スポーツ
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スポーツ 2013年05月02日 15時30分
DeNA・中村ノリが日米通算2000安打達成も、“お役御免”にカウントダウン!?
日米で6球団を渡り歩いた“苦労人”ノリこと中村紀洋(39=DeNA)が、イチロー(ヤンキース)、松井秀喜、松井稼頭央(楽天)に続く、史上4人目の日米通算2000安打を達成し、名球会入りへの資格を満たした。 ノリは5月1日のヤクルト戦(横浜スタジアム)の4回裏、赤川克紀投手(22)から今季4号となる左翼越え本塁打を放ち、国内で1995安打をマーク。05年のドジャース時代に記録した5安打を含めて、2000安打に到達した。 しかし、ノリに笑顔はなかった。「(米国での5本は)思い出せと言われても思い出せないし、数に入れたくない。自分は日本の野球に育てられてきたんだから」として、花束贈呈などのセレモニーを辞退した。 ノリにとって、米国での1年間は苦い思い出しかない。ポスティングシステム(入札制度)を利用して、ドジャースとマイナー契約を結んだノリは、オープン戦で好成績を収めるも、開幕メジャー入りは果たせず。4月中旬に故障者の穴を埋める形でメジャー昇格したが、満足な出場機会が与えられないまま、選手補強のために枠を空ける必要があるとして、約1カ月後にマイナー降格。マイナーでは22本塁打を放つものの、その後、2度とメジャーからお呼びは掛からなかった。 メジャーで残した成績は17試合出場、39打数5安打0本塁打3打点、打率.128と寂しいもので、ノリが「思い出したくない過去」と言うのも無理からぬところだ。 ノリが目指すのは、あくまでも国内だけでの2000安打達成で、あと5本は時間の問題。その先に見据えるのは、残り6本と迫った400本塁打になる。 しかし、400本塁打の達成には困難が待ち受けているようだ。というのは、ノリのポジション問題。今季、首脳陣の当初のプランでは、一塁に中日から移籍のトニ・ブランコ内野手(32)、三塁に若手の筒香嘉智内野手(21)が固定される予定で、ノリは控えに回るはずだった。だが、筒香が開幕早々、故障と不振で2軍に降格したため、ノリが三塁に固定された。早期の2000安打達成は、筒香の2軍落ちの恩恵といえた。ただ、今後、筒香が調子を取り戻して、1軍に合流した場合は、若手への切り替えのため、筒香が優先的に起用されるのは明白。 4月6日に2000安打を達成した同僚のアレックス・ラミレス外野手(38)は、守備の不安と不調が相まって、すでにスタメンから消えている。ノリも同様に、2000安打到達を契機に、“お役御免”へカウントダウンとなりそうな雲行きだ。(落合一郎)
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スポーツ 2013年05月01日 11時45分
中日杯2013東海オープンボウリングトーナメント 優勝は栴檀稔 プロ通算12勝目をあげる
東海地区で男子プロの熱い戦い「中日杯2013東海オープンボウリングトーナメント」が、4月26日から3日間、三重県の津グランドボウルで行なわれた。 同大会は、プロ199名(JPBA'13男子トーナメントプロ)と歴代優勝者4名を含むプロ・アマボウラー総勢260名が終結し、優勝賞金総額6,500,000円(優勝賞金150万円)をかけて戦った。波いるライバルをかきわけて優勝したのは栴檀稔プロ(ボウルアロー松原店)。今季開幕戦での優勝で、プロ通算12勝目をあげた。 今回の勝利は2005年「第28回イーグルクラシック」優勝以来8年ぶりとなった。ベストアマには岡田誠選手(岡崎グランドうボウル)が輝き、JPBA(日本プロボウリング協会)公認になるパーフェクトゲームは大会を通じて5つ達成された。 詳細はこちら>(社)日本プロボウリング協会 http://www.jpba.or.jp/写真提供:JPBA
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スポーツ 2013年05月01日 11時45分
