ジャイアンツは昨季のワールドシリーズ覇者で、10年にも世界一となった強豪チーム。田中は招待選手として春季キャンプに参加し、開幕メジャー入りを目指すことになる。
田中の守る二塁には昨季のリーグ優勝決定シリーズでMVPに輝き、シーズン通算で打率3割をマークした堅守のマルコ・スクタロ内野手(37)がどっかり座っており、田中がいきなりレギュラーを奪うのは至難のワザ。まずは、控えの内野手として、メジャーのメンバーに入ることが目標となる。
田中には他球団からも複数のオファーがあった。にもかかわらず、あえてマイナー契約でメジャー昇格できても控え要員となるジャイアンツを、なぜ選択したのだろうか。
関係者によると、田中は「一番自分の能力が発揮できる場所」と話しているという。ジャイアンツのブルース・ボウチー監督(57)はスモールベースボールを掲げ、日本式な送りバント、進塁打も多用する。ボウチー監督が描くち密な野球は、バントが得意で、正確なバットコントロールが売りの田中には最適な球団ともいえるのだ。
某スポーツ紙記者は「決め手となったのは、1年後にFAになる契約条項が含まれている点です。マイナー契約からのスタートでも、今季結果を残すことができれば、オフにはFAとなって、ジャイアンツを含めて、好条件でオファーを待つことができます。あくまでも、結果が出せたらの話ですが、この条項は契約するにあたって、大きかったようです。また、ナ・リーグには指名打者制がありませんので、ア・リーグより代打として出場機会が増える可能性が高くなります」と語る。
とはいえ、メジャーに昇格して試合に出場する機会を得て、結果を残さなければ、田中の思惑は机上の空論に終わってしまう。前年、マイナー契約でマリナーズ入りした川崎宗則内野手(31=元ソフトバンク)は、開幕メジャー入りを果たしたが、打撃面で結果が出せず、1年で自由契約となり、いまだに今季の所属先が決まっていない惨状だ。
レギュラーを期待されてアスレチックス入りした前西武の中島裕之内野手(30)とは、その待遇に大きな開きがある。控え選手を承知で、あえて厳しい競争に身を置く田中のサバイバルは吉と出るのか?
(落合一郎)