子どもの場合を考えると、新型コロナで全国民が神経質になっているとき、明らかに異常な事態が起きていた。
ひとつは「学校に来ないでください」であった。
「お友だちと大きな声でしゃべらないでください」であった。
「お外に出歩かないでください」であった。
新型コロナに全国民が神経質になっていた時代に作られた、あるドラマではこういうシーンがあった。女の子の仲良し同級生2人、下校時もいつも2人一緒である。しかし2人はいつもマスクをしているため、お互いの顔を知らない。
思い切って、マスクを外して顔を見せあっていると、通りがかりのお爺さんが「コラッ、マスクを外すな!」と追いかけてくる。
その場面を同級生男子に目撃された仲良し女子は、そのことをネタにイジメの材料にされる・・・
『あなたのブツが、ここに』というNHKドラマのワンシーンであったが、コロナに神経質になっている時代、マスクしていない子どもを怒鳴る大人は実際にいたし、電車で咳一つしようものなら、明らかに避けられるようなこともあった。
ある中学生はこんなことを言っていたという。
「いじめって本当にあるんですか? あまり学校に行っていないんで、いじめがどういうものかわかりません」
「友だちって必要ですか? 同級生と喋っちゃいけないと言われてきて、友だちいないんですけど」
新型コロナが流行った3年間は、子どもたちにとって「外で遊ぶな」「学校に行くな」「給食のときは喋るな」など、これまでと違うことを大人から教えられてきたわけだ。
2022年の夏、熱中症対策と子どもの心の発達への影響を危惧する点から、他者との距離を保てる場合や運動時にはマスクを外す指導が行われるようになる。
しかしこれまで「マスクは顔のパンツ。パンツを外して人前に出るのは恥ずかしいこと」と、教えられてきた子ども達には、大きな抵抗があったという。
当時の中学生や高校生は、3年間という期間、行事も中止になりロクに友人同士遊べなかった人がたくさんいた。それらの人たちが新型コロナ騒動から、どんな心理的影響を受けたかについてはまだよくわかっていない。
しかし何らかの影響は与えていることであろう。
やがて、かれらが成人して働きだしたとき、「新型コロナ世代」などと言われるようになるのだろうか。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。