スポーツ
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スポーツ 2013年04月01日 11時00分
ポスト原にWBC・山本代表監督 巨人が画策する広島・マエケン獲り(2)
PL学園の先輩である“桑田二世”の異名を持つマエケンの年俸は右肩上がり。5年目で1億円プレーヤーの仲間入りを果たすや昨オフの更改では2億1000万円プラス出来高まで急伸、今オフには3億円突破が確実視されている。これが巨人や阪神のような金満球団なら問題ないが、市民球団のカープでは賄え切れない。危険水位に到達しつつあるのだ。 この場合、普通なら日本ハムのダルビッシュのように早期にメジャーに譲渡し、何十億円もの移籍金をゲットする策に転じるのがこの世界のセオリー。広島も当然それを視野に入れているが、マエケンにその気がない以上、それもできない。そこに巨人は知恵を巡らせているのだという。 「年俸のアップを極力自粛し、お世話になった広島に恩を売る形を取るのです。滅私奉公。そういう形で3年間広島にとどまり、国内FA権を獲得したのちに巨人に移籍することを助言する。大幅ベースアップを我慢した分は巨人で取り戻せばいいと。そういう大所高所に立ったアドバイスが出来る唯一の人物が広島の大先輩であり、侍ジャパンの山本監督。将を射んとすれば先ず馬を射よ。その故事そのままに将来の監督を目指す阿部は、マエケン獲得のためにまずはコージさんを射とめようとしているのでしょう」(ベテラン巨人担当記者) 今回の侍ジャパンで、前田健は同い齢の坂本と仲が良く、坂本を通して阿部など巨人選手と親しくなり、飲食を共にしていた。 「とりわけ、主将で正捕手の阿部には最大の敬意を払うとともに、何かと助言を受けており、『そんなんじゃ、巨人に入れてやんねーぞ』などという軽口もあったほど」(前出・同) 知恵者の阿部が狙うのは、単にマエケンの獲得にとどまらない。他球団に先駆けて広島が取り組んできた、選手育成システムの強奪である。 今回のWBCでは世界最高の二塁手といわれるヤンキースのカノ、ブルージェイズの主砲・エンカーナシオンなどを擁し、人口1000万人ながら米国を凌駕したドミニカ共和国の選手育成システムが話題になった。実は、広島もメジャーリーグのアカデミー制度を参考に、外国人選手の発掘・育成のため、1990年11月に6億円を投じて日本球界初となる『カープ・アカデミー』を作っているのだ。 4面のグラウンドと宿舎を持つこのアカデミーからは史上4人目の40本塁打40盗塁を達成したソリアーノ(シカゴ・カブス)を筆頭に多くにメジャーリーガーを輩出している。これまで広島はアカデミーで育成した高素材はメジャーリーグ、その下は広島、もうちょい下は四国アイランドリーグといった具合に振り分けてきたが、巨人は「カープ・アカデミー→巨人→メジャー」の新規ルート増設を期待しているのだ。 「中日も落合監督の時代、森ヘッドコーチをドミニカに派遣し、ブランコ内野手やネルソン投手を獲得するなど独自のルートを築いてきた。しかし、政権が代わり、森ルートが途絶えた。そこで巨人は広島をはさんでいっちょがみしたいのでしょう。その前段としてマエケンの巨人へのトランジット(一時立ち寄り)を組み込もうとしているわけで、こんな都合のいい橋渡しができるとすれば、やはり山本監督以外には難しい」(球界事情通) 今季の巨人は高橋由率いる国内組とWBC参戦の海外組に二分化している。背景にあるのが次期監督問題。原監督の意向に沿ってゆっくりとした流れの中で高橋ジャイアンツに移行するのか、阿部が目論む山本暫定政権か。 ともあれ、開幕を待たずにコージ、阿部、マエケンの「三本の矢」は放たれた。
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スポーツ 2013年03月31日 11時00分
ポスト原にWBC・山本代表監督 巨人が画策する広島・マエケン獲り(1)
