「前向きに進んでいると考えていたが、明らかに違ったみたいだ…」
レ軍のジョン・ダニエルGMが報道陣の前で落胆の表情を見せたのは、主軸バッターのジョシュ・ハミントル(31)が「エンゼルスと合意に達した」との一報が飛び込んできた12月13日だった(速報は12日未明/現地時間)。ハミントルは2010年ア・リーグMVP、今季も43本塁打、128打点をマーク。その彼がFAになった時点で、他球団は目の色を変えた。争奪戦となり、レ軍を上回る条件を提示する球団も少なくなかった。地元記者団に「代理人が交渉のテーブルに着いた」と教えられ、コメントを求められても「だから、何?」(同GM)と、タカを括っていたという。
「ダニエルGMが強気な姿勢を見せていたのは、ハミルトンとその代理人と約束を交わしていたからです。同GMが明らかにした話では、『他球団と交渉がまとまりそうになったら、必ずレ軍に電話を入れる』ということ。でも、その電話は入らず、エンゼルスと契約したという結果だけが報道陣によって知らされました」(米国人ライター)
ショックを隠せなかったのは、移籍先が同じア・リーグ西地区のライバル球団ということだけではなかったようだ。
また、トレードを含めての話になるが、レ軍は主力選手の流出が止まらない。00年のメジャーデビュー以来、「レ軍一筋」のマイケル・ヤングもトレードでフィリーズへ。正捕手で通算146本塁打のマイク・ナポリもレッドソックスと合意。今季途中から加わった先発のライアン・デンプスター、主にセットアッパーとして61試合に登板したマイク・アダムス、上原浩治もレッドソックス入りが決まった。しかも、09年のサイヤング賞投手、ザック・グリンキーの争奪戦にも敗れている。投打ともに「メジャー・トップクラス」を誇った戦力のダウンは否めない。
「ダルビッシュも正捕手のナポリの退団には驚いたと思いますよ。昨年の今ごろは、ダルビッシュ獲得で盛り上がっていました。でも、1億1270億ドル(総投資額)も投じたので、何となく、今オフは『緊縮』の空気が漂っていました。レ軍首脳陣は否定しますが…」(前出・同)
また、地元紙はヤングの退団を強く惜しんでいた。同時に「やっぱり…」というニュアンスも伝えていた。ヤングは10年のキャンプイン直前、ダニエルGMと“衝突”している。ベルトレイ加入により、守備位置を失い、DHにまわされたからだ。同GMと話し合い、いったんは「トレード要求(退団)」が認められたが、チームメイトとファンに引き止められた。なぜ、同僚たちが引き止めたか…。彼はチームリーダーとしての人望が厚いからだ。また、ライバルとなるベルトレイに対しても「私とフロントの問題で申し訳ない。君との間には何も問題はない。レ軍にようこそ」と握手を求めたという。以後、ヤングへの信頼はさらに高まっていただけに、今回の退団を惜しむ声は「地元ファンからも多く聞かれる」とあった。
ダルビッシュ獲得のためのポスティングに5270万ドルを掛け、『6年総額6000万ドル』という大型契約を交わした。そのツケが今オフに出たということだろうか。