まず、フレイルの主な症状は、体重減少、疲労感、身体活動量の低下、歩行速度の低下、握力の低下という5つだ。筑波大学では、65歳以上の男女7万人を対象に、20種目のスポーツ活動がフレイルの進行をどの程度防ぐか比較研究した。
その結果、男性の1位は社交ダンス、女性では登山・ハイキングだった。女性では社交ダンスはランク外だったが、ダンスが効果的であることが分かった。
運動による健康増進を研究している筑波大学の辻大士助教は、「ダンスは多様な動作を含むため、下肢筋力・バランス・柔軟性を同時に鍛えることができる。高齢者も社交ダンスであればゆったりとした曲調で無理なくパートナーと交流でき、心理・社会面にも良い影響を与える」と分析する。
社交ダンス元全日本王者の金光進陪氏は「日頃スタジオでレッスンしているが、93歳の方も参加している。いくつになっても若さを保つことができる」と社交ダンスの魅力を語った。
戦後、社交ダンスには何回かのブームがあった。1940年代後半~50年代には若者を中心に、娯楽と出会いの場として流行した。96年には映画「Shall we ダンス?」の大ヒットをきっかけに始める人が増えた。
2021年の統計では、洋舞・社交ダンスの人口は約129万人とされ、70代と80代も合わせて26%がいる。金光氏によれば、最近は健康目的で始める高齢者が増えているという。
社交ダンスにはフレイル予防だけでなく、認知症リスクを減らすという研究結果もある。アメリカの大学で75歳以上の469人を対象に、余暇活動と認知症リスクの関係を21年間調査した研究がある。何もしない人に比べて、認知症リスクはそれぞれ、家事をする人は12%減、水泳する人は29%減、読書する人は35%減、ダンスは76%減という圧倒的な結果だった。
辻助教は理由について「ダンスは『記憶』『身体感覚』『音楽』『感情』など複数の脳機能を同時に使用するので、脳の神経回路のつながりが良くなり、記憶力・学習能力の向上、脳機能全体の活性化につながる」と指摘している。

