前日まで「6勝4敗」の宇良はこの日、「5勝5敗」の平幕・輝と対戦。取組前の仕切り中には客席から多くの声援が上がっていたが、仕切りを終え行司が軍配を返した後は静かに。場内が緊張感のある雰囲気に包まれる中、腰を下ろした両力士はほぼ同時に右手を地面についた。
この直後、客席から突然「オラ宇良! 頑張れ!」という大声のヤジが上がり、これにつられたのか輝は左足を仕切り先の上に踏み出し先に立ってしまう。立ち合い不成立となり場内からどよめきが上がる中、輝は正面土俵下の勝負審判に頭を下げていた。
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取組開始直前に飛んだヤジについて、ネット上には「誰だ今ヤジ飛ばした奴、非常識すぎるだろ」、「お互い手をついてさあ行くぞってところなのにあり得ない、タイミング考えろよ」、「他の客が静かにしてる中、1人だけバカでかい声を出せる神経が理解できない」、「つっかけて謝る羽目になった輝も可哀想だよ」といった批判が相次いだ。
取組はその後2度目の立ち合いで成立し、懐に潜り込もうとする宇良を突き押しで退け続けた輝が突き出しで勝利。ただ、輝は2度目のつっかけは避けたいと慎重になりすぎたのか、立ち合いの際は左足の踏み込みを仕切り線の手前にとどめ、そのまま胸を出すように立って宇良の当たりを受け止める中途半端な形となっていた。取組終了後、ファンの間からは「輝は客のヤジに影響されすぎじゃないか?」、「なんかふわっとした立ち方だったな、もう少し踏み込んでも良かったのでは」といった反応も見られた。
「相撲協会は新型コロナを理由にこれまで声出し応援を禁止としていましたが、今場所からマスク着用の上なら声出しOKとルールを緩和。これにより今場所は先場所以前に比べて場内が騒がしくなっている面はあります。それでも、今回の宇良戦は行司が軍配を返した後は静寂な雰囲気となっていましたが、その中で突然大声が響いたということもあり輝も思わず動揺してしまったのでは。立ち合い中の声援・ヤジはコロナ禍以前から目立っており、これもあり土俵上で反応してしまう力士はほとんどいませんでしたが、声出し禁止期間を経て耐性が薄れている面もありそうです」(相撲ライター)
相撲ファンの間では、かねて立ち合い中の声援やヤジは力士の集中力を乱す行為と問題視されている。声援を送るタイミングについては今一度考える余地がありそうだ。
文 / 柴田雅人