米メディアが太鼓判 あるぞ! 青木宣親のタイトル獲得
米・野球サイト『ファングラフス』に、こんな予想記事が掲載されていた。<ナ・リーグの首位打者はAOKI(が獲る)だろう> 青木宣親外野手(31=ブリュワーズ)は、昨季、リーグ最多となる『内野安打34』をマークしたこと。バッターボックスから一塁ベースに到達するまでのスピードも「3.9秒」と速い(同サイトより/バント時は3.7秒とも)。5人目の外野手として入団したため、出場機会に恵まれない時期もあったが、今季は完全なレギュラーとしてスタートした。「一塁到達までのスピード=内野安打量産」はもちろんだが、「出場機会が増えれば、もっと打率を上げられる」と、米メディアも高く評価していた。 「青木に対するブリュワーズ首脳陣の評価も、昨季とは比べものになりません。レーニキー監督もボール球を打たない青木の打撃について、『選球眼が良い』という表現で、何度も称賛していました」(米国人ライター) 青木が首位打者を獲得すれば、イチローに継ぐ快挙となる。 しかし、青木がタイトル獲得を意識しているとすれば、『盗塁王』ではないだろうか。 「昨季のナ・リーグ盗塁王、エバース・カブレラの走塁速度が落ちています。5回トライして、3回も失敗している…」(4月16日時点/前出・同) 調べてみたところ、昨季44個の盗塁を成功させたカブレラは、48回トライして、失敗はたったの「4」。序盤戦とはいえ、成功率91.7%のスピードランナーがこれだけ失敗すると、盗塁チャンスの場面があっても躊躇してしまうのではないだろうか。 また、昨年度のオフの時点から青木への追い風も吹いていたようだ。 ナ・リーグ盗塁王部門の2位=マイケル・ボーン、3位=ホセ・レイエス、4位=シェーン・ビクハリーノはア・リーグ球団に移籍してしまった。5位(2人)のカルロス・ゴメスは青木のチームメイトだが、キャンプ中盤で腰痛を患っており、まさに『本命不在』。同部門9位で30個の盗塁を稼いだ青木にもチャンスは十分すぎるくらいある。 ヤクルト時代を知るNPB関係者の1人も、こう言う。 「去年のホワイトソックス戦(6月23日)を思い出してくださいよ。ノリ(青木)は『1試合4盗塁』をマークしました。対戦チームの捕手が弱肩と分かれば、ガンガン走っていく積極性もありますからね」 ナ・リーグの盗塁部門は、青木の同僚でもあるジーン・セグーラ内野手が7個でトップ。青木は3個で14位。順位は低いが、すぐに追いつける数字である(4月27日時点/現地時間)。※文中におけるMLB関連のカタカナ表記は『メジャーリーグ選手名鑑2013年版』(廣済堂出版)を参考にいたしました。
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スポーツ 2013年04月30日 11時00分
復帰でも今後が不安な蒼国来
なんともあっさりと断念。相撲協会は4月3日、両国国技館内で臨時理事会を開き、3月25日に東京地裁が八百長問題で解雇された幕内蒼国来(29、本名恩和図布新、中国出身、荒汐部屋)の処分を無効とした判決について、控訴しないことを満場一致で決めた。相撲協会の全面敗訴だ。 蒼国来は5月の夏場所は出場せず調整につとめ、次の名古屋場所(7月7日初日)から復帰する。廃業や解雇、除名された力士が再び土俵に戻るのは戦後初めて。 それにしても、どうして相撲協会はこんなにも潔く引き下がったのか。 「前理事長の放駒親方(元大関魁傑)と現理事長の北の湖とは、犬猿の仲とまでは言わなくても、不仲は明らかでしたからね。今年の2月、放駒前理事長は定年退職していますが、理事長時代あれほど強権をふるったのに、恒例となっている退職会見も拒否し、ひっそりと大相撲界を去っています。いずれ全面否定される日が来るのはわかっていたんでしょう。だから、今回の控訴断念についても話はしませんよ。もう相撲協会の人間じゃないもん、とまるで他人事のように語り、自分が主導したのに無責任すぎる、と猛批判されています」(担当記者) これで不幸な事件は一応落着したが、問題はむしろこれから。晴れて無罪となった蒼国来はさっそく4日からまわしを締めて土俵に降り、約3時間、四股や鉄砲、すり足などで汗を流した。 しかし、2年のブランクは大きく、体重は解雇前と同じ135キロだが、おなかのあたりはたるんでブヨブヨ。これを元の引き締まった体に戻すのはたいへんだ。これだけ世間の注目を集めたのだから、結果、十両に急降下では話にならない。 蒼国来は、八百長問題に弄ばれた悲劇の男から脱することができるだろうか。