要請した現役監督に次々に断られ、WBCの東京ラウンドを主催する読売グループが頼みやすいとの理由から誕生した侍ジャパンの山本浩二監督(66)=日本テレビ解説者=。WBCのテレビ中継はライバル局のTBSとテレビ朝日とあって江川卓氏、堀内恒夫氏のコーチ入りは出し控えたのだろう。 ところがどうだ。3月8日の台湾戦は26.5%(テレビ朝日)、10日のオランダ戦も34.4%(TBS)、1位通過を決めた12日のオランダ戦も30.4%。 侍ジャパンと山本監督の契約は今年3月末の予定だったが、決勝トーナメント進出の手腕を高く評価して契約延長する方針。2015年3月に国際野球連盟(IBAF)が日本で開催する『プレミア12』に向け、新生・侍ジャパンの基礎づくりを託すのだ。 「続投要請が決まったのは、山本監督が侍ジャパンのコンセプトを誰より理解していることもあるが、次期巨人監督就任への時間調整の意味合いも含まれているのです。代表監督なら巨人観戦やアドバイスも自然だし、主将で正捕手で4番の阿部とも気兼ねなく意見交換ができる。阿部が『コージさんを男にしてみせる』と宣言して渡米したように2人は強い絆で結ばれている」(スポーツ紙デスク) 阿部が山本監督と連携を図るのは、安倍首相が打ち出した「アベノミクス」ならぬ「阿部ノミクス」実現のためだ。現在の巨人は坂本勇人、澤村拓一ら1988年生まれの黄金世代が主流になりつつあり、侍ジャパンの二枚看板だった田中将大(楽天)と前田健太(広島)もしかり。将来を見据えて阿部は'88年選手を広く集め、巨人の現戦力にミックスすることで「阿部ノミクス」を達成しようとしているのだ。 その意味では「マー君」「マエケン」両エースの獲得が理想だが、田中はメジャー志向が強く、今オフにもポスティングシステムでの米球界入りが囁かれている。一方、前田健は日本球界でのバージョンアップを目指しており、巨人入りの可能性が高い。 「マエケン夫人の早穂さんは元東海テレビのアナウンサーで千葉・柏市の出身。大学も横浜のフェリス女学院でバリバリの関東人です。夫が巨人に入れば、日本テレビの看板アナに抜擢されることも予想され、メジャーよりもジャイアンツ入りを期待している。実際、山本監督の子息も日テレの関連企業に就職している。三つ上の姉さん女房にぞっこんのマエケンですから、国内FAで巨人に移籍することが既定路線になっているのです。周囲には『いつかは巨人に行きたい』と漏らしているそうですから」(広島担当記者) 今季で7年目を迎える前田健だが、一軍定着は6年目。順調にいっても国内FA取得にはあと3年かかる。それまでは広島がポスティングを認め、ダルビッシュのようにメジャー移籍するしか転身の道は事実上ない。 そこで「将来の巨人監督」を見据える阿部の出番となる。
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スポーツ 2013年03月30日 17時59分
イチロー ヤンキースのライバル外野手獲得で控え降格危機
今季、レギュラー安泰と思われていたイチロー(39=ヤンキース)の情勢が変わってしまった。 ヤンキースは3月26日(日本時間27日)、バーノン・ウェルズ外野手(34)をエンゼルスからトレードで獲得したと発表した。 ヤンキースでは2月24日(同25日)、ブルージェイズとのオープン戦で、正中堅手で昨季チーム最多の43本塁打をマークしたカーティス・グランダーソン外野手が死球を受けて、右前腕部を骨折。全治約10週間の重傷を負っており、ウェルズの獲得は、その穴埋めとなる。 ウェルズは99年にブルージェイズでメジャーデビュー。02年から11年連続で2ケタ本塁打、通算259本塁打を放っている長距離砲。02、03、06年には100打点をマーク。03、06、08年には3割を記録しており、一発だけではなく、シェアな打撃も魅力。 03、06、10年にはオールスターゲームに出場。04〜06年には3年連続でゴールドグラブに輝いており、堅守も誇る。 しかし、11年にエンゼルスに移籍してから成績が急降下。