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男女裸で同じサウナが常識のドイツ、ジェンダーレストイレには反対派が多いワケ

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 今、日本で話題になっているジェンダーレストイレ。特に新宿・歌舞伎町にオープンした複合高層ビル「東急歌舞伎町タワー」内にジェンダーレストイレ、いわゆる男女共用トイレが設置されて物議を醸している。ジェンダーレストイレは性別違和を持つ人や異性の親子連れ、介護が必要な人に有益な一方で、安全面を懸念する声も多い。Twitter上では「女性の安全を脅かす」「あんな治安の場所であんなトイレあったら中で誰が何してるか分からなくて使いたくもない」といった声が上がっている。

 では他国はどうなのだろうか。ドイツではサウナに男女が裸で入るなどジェンダーレスが進んでいる国の一つと言えるかもしれない。ドイツのサウナは男女共用、ともに裸で入るのが基本で、サウナに入ると全員が真っ裸で隠すことなく座っている。

 そもそもドイツではサウナの伝統のようなものがある。一説によると、2000年ほど前のサウナでは、健康とリラクゼーションのために男女が分かれることなく裸で入ることが義務付けられていて、この習わしが現在まで伝わっているそうだ。またドイツのサウナは、水着で入る温泉施設やプールに設置されていることが多い。水着のまま入ると水着についた水が、木でできたサウナの椅子に落ち木材が劣化する、機能面の問題もある。これらの理由でドイツでは、大半のサウナのドアに「サウナには裸で入ってください」と張り紙が付けられている。

 >>車椅子ユーザーのエレベーター問題、ドイツではあり得ない? 原因は国民性か、設備の至らなさか<<

 とはいえ、男女が一緒に裸でサウナに入ることにドイツ人は抵抗がないのか。答えはNOだ。ドイツ人男性に話を聞くと、サウナは心を休める場所だと言い「他人とおしゃべりもしない」そう。そのため「マナーでもあるが、サウナは一人でリラックス時間を楽しむ場所。そもそも人の体をまじまじと見ようと思わない」と言う。また別の30代男性は「サウナで見る異性の体はただの体。性的なものに思えない」と話し、別の20代女性は「サウナに水着で入る方が違和感。サウナで性的な目で見られると考える方がいやらしい」と話していた。ドイツのサウナでトラブルがあったという話はほとんどない。

 そんなドイツでもトイレとなると話は別だ。ジェンダーレストイレについては反対派の人が多く「治安を考えたらトイレが男女共用なんてあり得ない」「男女が入れるトイレなんて何が起こるかわからない」とドイツ人は口々に話す。また、LGBTQの当事者である男性は「男女共用トイレは差別と区別の混同だ。共用トイレを嫌がる人がいたらかえってLGBTQの肩身が狭くなるだけ」と指摘し、別のLGBTQの男性は「ジェンダーレスをアピールするために共用トイレは必要ない」ときっぱり話す。
 実際、ドイツでは小さな飲食店など一部ではトイレが男女共用になっているものの、ジェンダーレストイレはほとんど見かけず、男女別になっていることがほとんどだ。

 ただ、ドイツでもジェンダーレストイレの取り組みがないわけではない。ただし、東急歌舞伎町タワーのように女性トイレをなくしてジェンダーレストイレを設置するのではなく(東急歌舞伎町タワーにも別の階には女性専用トイレがある)、男性トイレ、女性トイレに加えて3つ目のトイレとして共用トイレを設置する取り組みがほとんど。ベルリンではとある男女の公共トイレそれぞれに小便器が設置された。

 トイレを男女で分けず、完全なジェンダーレスにすることに関しては、受け入れる人はいるものの、否定的な反応を示すメディアも多い。ネット上でも「男女の境界線までなくすのは間違っている」「コストもかかる」という反対の声が多く、「いきなり完全なジェンダーレストイレに入るのは抵抗がある。子どもの頃から教育を受け、慣れさせる必要がある。まずは小学校のトイレにジェンダーレストイレを増やすことから始めるべき」と教育から見直すことを指摘する声もある。

 ジェンダーレスを考えることは決して悪いことではなく、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念であり“誰一人取り残さない”ことを考えれば必要なものであるといえよう。ただし助けられる人がいる一方で不便に感じる人も出てくるのは確かだ。バランスを考えながら、できるだけ多くの人の理解を得られるように進めていくべきだろう。

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