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スポーツ 2013年04月27日 17時59分
復帰間近のアスレチックス中島裕之が抱えるポジション問題…
右太股の裏を痛めてDL入り(故障者リスト)していた中島裕之(30=アスレチックス)が、近々に実戦復帰する(26日予定/現地時間)。中島は米・アリゾナでの『居残りキャンプ』で実戦形式の走塁練習メニューをこなしており、完全復活も時間の問題と思われたが、現地関係者の評価はかなり厳しかった。 「中島がメジャーでやっていくなら(試合に出たい)、ファーストミットも用意した方がいい…」(米国人ライター) 米メディアは“5人目の内野手”として獲得したジェド・ラウリーの活躍を報じていた。それは暗に「中島が正遊撃手争いで敗れたこと」も指している。 そもそも、アスレチックスはショートのレギュラーを予定して中島と契約した。また、ア軍は効率的、かつ独自の数式に基づく補強法で必要最低限の選手数しか獲得しない。したがって、日米両メディアとも中島が正遊撃手の座を射止めるのを確実視していたが、オープン戦の成績があまりにもひどすぎた…。 42打数7安打(1割6分7厘)。失策4。失策数はチーム最多である。これに対し、ラウリーはチーム最多の13打点をマークしたが、追い打ちをかけるようなハプニングも起きた。 「昨季3Aで健闘したウィークスがオープン戦で3割7分の打率をオープン戦で残しました。しかも、『3人目の遊撃手候補』でしかなかったパリーノも3割6分8厘をマークしています。ア軍は内野手6人を登録して開幕戦に臨む予定でしたが、高打率を残したこの2人をマイナー落ちさせるほどサバイバルレースが激化し、中島1人が不振に陥ってしまったような状況でした」(前出・同) 中島が開幕戦をマイナーで迎えたのは「故障のため」と報じられている。怪我をしたのは本当だが、「DL入りしていなければ大恥をかいていた」というのが、米メディアの一致した見方だ。しかし、中島がメジャーデビューする可能性はまだ残されている。 ア軍の名物GM、ビリー・ビーン氏は今季も一塁手と二塁手にお得意の『プラトーン起用』を見せているからだ。 プラトーン起用とは、平たく説明すると、左投手には高打率を残せるが、右投手が相手だとマイナー並みの打撃しかできないなど、偏った特徴を持つ選手がいるとする。その反対に右投手しか打てない選手もいる。そういう選手は『代打稼業』しか務まらないが、ビーンGMは「1000万ドル払って欠点のない選手と契約するより、100万ドルずつ払って、右投手専門、左投手専門の選手を獲って1つのポジションを託した方が安上がりだ」と考えてきた。 そのプラトーン起用で今季のポジションを決めたのが一塁と二塁。中島はオープン戦で、すでに二塁の守備に着いている。左投手用一塁手のフライマンと、同二塁手のサイズモアは、オープン戦の打率成績はあまり良くなかった。右投手戦用一塁手のモスも好不調の波が激しいタイプとされているだけに、中島が「一塁も守れる」ところも見せれば、絶好調の遊撃手・ラウリーと競争しなくても試合に出られるというわけだ。 西武時代、中島は守備センスの高い選手としても知られており、短期間で一塁の守備にも適応できるだろう。 「内野守備の本格的な練習再開はこれからですが、簡単なノックをショートの守備位置で受けていました」(現地特派員の1人) 正遊撃手の夢はいったん諦め、まずは試合に出ることを考えるべきだと思うが…。※文中におけるMLB関連のカタカナ表記は『メジャーリーグ選手名鑑2013年版』(廣済堂出版)を参考にいたしました。