12年は右手親指の故障で、77試合出場にとどまり、11本塁打、29打点、打率.230と低迷しており、今季は復活を懸けたシーズンとなる。 メジャーでの14年間で、通算1601試合に出場。1695安打、打点908、通算打率は.273。 ヤンキースの外野陣は正左翼手のブレット・ガードナー外野手、イチロー、新加入のウェルズの3人となることが濃厚。 故障のグランダーソンは5月に復帰する見込み。グランダーソンが戦列に戻った時点で、レギュラークラスの外野手が4人となり、一人は控えに回らざるを得なくなる。ウェルズの成績次第では、イチローがレギュラーの座をはく奪される可能性が出てきた。今回のトレードはイチローにとっては、頭の痛い話になったようだ。(落合一郎)
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スポーツ 2013年03月29日 15時30分
松坂大輔 インディアンスを自由契約→再契約のなぜ
MLBのインディアンスとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加していた松坂大輔投手(32)。 3月18日(日本時間19日)に、開幕メジャー枠に入れないことが決まったが、球団、本人とも残留を希望し、マイナーでプレーすることで合意していた。 ところが、インディアンスは24日(同25日)、松坂を自由契約にし、2日後の26日(同27日)に再契約を結んだ。 このめまぐるしい展開を、理解できなかった野球ファンも多いことだろう。それも無理からぬところだ。日本的にいえば、自由契約は「戦力外」。双方とも残留を望んでいるのに、なぜ自由契約になったのか疑問が残るからだ。 これは新たに施行された新労使協定の関係だ。11年11月にMLB機構と選手組合が結んだ新たな労使協定では、「マイナー契約でスプリングトレーニングに参加し、開幕の5日前までに解雇されなかったにもかかわらず、開幕ロースターに残されなかった選手は、10万ドル(約940万円)の支払いを受け、6月1日に自由契約となることができる」と決められている。 この制度はメジャーに残れなかった選手への救済措置で、ルール通りに行くなら、マイナーでのプレーを選択した松坂には10万ドルのボーナスが発生する。球団が自由契約にしたのは、戦力外とみなしたからではなく、ボーナスを破棄するためで、契約内容に細部の変更をした上で再契約に至ったのだ。 ただ、自由契約であるから、ルール上では他球団との交渉も可能になるため、DeNA・中畑清監督が「うちはその枠は取ってある」と獲得の意向を示すなど、国内で情報が混乱。松坂は24日、自身のツイッターで「誤報ではありませんが、もう少ししっかりした内容にしていただかないと、間違った認識をされている方がたくさんいるようなので…。日本にいる友人、知人に説明するのが大変です」とつぶやいて、かき消したほど。 難解なMLBのルールで、インディアンスと再契約した松坂は27日(同28日)、ホワイトソックスとのオープン戦に先発。5回1/3を投げて、5安打2失点とまずまずだった。開幕はマイナースタートとなったが、インディアンスの先発陣は3番手以降が不安定。マイナーでの出来次第だが、松坂が早期にメジャー昇格するチャンスは十分にありそうだ。(落合一郎)
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スポーツ 2013年03月29日 11時45分
2013年プロ野球キャンプレポート・埼玉西武編 「ポスト中島に浮上してきたルーキーと新クローザー」
