販売されていたのは、6月に発売開始された任天堂「Switch2」。ゲーム機は日本からロシアへの禁輸項目に入っており、メーカーもロシアには出荷していないという。ロシアは中東や香港・中国など第三国経由で輸入しているのだ。つまり、制裁には事実上の“抜け穴”があるということである。
番組は深圳にある“中国の秋葉原”で取材したところ、店員は「ロシアからゲーム機やコントローラーの注文が急増している」と話した。実際、中国の対ロシア輸出額(ゲーム機など)は統計上も増えており、ウクライナ侵攻が始まった22年は約19億円だったが、24年は約140億円になった。7倍以上だ。
ではなぜ、ゲーム機やコントローラーの注文が増えたのか。そのヒントは、ロシア国防省がSNSに公開した映像にあった。ドローン部隊のロシア兵がゲームコントローラーでドローンを操縦している姿が映っていた。地経学研究所の鈴木一人所長は「日本から直接輸出は避けられても、第三国経由で調達する。ゲームコントローラーであれ何であれ軍事転用される可能性はある」と話す。
軍事転用されている可能性がある日本製品はゲームコントローラーだけではない。日本のA社が製造している工作機械「CNC旋盤」もその1つ。CNC旋盤とは、コンピューター制御により高速で金属などを加工できる機械だ。番組が入手したロシアの通関データによれば、A社の製品は昨年1年間で192件、中国などの貿易会社からロシアに輸出されていた。
CNC旋盤はミサイルなど武器の部品製造に使われているものとみられている。ウクライナ政府は「CNC旋盤がなければ、ロシアはあらゆる兵器の製造が事実上不可能だ」との声明を出している。ロシア国防省の映像にはCNC旋盤らしき機械が映っているが、製造元の日本企業A社は「ロシアに輸出されている状況は確認できない」とコメントしている。
鈴木所長は「一度海外に出してしまうと、悪意のある再輸出であっても日本企業は管理できない」という。そのうえで「GPSチップを埋め込んで、旋盤の機能を停止するようなスイッチをつけておく工夫はできる」と話す。