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スポーツ 2013年04月27日 17時59分
苦肉の策! 日本で世界戦できない亀田兄弟の三男・和毅が海外で世界挑戦へ
「3兄弟世界チャンピオン」を目指すボクシングの亀田3兄弟の三男・和毅(21=亀田)が、苦肉の策に打って出る。 JBC(日本ボクシングコミッション)が4月1日付で承認したWBO(世界ボクシング機構)が26日(日本時間27日)、公式サイトでWBO世界バンタム級6位の和毅がニカラグアで世界戦を行うプランを発表した。 同サイトによると、和毅は父・史郎氏(47)とともに、ニカラグア入りし、WBOのフランシスコ・バルカルセル会長と記者会見に臨み、5月下旬か6月上旬に世界同級王者のバウルス・アンブンダ(ナミビア)に挑戦する計画を進めていることを明らかにした。 史郎氏は「亀田プロモーションの夢のひとつは、3兄弟が同時に世界チャンピオンになること。ギネス記録を樹立したい。WBOが和毅の闘いのために、我々をサポートしてくれるとうれしい」とコメントしている。 昨年7月、WBC世界スーパーフライ級王者・佐藤洋太(協栄)の陣営が、和毅に対戦オファーを出したが、和毅側がメキシコ開催を主張。佐藤陣営は国内開催を譲らず、決裂して世界戦が消滅した経緯もある。 和毅はWBC世界バンタム級シルバー王者で、WBA同級のランキングにも入っているが、JBCでは安易な世界挑戦を防ぐため、「国内での世界挑戦は世界、東洋太平洋、日本のいずれかの王座獲得経験者に限定する」とのハードルを設けているため、日本王座も東洋太平洋王座も獲得経験がない和毅には国内での世界挑戦の資格がない。 「3兄弟世界チャンピオン」、そして、12月開催の「亀田祭り」で3兄弟による3大世界戦を目論む亀田陣営としては、和毅の海外での世界挑戦は苦肉の策といえる。(落合一郎)
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スポーツ 2013年04月27日 11時00分
“祝義”を喜んで受けた力士も続出 協会が困惑した春巡業の観客乱入騒動
大相撲の地方巡業では本場所では見られないファンサービスが行われるが、思いがけないアクシデントも付き物のようだ。 「その“1万円札バラまき事件”が起こったのは、4月6日の神奈川県藤沢市『藤沢場所』。化粧まわしをつけた力士6人が土俵上で輪になり、手拍子に合わせて自慢のノドを披露する“相撲甚句”の最中。輪の中心は春場所、横綱、大関に初挑戦し、ファンを沸かせた大阪出身の勢(伊勢ノ海部屋)でした」(担当記者) その甚句がたけなわに差し掛かったとき、突然、60歳前後の初老の男性が土俵に上がってきたのだ。 「呼出しが慌てて下りるように促したのですが、男性はその手を振り払い、やおらポケットから財布を取り出すと、歌っている力士たちに1万円札を1枚ずつ配り始めました。きっと“ご祝儀”のつもりだったんでしょう。最後は強制的に引きずり下ろされ、配ったお金もすぐ返還されましたが、場内はとんだハプニングに大騒ぎでした」(同) ひいきの力士や上位を食った力士たちに、タニマチ(後援者)がご祝儀を渡すのは大相撲界の伝統だ。 大正時代、後に横綱になった新小結の栃木山が横綱太刀山の連勝を56でストップさせ、意気揚々と花道を引き揚げて来ると、汗で濡れた背中に百円札が2枚貼り付いていたという。 当時の百円は今なら30万円以上の価値がある。いかに若手力士の殊勲にファンが狂喜したかを物語るエピソードとして語られているが、これと今回の1万円札バラマキ事件とは、およそ似て非なるもの。単なる小金持ちが、これ見よがしに配っただけだ。 「悲しいのは、すぐに返還したものの、いったん6人の力士全員が、それを嬉しそうに受け取ったこと。大相撲界が力士たちの意識改革に取り組んで久しいですが、尾車巡業部長(元大関琴風)は、『今後、二度とこういうことが起こらないように目を光らせないといけない』と苦い顔。改革の効果が上がっていないことを露呈してしまいました」(スポーツ紙記者) 変化の道、いまだ遠し。