近年の埼玉西武ライオンズは後半戦で追い上げ、クライマックスシリーズに滑り込む展開となっている。「開幕序盤(前半戦)の躓きがなかったら、優勝も…」と悔やむファンも少なくないだろう。『スロースターターの弱点克服=新人、若手の到来』だとすれば、西武は違う道程でリーグ優勝を目指すようである。 “3割30本”3番打者・中島裕之の抜けた分は2番打者だった栗山巧を昇格させ、片岡治大、秋山翔吾、熊代聖人らが「1、2番」を争う図式になっていた。内野の布陣は主砲・中村剛也、オーディス(DHも)、浅村栄斗、山崎浩司、2年目のヘルマンが固める。昨季と代わり映えしない…。 いや、二遊間のレギュラー争いに割り込んできそうな新人がいた。 背番号2、ドラフト5位の金子侑司(22=立命館大)だ。体つきは細いが、足が速く、捕球からスローイングまでの動きも軽快である。 紅白戦の対戦投手の関係で左打ちしか見られなかったが(両打ち)、2ストライクを奪われたあとでも、セーフティー・バントの構えを見せ、対戦投手の失投を誘おうとしていた。1番バッターとしての資質はたしかに高い。だが、空振りと「三塁側ベンチ方向へのファール」の多さが気になる。しっかりとバットの芯で捉えられないのだ…。守備、走塁は即戦力。プロ投手の変化球に適応できれば、渡辺久信監督は間違いなく、スタメンで使ってくるだろう。 主砲・中村の出遅れが気になる。日本球界9年目のオーディス、新加入のスピリーのいずれかが『代理4番』を務めると思われる。スピリーは威圧感がない。かといって、広角に打てるかといえばそうでもない。でも、長打を狙わずにしっかりと捉えてくる…。突出した特徴のない、平均点の選手といった感じだ。クリーンアップのパワーダウンによって、序盤戦は「0-1」、「1-2」といったロースコアのゲームを落とす可能性もあるのではないだろうか。 投手陣だが、菊池雄星は過去3年とは比べ物にならないほど、腕が振れている。逞しくなったが、セットポジションでの投球になると、球速が落ちる欠点は完全に解消されていなかった。試合序盤はともかく、スタミナが切れ掛かってくるころの中盤以降に不安が残る。首脳陣が各メディアに話した限りだと、今季の先発スタッフは涌井、岸、牧田、石井一久、5番手以降は菊池、野上亮麿、十亀剣らが争う図式。一時的なコンバートだったとはいえ、昨季、30セーブを稼いだ涌井秀章を先発に戻すとなれば、ブルペンスタッフの戦力ダウンは否めない。 ペナント奪回のカギはリリーフ陣が握るのではないだろうか。先発スタッフを見渡すと、石井一は今年40歳、発展途上の菊池、試合中盤に突然崩れる傾向のある野上など、リリーフ陣の助けを必要とする投手もいる。そのリリーフ候補だが、昨季59試合に登板した岡本篤志、左の松永博典は順調に仕上がっていた。ドラフト1位の増田達至(24=NTT西日本)、2年ぶりの西武復帰となったシコースキー、前広島・サファテ、56試合に登板して被弾ゼロのウィリアムスなどもいるが、クローザーが見当たらない。関係者によれば、大石達也の名前が渡辺監督の頭のなかにあるという。その大石だが、キャンプ後半のブルペン投球を見た限りでは、昨年の同じ時期と比べて、真っ直ぐは確実に速くなっている。だが、練習試合やオープン戦の使い方を見ていると、渡辺監督は“慎重”だ。イニングの先頭からの登板、上位打線とぶつからないイニングでの起用…。クローザーの適性があることは早大時代に立証されている。だが、ペナントレースを投げきった経験はない。 渡辺監督の性格から察するに、『クローザー・大石』で開幕戦を迎えるとしたら、1カ月くらいは「救援失敗」も許すだろう。「まだ大石では無理だ」と判断した場面では、岡本や松永を投入するのではないだろうか。 近年、序盤戦の出遅れがV逸となってきた。その弱点解消のカギは大石が握っている。
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スポーツ 2013年03月28日 15時30分
八百長裁判で勝訴の元蒼国来 協会とひと悶着の可能性も
