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〔基本給3万円・大卒以上、住宅営業経験5年以上〕、の求人広告は都市伝説か

 〔就職して最初の給与明細を見たら、基本給が8万円だった〕、というスレッドが2ちゃんねるに立ったのが2001年のこと。

 雇用情勢が悪化の一途をたどる中、いま新たにネットで話題になっている、ある〔求人広告〕がある。
 《住宅リフォームの飛び込み営業、29歳未満、学歴/大卒以上、必要経験/住宅営業経験5年以上、必要な資格/普免、給与/月額11万円(基本給3万円+営業手当8万)、※残業代・休日出勤代無し/昇給・ボーナス無し、休日/日曜のみ(年間休日48日)》
 なんと、ハローワークの求人であるのだ、という。

 ためしに探そうとしたが、窓口対応も含めて、基本給からは会社を探すことが出来ない。「業種は? 住宅リフォームですか。ハローワークの受理条件は、雇用保険など基本的なことは守っていただきますが、最低賃金のほうは、雇用主さんが決めることなので、会社によってまちまちです。それでも基本給3万円なんて正規雇用なら記憶にないですが…」(ハローワーク関係者のA氏)

 仮に正社員が時給制の会社なら、時間給800円で一日7時間働くと計算してほんの6日も働ければ、《3万円》を越えてしまう。
 やっぱり、都市伝説、なのか。
 ただし契約社員なら、〔2か月働いてあとは向き不向きで…〕など有期契約の条件について、労働基準法ではまったく縛っていない。
 「契約社員が、月5日雇用の契約社員というのもある。つまり雇用主さんのつくる条件なのです。仮にこの条件でパートではなく契約社員で一年間雇用することなども、あくまで契約ですから、可能」(労働基準監督署・担当部署関係者B氏)
 よって怪文書は、とりあえず嘘ではなさそう。…などといいたいところだが、この考えは、まったく甘かった。

 週5日一日8時間、週に40時間程度働く、ということをクリアしているのが正社員の基準であるが、「それをくずして募集をかけてくるものが多い」(B氏)のだという。
 B氏が続ける。「基本給3万円、というように、会社がまったくリスクをとらない求人のやり方は、ダメではないのです。給与の内訳を漠然としたもので提示してくる雇用主さんは非常に多い。11万円の内訳について、基本給5万円でも少ないわけですが、実際そういうケースはたくさんあります。そのうえ、基本給:営業手当=5:5なのか5:6なのかわからないような書き方をされる方も普通」
 恐ろしい。

 「給与から手当てをさっぴかれたものが基本給。おそらくこの求人は、通勤手当や交通費が手当ての8万円に入っていることは間違いない。交通費というのは、営業で動く時の交通費の全額でしょう。まさに雇用主さんの書き方次第であり、こういった条件を出してこられてもハローワークのほうで断れないのが現状です。しかも、手当ては雇用したあと勝手に動かせる。この会社が、就業後に手当ての条件をさらに悪くしていくのは、疑いの余地もありません」(同氏)
 冒頭掲げた求人広告は、正社員雇用でもひんぱんに提示されている現実の雇用条件なのであった。

 都市伝説は、まさしくほんとうだったのである。
 この〔求人広告〕には、「企業が人を雇うと雇用助成金が出るから、雇っておいてパワハラで辞めさせるんだろ」などと、ネットの意見も厳しい。
 住宅営業経験5年以上…などのほかの条件については、
 「さすがにそこまでいくといたずらではないか」(B氏)というが、 いくら(学歴? なにをいってるんだ、こいつ…?)などと求職者が首をひねろうとも、実際に会社が何を言おうと、まったく自由なのである。ハローワークでは、月給11万円程度の正社員募集なら、星の数ほどある。

 悪魔のように闇からじっと目を光らせ、「給与11万円」の罠にかかるいたいけな獲物を、てぐすね引いて待っている…そんな、“ウルトラブラック企業”がうようよいるのは、間違いなさそう。

ライター 澤田瑛和

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