明である。 3人は何年も前から知り合いで、一緒に登校する仲だった。しかしある時点からBとCがAをいじめ、事件の前まで数カ月間いじめが続いていたそうだ。さらに他のクラスメートの証言などから、AとB、Cが男の子をめぐって長い間トラブルを起こしていたという情報もある。男の子をめぐるトラブルがいじめに発展したのかは不明である。なお、Aはいじめに遭っていたにもかかわらず、事件前日、なぜCの自宅に行き一緒に過ごしたのかは明らかになっていない。 一方、犯行後のBとCの行動は明らかになっている。警察によるとAを殺害後、CはAの両親に電話をして「私たちは午後5時半ごろに解散して、Aは家に帰った。心配だからAが家に着いたら教えてほしい」と伝えていた。さらに犯行翌日、BとCはTikTokに平然とダンスをしている動画を投稿していた。別の動画では、行方不明になっていたAを心配する動画もあった。 このニュースが世界に広がると、海外のネットユーザーからは「最低すぎる。14歳未満であろうが少女らは罪に応じて重い罰を受けるべき」「犯人は一生刑務所に入ればいい」「14歳未満は起訴するには若すぎる」「30回も刺して殺したり、犯人なのに親に電話をしたり精神的に問題がある」「何カ月もいじめられていたのになぜ学校は対応できなかったのか」「殺害後にTikTokをあげる心境が理解できない。若い子はSNSに取りつかれすぎ」「加害者2人で被害者が1人だから図に乗ってTikTokをあげてみたり、何をしてもバレないと思ったのかも」「SNSや仲間からの圧力など、今の子どもたちはストレスが大きい」といった声が上がっていた。 法律上、犯人の少女らが成人と同じように裁かれないことは現時点では致し方ない部分もあるが、被害者の少女の身内にとってはいたたまれない思いだろう。世間からも怒りの声が聞こえているようだ。記事内の引用について「Teen girls 'stabbed 12-year-old 30 times and filmed TikTok dance next day'」(The Daily Star)よりhttps://www.dailystar.co.uk/news/world-news/best-friend-girls-stabbed-classmate-29490102「Was girl stabbed to death in horrific German murder over a boy? Hints of what caused a child to bully and then KILL 12-year-old friend emerge in picturesque village」(Daily Mail Online)よりhttps://www.dailymail.co.uk/news/article-11871545/Girl-12-stabbed-30-times-female-classmates-telling-adult-theyd-picking-her.html
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社会 2023年03月27日 06時00分
車椅子ユーザーのエレベーター問題、ドイツではあり得ない? 原因は国民性か、設備の至らなさか
最近話題になった、デザイナーでユーチューバーのさしみちゃんのツイート(現在は削除)。さしみちゃんは車椅子ユーザーであるが、本人によるとエレベーター待ちをしていた際、後から来た車椅子ユーザーではない人に追い抜かれ先に乗られたということだ。さしみちゃんはその時の様子を動画付きでツイートしていた。 これが大きな反響を呼び、実業家のひろゆき氏も反応。自身のTwitterで「エレベーターの車椅子優先ルールとか、広がらないルールは、誰かが波風を立てて問題提起しないと広まらないです。波風を立てる覚悟のある人が出て来ると、未来はちょっと良くなります」とつづり、さしみちゃんの行動を肯定していた。 ひろゆき氏のツイートを受け、リプライでは「当たり前のことが当たり前に出来ないってのは悲しい」「車椅子優先エレベーターとかじゃなければ、車椅子だろうと並んだ順番かな」という声、ネット上では「ちょっとした待ち時間だとスマホ見ている人がほとんどで周りが見えていない人が大多数」「車イスとその同行の方が来られたので、先にどうぞと手で合図をして乗ってもらった。