11年4月に八百長の認定を受け解雇されながら、3月25日、東京地裁で解雇は無効との判決が下りた元幕内・蒼国来の恩和図布新(おんわとうふしん)氏(29)が、復帰にあたって、日本相撲協会とモメる可能性が出てきた。 協会は27日に大阪市内で夏場所(5月12日初日=両国国技館)の番付編成会議を開いたが、元蒼国来は編成の対象外だった。 この後の流れとしては、4月3日に協会が臨時理事会を開き、元蒼国来の件を協議するが、判決を覆す証拠がないため、控訴断念を決めることが有力視されている。その時点で、元蒼国来の復帰を認める決定を下すものとみられる。 復帰が決まれば、同4日にも、北の湖理事長(元横綱)が元蒼国来の師匠だった荒汐親方(元小結・大豊)、本人と復帰後の処遇を協議する意向だという。 ここで問題となるのは、番付と復帰時期。元蒼国来は最後に出場した11年初場所(両国)では、東前頭16枚目で8勝7敗と勝ち越し。八百長問題が発覚し、その後、「順席」として発表された序列では西前頭15枚目だったが、解雇処分となったため、同年5月の技量審査場所(両国)前に、しこ名が削除された。 協会関係者によると、復帰後の元蒼国来の地位を、幕内最下位格とする方向であることが分かった。現在の幕内最下位は西前頭16枚目。元蒼国来の解雇前の地位は西前頭15枚目で、番付1枚の差がある。この1枚は大きな差だ。西前頭15枚目なら負け越しても、7勝8敗であれば、幕内に残留できる可能性があるが、幕尻の西前頭16枚目格なら、負け越せば100%十両陥落となる。協会側が幕内最下位格と決めると、番付1枚の攻防で、元蒼国来側が反発することも予想される。 さらに、むずかしいのが復帰時期。荒汐親方は2年のブランクを考慮して、「2場所くらいは休ませたい」と発言。9月の秋場所での復帰を希望している。一方、協会側は夏場所にも、土俵に上げたい意向で、双方の意見に食い違いがみられる。 理事会で元蒼国来の復帰まではすんなりと決まりそうだが、番付と復帰時期に関して、ひと悶着ありそうな気配だ。(落合一郎)
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スポーツ 2013年03月28日 11時45分
2013年プロ野球キャンプレポート・千葉ロッテ編 「クリーンアップ再編と新人・クローザーの大抜擢」
WBCに出場していた角中勝也外野手が、「5番バッター」として出場したのはチーム帰還後2試合目だった(3月23日)。ペナントレース本番まで1週間を切ったこの時期に、角中をクリーンアップに戻したということは、打撃陣に「不安」を感じているからだろう。 新監督・伊東勤氏は、昨季の首位打者で機動力もあるこの角中を1番か、2番で起用する構想を打ち明けていた。昨季の「5番打者」の打順を動かすということは、クリーンアップ全体の改造にも繋がってくる。井口資仁、ホワイトセル、今江敏晃、福浦和也、大松尚逸、サブローがその候補とし、オープン戦は「4番・井口」で臨む試合も多かったが、今一つ得点効率が上がって来ない。角中のチーム合流後の最初の打順は2番。2番では2安打を放ち、5番打者として臨んだ23日は勝負強いところも見せ、チーム唯一の打点を稼いでいる。昨季のチーム打率2割5分7厘、出塁率3割2分は、ともにリーグトップ。しかし、打ち勝ったというイメージはあまり強くない。敗因は主に故障者続出による投手陣の崩壊だが、とにかく連敗が多かった。伊東監督が打線改造を念頭にキャンプインした理由は、世代交代の途中にある投手陣をカバーする目的もあったのではないだろうか。 その『クリーンアップ改造』を念頭にキャンプを見たが、井口、ホワイトセル、今江の打球に「格の違い」を感じさせられた。福浦、大松らにも安定した力があったが、「期待できそうな若手は?」と聞かれると、昨年、支配下登録を勝ち取った角晃多、根元峻一、鈴木大地といったところだろうか。ただ、彼らはクリーンアップ・タイプではない。長打力という点では、若手のなかでは細谷圭が目立っていた。細谷の守備位置は主にファースト。ポジションではホワイトセル、福浦と被ってしまうが、指名打者候補にベテランが多いので、今季は出場機会が増えるのではないかと思えた。 投手陣だが、ドラフト1位の松永昴大(24=大阪ガス)が「面白い」と思った。社会人時代から「先発、リリーフの両方ができる好左腕」と評されていたが、ブルペン投球を見て感じたのは、肩を早く作れること。20球弱のキャッチボールで全力投球に入っていた。