弁当を2つ重ねて上の商品1つだけスキャン、スキャンする素振りでマイバッグ、一旦台の上に置いてスキャンせずにカゴへ……。これらはいずれも万引き行為だ。「機械の操作がわからなかった」という言い訳が多いらしいが、中には7日間連続で万引きして摘発された悪質なケースもあるという。
この店ではさまざまな対策を講じている。セルフレジ一台一台に防犯カメラを設置してモニターで常時監視し、従業員を配置して定期的に巡回するなどしている。また、カート下段の大型商品は会計終了後に精算完了シールを貼るなどしている。
ただ、故意ではなく、ちょっとした“うっかり”や、機械の不具合でバーコードが読めないということはあり得る。AIによるスキャン漏れ防止機能がついた最新のセルフレジでは、手に持った商品をAIが検知して漏れがあるとアラートが出るようになっている。開発したメーカーによると、レジ1台につき年間100万円前後のスキャン漏れを防ぐことができたケースもあるという。
当たり前のことだが、万引きだと窃盗罪になる。金額にもよるが懲役刑もあり得る。番組コメンテーターの結城東輝弁護士は「警察に届けて罰則が与えられるところまでに至るのは、かなり時間的コストがかかる。万引きに関しては予防のほうが大事」と指摘する。
実際、操作ミスと万引きの境界が曖昧なときもあって、現行犯以外は立証が難しいときもある。AIも含めて今はテクノロジー進歩の過渡期であり、「あと10年もしたら、『万引きってあったんだね』みたいな時代がくるかも」(結城氏)ということだ。
番組が取材したスーパーはセルフレジ導入によって人件費を約2割削減したといい、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は、被害額500万円と比較することに注目した。
「時給1500円×営業時間×360日×レジの台数、で計算してみた。その2割で約2500万円になるので、仮に500万円の被害があったとしても導入しないという選択肢はない。ただ、見張りのために人件費をかけるとなると、新たな人件費が発生するので、AIを駆使するというのは素晴らしいことだ」(玉川氏)
最近はセルフレジどころか、店員がまったくいない無人店舗まで登場している。AIカメラ、センサー、ICタグ、キャッシュレス決済などのテクノロジーを活用して無人での店舗運営を可能にしている。現在のシステムはまだ客の“善意頼み”になっている部分も多いが、時代は間違いなく無人店舗へと向かっている。人手不足はテクノロジーでかなり解決できるし、初期投資はかかるものの、長期的に見れば採算は合う。