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『全開ガール』本当はネクラな新垣結衣が上昇志向の痛々しさを好演

 フジテレビの月9ドラマ『全開ガール』が7月11日から放送を開始した。連続ドラマ初主演となる新垣結衣が、上昇志向の強い新米弁護士の痛々しさを好演した。

 主人公の鮎川若葉(新垣)は貧しい家庭に生まれ、借金取りに追われる父親を見て育ったため、金と法律のみを信奉するようになった。国際弁護士として成功して長者番付に載り、金持ちと結婚してプライベートジェット機で旅行するような生活を夢見ている。米国の法廷小説に登場する拝金弁護士の価値観を体現した存在である。
 ところが就職早々に勤務先の外資系法律事務所が日本から撤退し、何とか国内の法律事務所に採用されたものの、命じられた仕事は事務所代表の桜川昇子(薬師丸ひろ子)の5歳の娘・日向(谷花音)のベビーシッターであった。育児に取り組む若葉は、金も将来性も乏しい山田草太(錦戸亮)らのイクメン(育児に熱心な父親)達と接することになる。

 設定は陳腐であり、先が容易に予想できる展開である。男性を収入で格付けしていた若葉が人間味のあるイクメンと触れ合う中で価値観を変えていくという展開である。この分かりやすさは前々クール『大切なことはすべて君が教えてくれた』や前クール『幸せになろうよ』の反動になっている。『大切なこと』や『幸せになろうよ』では主人公が優柔不断な優しさなど非合理的な言動で視聴者をイライラさせた。
 『大切なこと』や『幸せになろうよ』の主人公のキャラ設定が非合理的であった背景は、合理的な行動パターンが過去のドラマで出尽くしていた点にある。それ故にキャラ設定が分かりやすい『全開ガール』は退屈と批判される危険がある。『大切なこと』や『幸せになろうよ』には斜め上の展開を突っ込みながら観る楽しみがあったが、それは陳腐なドラマでは期待できない。

 この点の救いとなる要素が若葉の存在である。若葉はタイトルの『全開ガール』が示すように全力投球する性格である。この性格は非人間的な合理主義とは必ずしも一致しない。合理的な人間は効率を重視し、無駄なことや無意味なことには努力を省くものである。もともとの若葉の設定も他のことを犠牲にして、ひたすら勉強のみしてきたというものだった。
 ところが、第1話「キスから何も始まらない事証明してやる!」では、国際弁護士のキャリアにプラスにならず、嫌いな育児にも与えられた仕事への責任感から全力投球しようとする。この若葉は合理的というよりも不器用な努力家である。私生活では赤ジャージ着用の庶民派であり、上昇志向自体が外向けの仮面に見えて痛々しい。実際はネクラで大人しいという新垣結衣が若葉の二面性に説得力を与えている。ありがちな設定の中で新垣のユニークな存在感に注目である。

(林田力)

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