スライダーが武器だとは聞いていたが、その曲がり幅が非常に大きかった。右打者の膝元を想定した『外角低め』へのコントロールも良い。1年先輩の左腕・藤岡貴裕も、右打者の膝元にストレート、スライダーを決めるコントロールを持っていたが、“タイプ”が異なる。藤岡が右打者の膝元に決めるボールが「ストライク・カウント」を取るものだとしたら、松永は対戦バッターの腰をひかせるもの。ただ、ドラフト当時は「150キロ以上出る」と紹介されていたが、さほどのスピードは出ていなかったように思う。伊東監督は「クローザー起用も…」と一部メディアでコメントしていたが、「早く肩が作れる」点ではその適性は十分に持っているようだった。 また、レデズマが良い。昨季8月に来日初登板を果たしたが、左のパワータイプ・ピッチャーで、おそらく、長打力のある右打者と真っ向勝負しても、力負けしないだろう。他球団は上方修正すべきだが、100球前後を投げたブルペン投球を見たとき、「アレ!?」と思った点が1つだけある。通常、100球前後を投げ込む場合、変化球も使う。カットボール系の変化球(?)、スライダーは投げていたが、「緩いボール」は全く見られなかった。持ち球に『緩急の変化球』はない? スタミナは十分そうだが、2巡目に捕まってしまうのではないだろうか。そうなると、このパワー・レフティーはリリーフで使わなければならない…。 石垣島キャンプに招集された24人の投手中9人が左投手だ。成瀬、藤岡、ドラフト2位の川満寛弥は先発候補。救援陣の軸は2年目の右腕・益田直也だとしても、左のリリーバーが多くなるだろう。しかも、そのほとんどがオーバー・タイプ。球質が異なるとはいえ、松永がクローザーを務めるとなれば、“似たような左腕タイプ”ばかりなので、リリーフの構成、継投が難しくなってくる。伊東監督にとって、腕の見せどころではあるが…。
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スポーツ 2013年03月27日 11時45分
2013年・日本人メジャーリーガーはどうなる? イチロー(ニューヨーク・ヤンキース)
ニューヨークで蘇ったと言ってもいいだろう。本人もまだまだやれると思っているはずだが、イチロー(39)は“色々な意味”で、ベテラン扱いされるようだ。 昨季途中、イチローは自ら申し出て、マリナーズを去った。打撃不振が続き、シアトルの地元メディアは「イチローをベンチに置き、来年以降のためにも若手を使うべきだ」と書き立てた。しかし、実質的オーナーでもある山内溥氏(任天堂元会長)の意を汲み、現場首脳陣はイチローをスタメンで使い続けた。また、マリナーズとの複数年契約の最終年でもあり、経営陣も早い時期から『残留』を示唆していた。移籍後の活躍は説明するまでもないが、マ軍との契約を引き継いだヤンキースは契約延長の交渉をすぐに始めようとはしてかった。理由は主に2つ。まずは、交渉の優先順位が低かった。最優先事項とされたのが、実質的エースだった黒田博樹の残留で、次に重要視したのが二塁手のロビンソン・カノー、中堅手のカーティス・グランダーソンの慰留だった。 「ニューヨークのファンもイチローに残ってほしいと思っていました。ヤンキースは『イチローの地区優勝における貢献度は大きい』としつつも、戦力的バランスを考え、できれば、『右の外野手』を補強したいとし、その方向で動いていました。その結果を受け、イチローとの残留交渉に入るスケジュールになっていました」(米国人ライター) ヤンキースが獲得リストに挙げていたのは、ニューヨークメッツからFAになったスコット・ヘアストン外野手(32=現カブス)だった。昨季は134試合に出場し、出塁率2割9分9厘、本塁打20本と活躍している。成績は「イチローの方が上」だが、メッツでの最終年俸は、110万ドル(約8300万円/レートは当時)。イチローはマ軍時代の1800万ドル(約13億5000万円=同)から、今季は650万ドル(約5億8500万円)にダウンしたものの、働き盛りのヘアストンがお買い得な値段で獲得できる状況にあったのも、交渉を遅らせた要因ともなった。 