「後任は高津二軍監督が有力」――。最下位に沈む東京ヤクルトスワローズの小川淳司監督(62)の後任として、高津臣吾二軍監督(50)名前が報じられたのは、9月9日だった。妥当といえば、妥当な人事だ。第一次政権の小川監督、真中満前監督がそうだったように、近年のヤクルト指揮官は二軍監督を経験している。その流れからすれば、高津氏が最有力となるのは当然だ。
また、日本、メジャーリーグ、韓国、台湾、国内独立リーグを渡り歩き、新潟アルビレックスBC(ルートインBCリーグ)では、すでに監督も経験している。その当時のアルビレックス選手に「監督・高津」について質問したことがあるが、
「ミーティングでの話、練習中のアドバイスも凄く分かりやすい」
と、評判も上々だった。指導者としてヤクルトに帰還したのは2014年。17年から現職にあり、世代交代を進めるチームの状況も把握している。もし本当なら、期待が持てそうだ。
しかし、今回の監督交代劇には、不可解な情報も多く聞かれた。
「誰が監督に相応しいか、あるいは、誰に監督になってもらいたいかと球団が関係各位にリサーチをかけたら、もっとも多かったのがOBの古田敦也氏でした。兼任監督時代、フロントと衝突することもあって、彼の帰還に抵抗感を持つスタッフも少なくありません」(球界関係者)
ペナントレース中盤あたりから、宮本慎也ヘッドコーチ(48)が「誰かが責任を取らないと…」と、退団を口にしていたとの証言も聞かれた。セ・リーグで“一人負け状態”となっての引責で、今回の高津新監督論と同時に、「宮本ヘッドは退団へ」とも伝えられていた。
「小川監督の2度目の指揮官登板が決まるのと同時に、宮本氏もヘッドコーチに就任しています。この時点で『小川監督の次は宮本ヘッド』という空気になっていました」(スポーツ紙記者)
17年、真中監督で「シーズン96敗」という記録的な大敗を喫し、当時フロント職だった小川氏の再登板が決まった。2度目の小川監督にはチーム再建、戦力が整って、次期監督で優勝を狙う…。この流れに当てはめると、小川監督の参謀役に抜てきされた宮本ヘッドを次期監督と見るのが自然である。しかし、
「宮本ヘッドが先に引責辞意を球団に伝え、あっさり認められました。球団は今季で監督任期の切れる小川監督の退団を否定していません。小川監督には『しばらくしたら、フロント職で戻ってきてほしい』と言い、若い宮本ヘッドには何もナシです」(前出・関係者)
小川監督が先に辞意を表明し、宮本ヘッドがそれに追随するのなら、不自然ではない。そして、帰還を呼び掛けるとしたら、若い宮本ヘッドの方だと思うが…。
ファンが古田氏の帰還を望むのは、愛された選手だったからだろう。また、90年代の強いヤクルトの象徴的な存在でもある。当時のヤクルトは、野村克也監督が選手を育てなからチームも強くなっていった。古田帰還論には、そんな90年代の再現を願っての声も込められているのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)