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スポーツ 2013年04月23日 11時45分
地元ファン最優先の広島・松田元オーナー
慰留が「最大の戦力補強」と言うべきか…。大竹寛(29)が得点圏に走者を背負いながらも粘り強いピッチングで今季2勝目を挙げた(4月17日)。野村謙二郎監督(46)も「しっかりと試合を作ってくれた!」と上機嫌で語っていたが、大竹といえば、その3日前に『国内FA権』を取得したときの“異例の賛辞”も思い出される。 「言動も立派になった。今の状況ならいいコーチになれる」 慰留を明言したのは、ほかならぬ松田元オーナーだった。その言葉通りなら、大竹は『幹部候補』として、将来も約束されたわけだ。 かつて広島はFA権を行使しようとする選手に対しては「見送る傾向」も強かった。 「慰留交渉で年俸がつり上がるのを嫌ったからですが、野球の成績とは別に、経営陣による『独自の査定』も影響していたように思います。お気に入りの選手(ベテラン)は大切にするが、そこから漏れた選手はたとえ主力であっても、待遇が冷たいというか」(球界関係者) 川口和久、江藤智、新井貴浩などの看板選手がFA権を行使した背景には、そんな線引きもあったらしい。 しかし、昨今はそうではない。昨季もFA権を取得した栗原、廣瀬を引き止めており、旧広島市民球場から3万3000人収容の『MAZDA Zoom−Zoomスタジアム広島』に本拠地を移し、「観戦者収入が上がり、球団経営も好転している」という。FA取得選手のプライドを満たすのに十分な“資金”を得たようだ。 「野村監督の次が見つからないからですよ」 プロ野球解説者の1人がそう言う。どういう意味かというと−−。 「野村監督は地元財界にもファンが多い。その野村監督を招聘することで財界からの支援も得たわけですが、過去3年、クライマックスシリーズにも進出できていません。結果を出さないと、野村監督に指揮を続けさせる意味もなくなってしまう。単にチームを強くするだけの指揮官ならすぐに見つかるでしょうが、地元財界が応援してくれるような後任監督はなかなか見つかりませんから…」 栗原、廣瀬はクリーンアップ候補だが、バットマンとしての数値は物足りない感もある。大竹もドラフト1位選手ではあるが、先発ローテーションの4番手以降だ。戦力の喪失は優勝圏内から遠ざかるだけではなく、チーム経営にも影響しかねない。 「生え抜きの選手を大切にする…。そうしなければ、地元ファンからも見限られてしまいます」(前出・関係者) オーナー自らが大竹の慰留を明言したのは、チーム経営のためでもあったようだ。 2年目の野村祐輔が登録抹消で先発要員が不足している。大竹は十分に存在価値を見せつけたようである。
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スポーツ 2013年04月23日 11時00分
リハビリ密着取材3055日 ミスター完全復活への執念(2)(スポーツジャーナリスト・吉見健明)
多摩川台公園でのリハビリも同様だ。 運動場を10往復。調子のいい日は、周囲の公園内も歩くようになった。 その際、子犬を連れて散歩する主婦や顔見知りになった男性らと会話する余裕すらある。また、T広報や介護士と野球の話にも花を咲かせている。少し離れた所にいても、その情景がわかるほどミスターの声は大きい。 最近ビックリした光景があった。麻痺している右手ではなかったが、ゴルフボールくらいの柔らかい玉を、ミスターが下から投げたのである。5月5日に予定されている松井の引退式の始球式用にサプライズで準備しているのか。 “ミスターが投げ、ゴジラが打つ”。スポーツ紙の見出しではないが、その練習をしているのでは、と思わせる微笑ましい光景だった。 ミスターと松井のW国民栄誉賞受賞で親しい読売関係者はこう話していた。 「これは明らかに会長(渡辺恒雄球団会長)が画策していますよ。秀喜(松井)は読売に帰ってこない−−という情報を報告されてからは、会長の機嫌が悪くなった。自分が“イチローを巨人監督に…”との発言を棚に上げ、メンツばかり気にしている。