「対戦チームの先発投手が左だった場合、スタメンから外れる可能性もある旨も残留交渉の時点で伝えている。イチローもチームの方針に従う、と」(前出・同) ヤンキースはイチローに『年間安打数200本以上』という、往年の打棒復活を臨んでいるわけではない。守備力で期待されているようだ。 昨季終盤、ジラルディ監督はイバニエス、ジョーンズ(現・楽天)といった強打の外野手よりも、イチローのスタメンを優先した試合がいくつかあり、その理由について、「守備範囲の広さ」とコメントしたことが何度もあった。マリナーズ最終年でもあった昨年、一昨年、「イチローの守備範囲が狭くなった」との米報道も見られた。しかし、ニューヨークでイチローの守備力は蘇った。優勝争いを義務づけられたチームの緊張感がプラスに働いたからだろうか。まあ、万年最下位争いのチームにいて、高い集中力を維持するのは並大抵ではなかったと思うが…。 対戦投手のタイプ、相性によってスタメンを外される試合も実際にあるだろう。しかし、それも「休養日を与えながら、ベテランを使うメジャー式の1つ」とも言えなくもない。イチローの契約は1年。だが、守備面でジラルディ監督の期待にしっかり答えていけば、来季以降の契約延長も難しくないだろう。※メジャーリーガーのカタカナ表記は『週刊ベースボール増刊 Major LEAGUE 12年3/20号』(ベースボールマガジン社)を参考にいたしました。
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スポーツ 2013年03月26日 15時30分
日本相撲協会困った! 八百長でクビにした元蒼国来に解雇無効判決
日本相撲協会が困った事態に直面した。 11年2月に起きた一連の八百長問題で、関与を認定され、同年4月に解雇された中国出身の元幕内・蒼国来の恩和図布新(おんわとうふしん)氏(29)が力士としての地位確認を求めて訴訟していた件で、3月25日、東京地裁(古久保正人裁判長)は問題とされた取組で八百長があったとは認めず、解雇は無効として力士の地位にあると確認し、解雇後の給与の支払いを命じた。 協会の特別調査委員会は、対戦相手の元幕内・春日錦(元竹縄親方)と仲介役とされた元幕下・恵那司の供述に基づき、元蒼国来が10年夏場所の春日錦戦で八百長をしたと認定して、11年4月11日に引退を勧告。これを拒否した元蒼国来は同14日に解雇処分となった。 元蒼国来は同22日、力士としての地位保全などを求める仮処分を東京地裁に申し立て、同年6月9日、仮処分申請で協会が元蒼国来に幕内力士の月給に当たる約130万円を1年間仮払いする内容で和解。同17日、幕内力士としての地位確認などを求めて本訴を起こした。口頭弁論は同年7月に始まり、12年12月20日に結審した。 ポイントとなったのは元竹縄親方と元恵那司の証言だった。古久保裁判長は元竹縄親方の供述には多くの疑問点があり、元恵那司は元蒼国来と元春日錦を仲介した記憶がないと供述していると指摘。「過去に八百長に関与したことがうかがえるが、(八百長認定された取組の)春日錦戦が八百長だったと認めるには十分でない」と判断した。つまり、証拠不十分ということだ。 また、今回の処分の妥当性について、「八百長問題で個々の力士よりも大きな責任があると、特別調査委員会から指摘されている協会が、引退勧告に応じないことが秩序を乱すとして最も重い解雇処分を選択するのは相当性に疑問がある」とした。 敗訴を受けて、北の湖理事長は「控訴するかどうかは弁護士の意見を踏まえて判断する。判決を真摯に受け止め、危機管理委員会を中心に原因を検証したい」と慎重にコメントした。 ただ、判決を覆すだけの証拠が乏しいため、協会は控訴を断念するものとみられている。元蒼国来はカムバックに意欲満々で、協会は控訴しない場合、4月上旬に臨時理事会を開き、この問題を協議する。復帰が決まれば、早ければ、夏場所(5月12日初日=両国国技館)で土俵に上がることになる。