【不朽の名作】実在の報道写真家を浅野忠信が演じた「地雷を踏んだらサヨウナラ」

まにあっく 2017年05月06日 12時00分

【不朽の名作】実在の報道写真家を浅野忠信が演じた「地雷を踏んだらサヨウナラ」パッケージ画像です。

 現在でも戦地に赴き殉職する報道写真家は毎年何人も出ているが、今回は実在した報道写真家・一ノ瀬泰造をモデルとした1999年公開の『地雷を踏んだらサヨウナラ』を扱う。

 主役の一ノ瀬を演じるのは浅野忠信だ。劇中ではベトナム戦争が飛び火し、戦いが激化するカンボジアに1972年4月に入国してから、アンコール・ワットを目指しクメール・ルージュ政権に処刑されたとされる、1973年11月までを描く。

 書簡などをまとめた同名の書籍が原作なので、それほど話に大きな見せ場がある訳ではなく、淡々としている作品だ。しかし、浅野と一ノ瀬の当時の風貌がなんとなく似ており、20代のエネルギッシュなカメラマンとしてはしっくりくる演じ方だ。変な役を演じることが多い浅野としては、屈託のない笑顔もかなりかなり珍しい…。浅野が好きな人は別の魅力を感じるかも。

 一ノ瀬が当時取材していたベトナム、タイ、カンボジア、ラオスなどを含むインドシナ半島は、第2次大戦終了直後から、フランスやアメリカの戦争介入や内戦などで、戦いが絶えない地域で、兵士・市民だけではなく、ロバート・キャパをはじめ、日本では他にピュリッツァー賞の受賞経験もある沢田教一など、多くの報道カメラマンの命を奪ってきた場所として知られていた。劇中でのその辺りの話はカメラマン同士の会話などでなんとなくではあるが説明される。今では世界遺産に登録され、観光地となっているアンコール・ワットも、当時は1975年にカンボジアの政権を奪取した独裁者ポル・ポトが精神的な指導者となっていた、クメール・ルージュ政権が占拠しており、普通の人が行くのは不可能な地域となっていた。

 そんなアンコール・ワットに一番乗りしようと意気込むのが、一ノ瀬なのだが、始めはただ単に功名のためだったがその気持ちが段々と変化してくる。いや、変化しているのはわかるのだが、どうしてそこまでになったのかイマイチわからないのが、本作の良いところでもあり、悪いところでもある。

 この作品、実在の人物の書簡が元になっているので、変にヒロイックさや、反戦のメッセージも送らない。「そこに山があるから」レベルで「そこに戦場があるから」という勢いで取材している。その影響で、なぜそこまでしてアンコール・ワットに行きたいのか、しっかり一ノ瀬も理由として語らない。この辺り、決して悪くはないのだが、観方によってはよくわからないまま戦場に行き続けるカメラマンを鑑賞し続けることになってしまう。

 加えてシーンごとの時期が飛び飛びになるのも、混乱させる要因となっている。カンボジアで取材禁止エリアの最前線に踏み込み、一度国内追放を受けた後、いきなりベトナムで一ノ瀬はそれなりに報道写真家として有名になってしまっている。生涯を全てを描けとまでは言わないが、この辺り説明不足なのではないだろうか? 加えてベトナムで知り合った女性、レ・ファンとのやりとりに、あまり必要性を感じないシーンが多めだ。無理矢理恋愛描写みたいなシーンを挟みたかったのだろうか。このシーンを削って、多少ヒロイックになってもいいからちょっとは戦場報道にかける情熱の理由くらい欲しかった気がする。

 さらに、戦場カメラマンを題材としているのに、戦闘シーンにイマイチ緊張感がないのもマイマス部分かもしれない。とりあえず撃ってるだけ、吹っ飛んでるだけ感がすごい。同じ東南アジアが舞台でコメディ色が強かった『僕らはみんな生きている』の方がまだ緊張感ある戦闘シーンだったような気がする。銃弾飛び交うなか、兵士が倒れたと見れば、タコツボを抜け出して撮影する一ノ瀬なのに、あまりに至近弾が掠める音も、木や地面への兆弾もしらばっくれた音だったり土煙だったりするので、気の抜けてしまうシーンがかなりある。これじゃ仲間のカメラマンからクレイジー扱いされている理由も薄くなってしまう…。

 あと、最初はカメラの性能だけを頼りに、雑に撮り失敗して、安く通信社から写真を買い取られていたが、その後は成長して有名な新聞媒体に採用されるようになった一ノ瀬の撮影技術の向上が、あまり劇中で見られないのもちょっと気になる。前半と後半では浅野の撮影時の身のこなし方を変えて欲しかった。

 しかし、戦地での日常シーンはこの作品かなりいいかと。親友のカンボジア人教師の結婚式を撮影していると、これまた知り合いの子供を容赦なく地雷で吹き飛ばされる。それを目撃してしまう一ノ瀬の表情。別のシーンでも、直前まで遊んでいた仲の良かった子供が、砲撃なのか爆撃なのか不発弾なのかはわからないが、爆発で死んだ際に、カメラで撮ろうかやめようか迷っていると子供の母親にとがめられるシーンなど、非日常の中での日常を上手く表現している。後はラストでアンコール・ワットに一ノ瀬が駆けるシーンも、現実の一ノ瀬がそこまでたどり着けたのかは定かではないが、本人の真の目的があまりわからない状態でもグッとくるシーンなのは間違いないだろう。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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