乳がんは年間約10万人が罹患(りかん)する病気だが、日本乳がん学会が認定する乳腺専門医は全国で2000人しかいない。早期発見は医師や検査技師などの経験値に左右されてきた。慶應義塾大学とスタートアップのSmart Opinion(東京・港区)が共同開発したAI乳がん検診「Smaopi」は約90%の確率で病変を正しく診断できる。現在、検診の中心はマンモグラフィだが、マンモグラフィで見つけづらい乳がんにも強い乳房超音波検査だ。これがあれば全国どこでも高い精度で検診を受けられる。
システム開発したSmart Opinionは海外販売を視野に入れ、アメリカで承認を得る準備をしている。山並憲司社長は「アジアには乳がん検診率が1桁しかない国もあり、AIでその国の人たちが健康になればいい」と話す。
レントゲン検査にもAIは活用されている。例えば、気胸は肺に穴があいて空気が漏れる病気だが、番組が取材した横浜の病院のレントゲン写真では気胸を正確に診断していた。このAIシステム、国内では1000以上の医療機関が導入しており、業務の効率化や医師の負担軽減に役立っているという。
このAIシステムを海外で展開するのは、東京大学発のAIスタートアップ、エルピクセル(東京・千代田区)だ。タイは結核の高蔓延国の1つで、2023年には約7万人が結核にかかっている。4月にバンコクで実証実験を開始し、結核の検査を行った。同社のAIシステムはタイの他に、ベトナム、フィリピン、インドネシアでも薬事承認を取得した。
鎌田富久社長は「日本は世界でもっとも検診制度をやっている国で、日本の高品質な画像データや医師のノウハウを学習させているので、日本の医療の高度さが優位性になっている」と語る。
日本のメーカーはもともと、CT、X線診断システム、超音波診断システムなどにおいて、世界市場で高いシェアを誇っている。AIを駆使してどう発展していくのか、今後も注目だ。