元蒼国来は11年初場所で、東前頭16枚目で8勝7敗と勝ち越しており、復帰となれば、その地位以上の番付が用意されると思われる。 これまで、同様の経緯で協会から解雇されたモンゴル出身の元十両・星風のボルド・アマラメンデ氏(29)も、力士としての地位確認と慰謝料を求める訴訟を起こしているが、一、二審で解雇を有効とする判決が出ており、上告中。 元蒼国来の件に関し、協会が控訴しなければ、復帰を認めざるを得ない。協会が八百長を認定した力士が戻るとなると、前代未聞。協会にとって厄介なのは、古久保裁判長が当該取組ではない過去の相撲において、「八百長に関与したことがうかがえる」としている点である。協会はそんなグレーな力士を受け入れなければならず、正直頭が痛い。 さらに、八百長裁判で元力士側が勝訴したことで、八百長を認定されて処分された他の元力士や元親方が、新たな訴訟を起こす可能性も出てくる。そうなると、協会も困ったことになってしまうだろう。(落合一郎)
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スポーツ 2013年03月26日 11時45分
2013年・日本人メジャーリーガーはどうなる? 黒田博樹(ニューヨーク・ヤンキース)
メジャーリーグには、日本の野球メディアが使わないデータ数式も定着している。その1つである『ランサポート』(以下=RS)によれば、黒田博樹は昨季、20勝に到達していたことになる。 RSとはその投手が登板した際、味方打線の挙げた平均得点を表すもので、黒田は4.30(点)。メジャー平均は4.45(点)だったので、援護射撃に恵まれていなかったかが分かる。また、昨季喫した11敗のうち、自責点4以下の試合は9。あくまでも数字上だが、「20勝に到達していた」と言われるのはそのためだ。 今季の黒田が、ヤンキースはエースとして扱うだろう。ヤンキースの看板投手、CCサバシアは6月にDL(故障者リスト)入りの屈辱を味わった。当時の報道によれば、「DL入りは6年ぶり」とのこと。そのタフネスぶりから「ラバーアーム=ゴムマリのような丈夫な腕」とも称されたが、昨季は2度DL入りしている。しかし、ヤンキース首脳陣は、2016年まである契約を全うして欲しいと思っているのだろう。「13年は、サバシアが投げるときは球数が多くならないように注意していきたい」なるコメントも聞かれるようになった。ヤンキースが黒田残留を最優先事項に挙げたのもサバシアの衰えが隠しきれなくなってきたからである。 昨年の成績を改めて見てみると、防御率、登板数、クオリティ・スタート(=QS)、WHIP、イニング数、勝利数がチームトップ。名実ともに、「ヤンキース投手陣の顔」である。米報道によれば、黒田の最大の武器はスライダー。右バッターの外角ギリギリのストライク・ゾーンから鋭角に曲がっていく軌道は「一流」とあったが、黒田はこの鋭角に曲がるスライダーを右バッターのインコースや、左バッターの膝元にも使う。とくに右バッターのインコースに投げるときが興味深い。対戦打者は自分の体近くに来た「ボール球」だと思って避けるが、鋭角な曲がり方でストライク・ゾーンに入っていく。決め球のシンカー、フォークボールは対戦バッターに応じて使い分けているため、相手打線は狙い球を絞りきれないという。 「キャンプ、オープン戦はスロー調整です。今季38歳になる年齢からして、マイペース調整が許されるのは当然ですが、不安材料を挙げるとすれば、オープン戦終盤に入っても、ストレートの速度が戻っていないことですね」(米国人ライター) ヤンキースは黒田との残留交渉において、複数年契約を提示。毎年のように言われているが、1年契約にこだわるのはやはり広島カープへの帰還が念頭にあるからか…。昨季は、メジャー移籍後最高となる16勝を挙げた。2ケタ勝利を収めれば、ヤンキースはシーズン途中から残留交渉を始めるだろう。※メジャーリーガーのカタカナ表記は『週刊ベースボール増刊 Major LEAGUE 12年3/20号』(ベースボールマガジン社)を参考にいたしました。