「中島がメジャーでやっていくなら(試合に出たい)、ファーストミットも用意した方がいい…」(米国人ライター)
米メディアは“5人目の内野手”として獲得したジェド・ラウリーの活躍を報じていた。それは暗に「中島が正遊撃手争いで敗れたこと」も指している。
そもそも、アスレチックスはショートのレギュラーを予定して中島と契約した。また、ア軍は効率的、かつ独自の数式に基づく補強法で必要最低限の選手数しか獲得しない。したがって、日米両メディアとも中島が正遊撃手の座を射止めるのを確実視していたが、オープン戦の成績があまりにもひどすぎた…。
42打数7安打(1割6分7厘)。失策4。失策数はチーム最多である。これに対し、ラウリーはチーム最多の13打点をマークしたが、追い打ちをかけるようなハプニングも起きた。
「昨季3Aで健闘したウィークスがオープン戦で3割7分の打率をオープン戦で残しました。しかも、『3人目の遊撃手候補』でしかなかったパリーノも3割6分8厘をマークしています。ア軍は内野手6人を登録して開幕戦に臨む予定でしたが、高打率を残したこの2人をマイナー落ちさせるほどサバイバルレースが激化し、中島1人が不振に陥ってしまったような状況でした」(前出・同)
中島が開幕戦をマイナーで迎えたのは「故障のため」と報じられている。怪我をしたのは本当だが、「DL入りしていなければ大恥をかいていた」というのが、米メディアの一致した見方だ。しかし、中島がメジャーデビューする可能性はまだ残されている。
ア軍の名物GM、ビリー・ビーン氏は今季も一塁手と二塁手にお得意の『プラトーン起用』を見せているからだ。
プラトーン起用とは、平たく説明すると、左投手には高打率を残せるが、右投手が相手だとマイナー並みの打撃しかできないなど、偏った特徴を持つ選手がいるとする。その反対に右投手しか打てない選手もいる。そういう選手は『代打稼業』しか務まらないが、ビーンGMは「1000万ドル払って欠点のない選手と契約するより、100万ドルずつ払って、右投手専門、左投手専門の選手を獲って1つのポジションを託した方が安上がりだ」と考えてきた。
そのプラトーン起用で今季のポジションを決めたのが一塁と二塁。中島はオープン戦で、すでに二塁の守備に着いている。左投手用一塁手のフライマンと、同二塁手のサイズモアは、オープン戦の打率成績はあまり良くなかった。右投手戦用一塁手のモスも好不調の波が激しいタイプとされているだけに、中島が「一塁も守れる」ところも見せれば、絶好調の遊撃手・ラウリーと競争しなくても試合に出られるというわけだ。
西武時代、中島は守備センスの高い選手としても知られており、短期間で一塁の守備にも適応できるだろう。
「内野守備の本格的な練習再開はこれからですが、簡単なノックをショートの守備位置で受けていました」(現地特派員の1人)
正遊撃手の夢はいったん諦め、まずは試合に出ることを考えるべきだと思うが…。
※文中におけるMLB関連のカタカナ表記は『メジャーリーグ選手名鑑2013年版』(廣済堂出版)を参考にいたしました。