急速な景気悪化による大規模リストラや学生の内定取り消しが多発するなど、年の瀬を迎えて国内情勢は厳しい局面に突入している。可能であれば効果のある景気回復・雇用対策に、23兆円どころか50兆円でも100兆円でもジャブジャブ使ってもらいたいところだ。
しかし、その財源があいまいなまま“緊急対策”と大見得を切られても、安心できるわけがない。
麻生首相は「米国発の金融危機が尋常ならざる速さで実体経済に影響し始めている」と指摘。今回の緊急対策23兆円の中身は、10月に発表した追加経済対策(生活対策)などこれまでに盛り込んだ内容を除くと、新たな財政措置として雇用創出のための地方交付税の1兆円増額と来年度予算での経済緊急対応予備費1兆円など一部を追加したにすぎない。
そのうえ景気回復を条件に消費税率を3年後に引き上げる方針を「全く変わっていない。2011年度から消費税を含んだ税制抜本改革を実施したい」と明言。公明党が反発することは分かりきっている。政権支持率急落を受けて求心力低下の著しい麻生首相が、いちかばちかの賭けに出ただけのことである。
さらに、“自爆”で勢いづかせてしまった民主党に、ブラッシュボールを放り込むことも忘れなかった。首相は切れ目ない予算執行の必要性を強調。小沢一郎代表に08年度第二次補正予算案と09年度当初予算案、関連法案の早期成立に向け協力を呼びかけた。せっかくのプランを民主党が邪魔をする…という構図への布石を打ったわけだ。
首相は「急がなければならないのは雇用対策。年末までに急がなければなりません。年度末ではありません」と即効性をアピールしたが、どこまで効果と財源の保障があるか。財源については赤字国債に頼らず、「霞が関埋蔵金」といわれる特別会計の準備金を充てる方向で検討する考えを示した。
緊急対策の効果と、消費税上げで与党内をまとめられるかがキーポイントになる。首相は消費税率引き上げ方針を、政府が年内に策定する「中期プログラム」に明記する意向だ。