その時自分は特に急いでいなかったのでそういう行動になったが、朝の通勤時や休日のなかなか来ない商業施設のエレベーターだったらどうだったかと思う」「地方だからかな。周囲の人が、車イスの方にエレベーターに乗るのを譲っているところしか見たことない」といった声が上がっていた。 >>車椅子ギャル、エレベーター割り込み告発も容姿批判され苦言「こんなに個人攻撃に遭う世界」<< さしみちゃんのツイートをきっかけに車椅子ユーザーへの配慮が改めて注目されているが、ドイツではあまりこういった議論がなされないようだ。 ドイツではお年寄りが一人、車椅子で行動していることも多く、日本より車椅子ユーザーが多い印象。しかし、エレベーターでは車椅子ユーザーを優先させるのは当たり前の光景で、それゆえ議論になることはあまりない。在独日本人は「公共交通機関を多く利用するが、順番に関係なく車椅子ユーザーやベビーカーは優先される。これまで優先されなかった場面に出会ったのはほんの少し、数パーセントくらいだと思う」と話す。 なぜ、ドイツでは車椅子ユーザーが優先されやすいのか。それはドイツでは不便が多く、助け合わなければならない環境があるからかもしれない。日本のようにドイツでも電車などの乗り降りの際に、補助板を使用して車椅子ユーザーが乗降しやすいようにするが、毎回ではないものの運転手が面倒くさがるような仕草を見せて手伝わない場合もある。 そういった状況に人々は慣れているため、バスなどでは分かりやすい場所にある補助板を乗り合わせた人が運転手よりも早く前に出し、車椅子を押して乗降させるのだ。エレベーターの場面でも、エレベーターが止まりやすいため、動いている時は車椅子ユーザーを優先させるべきという考えがある。 また、ドイツでは日本のようにサービスをする側、受ける側の区別がはっきりしていないことも挙げられるだろう。日本では車椅子ユーザーを見かけても駅員が来るだろうと思い、手助けをちゅうちょする人もいるかもしれない。しかしドイツでは元々サービスをする側に多くを求めない傾向がある。レストランなどでも客が優先という意識はなく、忙しい時はテーブルに店員が来るまで会計をひたすら待つ。時にはサービスを受ける側が気を遣うのだ。サービスをする側がやってくれる、という考えがない。できる人が助けようという意識が強く芽生えるのかもしれない。 一方で、ドイツでは大抵の駅にエレベーターもしくはスロープがあり、バリアフリー設計になっているのだが、エレベーターは一つの出口にしかないことも多い。車椅子ユーザーは地上に出てから遠回りをするなど、設備の面で見直しが必要なことも多い。エレベーターも、日本のように常に動いているわけではなく、故障などで頻繁に止まることも多々ある。周りに人がいれば車椅子を複数人で担いで階段を上がる、ということもあるが、周りに人がいなければ人が来るまで待たなければならない。駅員が全ての駅にいるわけではないので呼び出しボタンなどはない。店でも入り口が小さく、段差があることも多く、車椅子ユーザーは入ることができる店は限定される。 日本に滞在経験のあるドイツ人は、日本の駅で何人もの駅員が車椅子ユーザーを手伝う様子を見たといい「通りすがりの人ではなく駅員が手伝ってくれるだろうと、ある程度予測できるのは心強いと思う」と話す。 また日本で車椅子ユーザーを助ける光景を多く目にし、電車でスペースを空けたり、車椅子ユーザーのために乗っていたエレベーターを降りる人も目にしたという。「日本で車椅子ユーザーに対して考えるべきという議論が出ていることが意外だった。ベビーカーにも優しかった」そうだ。しかしながらドイツに比べると駅では混み合っていたり、多くの人が急いでいるような場合も多く「余裕が生まれていないのも事実だと思った。車椅子ユーザーにまで気が回らず、助けたくても助ける時間がないのかもしれない」と分析した。 日本でも、Twitter上では“車椅子で段差が難しかったが東京で助けてもらった”“乗り換え駅で駅員さんが待っていてくれて手伝ってくれる”“地方では優先エレベーターがあるし、車椅子が優先という注意書きもある。譲らない方が難しい”“地方では譲ってくれる。高層ビルが少ないからすぐに次のエレベーターが来るし、並んでいる人も少ない”という旨のツイートをする人が見受けられ、助け合いがあふれていることも確かである。 車椅子ユーザーが快適に社会で生活できるようにするためには、人々が車椅子ユーザーに関心を持ち、何をすべきか考えることと、社会的な設備、環境を整えることの両方が必要になってくるだろう。記事内の引用ツイートについてひろゆき氏の公式Twitterより https://twitter.com/hirox246
