右手首の故障で二軍調整中だった中田が一軍に再招集されたのは、8月25日。チームは最下位転落もあり得る危機的状況で、「緊急昇格」でもあった。その間、4番抜てきもあり、スタメン一塁手として奮闘していたのが、清宮だ。中田復帰後は「一塁・中田、指名打者・清宮」という打順もあれば、中田が代打待機する試合もあったが、2人が揃うと、打線に破壊力を感じられる。
清宮に「違和感がなくなった」というのは、スタメン一塁手としてアナウンスされても、誰も驚かなくなったことを指している。中田の存在感とは、復帰戦で3安打2打点といきなり爆発したように、チーム全体を活気づけてみせたこと。この2人がシーズンを通して活躍すれば、日本ハムが下位に低迷することはないだろう。
「中田と清宮のどちらかが指名打者に回るという、単純な棲み分けにはならないでしょう。日ハムにはほかにも近藤、横尾など指名打者に回る可能性がある選手がいます」(スポーツ紙記者)
しかし、栗山英樹監督(58)は「3人目の一塁手」も選択肢に入れているという。シーズン途中、巨人との交換トレードで獲得した宇佐見真吾(26)である。
「栗山監督は宇佐見を高く評価しています。途中加入でまだ日ハム投手陣の特徴をよく分かっていない。移籍直後から捕手で使ったのは、彼の打撃力を生かしたいと思ったからです」(球界関係者)
そもそも、捕手の緊急トレードを決めたのは、昨季、正捕手の座を掴みかけた清水優心(23)が故障したため。捕手の頭数も足らなくなり、日本ハム側から巨人に宇佐見のトレードを申し込んだのだ。移籍後のハツラツぶりは説明するまでもないが、チームとしては「捕手・清水」も育てていきたい。両捕手を育てていくためだろう。来季の「一塁・宇佐見」案が検討されている。
セ・リーグの試合の解説が多いプロ野球解説者がこう続ける。
「巨人時代は阿部、小林、炭谷、大城との競争で捕手だけではなく、代打での出場も叶いませんでした。かといって、宇佐見の打撃力には惜しいものがあります。『試合に出してもらえる』という喜びが彼の打撃力をもっと高めるでしょう」
宇佐見が一塁手としてだけではなく、指名打者枠の争いでも名乗りを挙げてきそうだ。
もっとも、こんな意見も聞かれた。
「栗山監督は昨年オフ、契約任期を1年延長しました。進退について、球団は『シーズン終了後』という曖昧な言い方です(9月6日の発言)。もし下位低迷の責任を負うことになったら、チームは大きく変わるでしょう」(前出・球界関係者)
中田は好不調の波も大きく、清宮は一軍戦力として試合に出続ける体力がまだない。宇佐見に関する起用法も新監督に引き継がれるとは限らない。見方を変えると、日本ハムの主力は、栗山監督だから最大限のチャンスをもらってきた選手ばかりだ。斎藤佑樹も復活を信じてもらえないだろう。
「栗山監督の去就を理由に、中田がFA権を行使しないとも限りません」(前出・同)
指揮官が代わって、チャンスをもらう選手いれば、その反対もある。日本ハムがオフの主役になる可能性も高い。(スポーツライター・飯山満)