『絶対に他球団に渡すな!』が至上命令ですよ。会長は一度、決めたことはなんとしても成し遂げないと気がすまない性格。政治力を使ってでもね」 さて、リハビリ開始から全く変わっていないことが一つある。時間だ。 前述のように、月曜日は多摩川台公園に7時10分に現れリハビリ。火曜日から土曜日までは7時50分に都内・自然教育園に到着する。多少時間がずれても5分くらいの正確さだ。 私が長い間、リハビリ取材を継続できたのも、ミスターのこの時間厳守に助けられたのかもしれない。 実は、ミスターへの密着取材は読売サイドに拒絶されている。再三の取材要請を断られ、「止めてくれ」との忠告まで受けている。 しかし、'11年10月4日、多摩川台公園で初めてミスターに「お元気になられて良かったですね」と挨拶した。ミスターは最敬礼して「おはよう。ありがとうございます」と返してくれた。これこそがミスターの魅力にほかならないと思う。 医学的に再起不能とまでいわれたミスターが社会復帰を成し遂げている。次なるリハビリ目標は「もうすぐ走れますよ」。このことの方が国民栄誉賞ものだ。
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スポーツ 2013年04月22日 11時00分
リハビリ密着取材3055日 ミスター完全復活への執念(1)(スポーツジャーナリスト・吉見健明)
地方紙の『上毛新聞』(群馬)が長嶋茂雄、松井秀喜のW国民栄誉賞受賞をスクープした4月1日の月曜日午前7時10分、リハビリを日課とするミスターの姿はなかった−−。私はいつものように、時間厳守の長嶋茂雄(ここからミスターと呼ばせてもらう)を待ったが、ついに多摩川台公園にはこなかった。 国民栄誉賞が表面化したこともあり、ミスター担当のT広報がその旨を伝えたからだ。月曜日は決まって東京・田園調布の自宅近くの多摩川台公園でリハビリ散歩をするのだが、ここは一般人も通る公園である。今では、ミスターがリハビリをするのを知っている住民も増えてきたから、混乱を避けたのだ。 2004年3月、ミスターが脳梗塞で倒れて以来、私はずっと動向を追ってきた。ミスターのリハビリ取材でいえば、3055日(4月10現在)になる。 '07年1月、星野仙一(現・楽天監督)が〈北京五輪監督に就任〉と新聞で報じられた翌日から、五輪監督就任を励みにしていたミスターは10日間リハビリを休んでいる。あとリハビリ休養日である日曜日(当初の3年間はリハビリをしていたが、休養日を作るべきだと主治医の指示で休むようになった)以外、雨の日も風の日も関係なく、ミスターは続けてきた。 ミスターのリハビリで驚かされるのは、その回復力の速さと生命力だ。脳梗塞で倒れ、生死を彷徨ったミスターに対し、主治医は“寝たきりを覚悟”と長男・一茂に伝えたほどだ。 そんな重体だったにもかかわらず、退院後リハビリを開始。翌年の'05年6月には、リハビリの際、すでに杖をはずして歩いていた。車の乗り降りにも杖は使わなくなった。4年目からは、介護士が万一の場合に備え横で杖を持って歩くこともしなくなった。 多摩川台公園下から田園調布の自宅までの坂道も一気に上がり、今では15分で完了する。私が歩いても息がキレるほどの坂道だ。 ミスターのリハビリで変わったのは、回復力だけではない。表情も明らかに違う。 初めの3年間は悲壮感漂うリハビリだった。見ている方にも怖いくらいの執念が感じ取れ、必死に歩いていた。それが5年前からはリハビリを楽しんでいる様子が一目瞭然なのだ。 たとえば、土曜日は都内の自然公園内を歩くのだが、最後の500メートルは早足走法なうえ、公園に響き渡るような大声を出す。 「イチ、ニ、サン、シ」 介護士の号令と合わせて、ミスターも腹の底から声を張り上げる。声のリハビリを兼ねているから迫力も十分だ。今年からは、リハビリ開始から取り組まれるようになった。 介護士はリハビリが終わると、主治医に携帯電話で報告している。 「右足(麻痺が残る)爪先で地面を蹴って歩けるようになりました」 と介護士も自分のことのように喜んでいる。以前のような暗さはなく、爽やかな表情と笑顔があった。