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社会 2023年03月22日 06時00分
サウナで「股間のサイズ」を嘲笑された男、刃物で友人の胸を突き刺し重傷を負わせる
疲労回復効果のあるサウナは世代を問わず人気が高く、日本でブームとなっている。このハダカの付き合いが、海外では大惨事に発展してしまったようだ。 ドイツ・パーダーボルンの住宅で、陰茎のサイズをめぐり口論となった男性を刃物で刺し重傷を負わせたとして、起訴されていた男の裁判で、執行猶予付き有罪判決が言い渡された。海外ニュースサイト『Daily Mail』『Mirror』などが3月14日までに報じた。 >>25歳男、駅のホームで78歳男性の耳や顔をかみちぎる 右耳は損失、頭部は頭蓋骨が露出する<< 報道によると2022年4月2日、29歳の男A、39歳のAの義理兄、37歳の友人男性(以下友人B)の3人が友人B宅で飲み会を開催。朝方まで飲み明かしたという。翌午前5時ごろ、お酒を片手に、友人B宅のサウナに3人で入った。3人とも酔っぱらっており、サウナストーンにビールをかけるなどしていた。 ハダカの3人は、男性器の話になったようだ。このとき、Aと友人Bが、陰茎のサイズをめぐり言い争いに。友人Bが、Aの「サイズ」を嘲笑したとの情報もある。口論はエスカレートし、殴り合いに発展した。義理兄が2人の間に割って入りケンカを制止。Aおよび義理兄は、友人B宅を去ったそうだ。 しかし、怒りの収まらないAは2時間後、友人B宅に戻って行った。Aと友人Bは再びケンカを始め、Aが刃物で男性の胸や腕など11回突き刺したという。友人Bはすぐに病院へ搬送された。肺、腕などに重傷を負うも、一命を取り留めた。のちに警察が呼ばれ、Aは傷害罪で逮捕された。Aは容疑を認めているという。 最近になって裁判が開かれ、裁判所はAに執行猶予付き禁固刑2年の有罪判決を言い渡した。さらに、約140万円の賠償金を友人Bに支払うよう命じた。裁判長は「犯行時のAが泥酔状態で、責任能力がほぼ問えない状態にあった」などと、執行猶予の付いた判決理由を説明した。 このニュースが世界に広がるとネット上では「友人を刃物で刺すなんて絶対にできない。残酷だ」「刑が軽すぎる。酔っ払い主張すれば、刑務所行きを免れるのか」「サウナでサイズ比べ。おじさんになっても中身は成長していない」「めった刺しにするとは、相当気にしていたのだろう」「男にとって、ナニのサイズは重要事項」「人の気にすることを言うのは、友人でも許されない。刺されても文句はいえまい」「酔ってサウナに入るなど、単純に危険だと思う」といった声が上がった。 いくら酔っぱらっていたとはいえ、友人を刃物で刺すとは、ありえない行為だ。男性の命が助かったのは、不幸中の幸いかもしれない。記事内の引用についてGerman sauna penis row ends in court for man who stabbed friend 11 times for mocking the size of his manhood(Daily Mail)よりhttps://www.dailymail.co.uk/news/article-11859459/Sauna-penis-row-ends-court-German-man-stabbed-friend-11-times-mocking-size-manhood.htmlMan stabs friend 11 times after row in sauna about the length of their manhoods(Mirror)よりhttps://www.mirror.co.uk/news/world-news/man-stabs-friend-11-times-29464066
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