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連載ラノベ 夢ごこち(34)

 布団に入ってから、ずっと吉原君のことを考えた。障子が、カタカタ音を立てている。夜風が出てきたんだ。真っ暗な山から吹いてくる風だ。

 吉原君はやさしいから、いつも私を気遣ってくれる。昨日も、キスしてくれたあと、「ごめん」って、あやまってくれた。あやまることなんかないのに。

 吉原君の「キスしていい」と言ってくれた時の顔が思い浮かんで、何度も寝返りをうった。吉原君がつかんでくれた腕を、自分でさわってみたりした。掛け布団が重たかった。それに、体が汗ばんでいる。生理のときは、一日じゅう布団に入っていることが多い。体じゅう汗だらけになって、体臭が出てしまう。

 やだな、今日、汗をかいたら。おばあちゃんの家の掛け布団は厚いから、夜中に、はいでしまうかも。

 片足を出して、掛け布団の上に乗せた。太ももで挟んでみたら、気持ちよかった。そのまま目を閉じた。
 
 夜中、夢を見た。

 障子の向こうに、吉原君が立っていた。布団から起きて、蚊帳から出た。障子の前まで行って、聞いてみた。
 「どうしたの」
 吉原君の返事が聞こえた。
 「おしっこ」
 渡り廊下を歩いて、お便所まで、つき添ってあげた。
 部屋の前まで戻ってくると、お姫様の蚊帳が見えた。
 後ろには吉原君がいる。
 「ねえ、いっしょに寝よ」
 自然に口にすることができた。

 ここはどこ? どうしたのだろう。周りが木ばっかり。山の中みたい。けど、なんでだろう。私、おばあちゃんの家で寝ているはずなのに。そうか、私、今、夢を見ているんだ。

 なら、山の中にいる私は、夢の中の私なんだ。よかった。私、パジャマのまま外を出歩いているのかと思った。でも、夢の中なら、いいや。

 それにしても、ここはどこなんだろう。おばあちゃんの家の山じゃないみたい。山道は向こうへ続いている。けど、上は、枝葉に覆われて空がほとんど見えない。でも、おかしい。ふつう、真夜中の山の中だったら、明かりがなければ、一歩先も見えないはずなのに。今は、明るい。いろいろ見えている。なんでだろう。そうか、夢だからだ。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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