社会
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社会 2018年02月20日 14時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 株式バブル崩壊
2月5日、6日の東京株式市場で大暴落が起きた。5日は前日比592円の下落、翌6日も前日比1071円の大幅安となったのだ。7日には少し値を戻したが、今後も下落のリスクは消えない。 この連載でも書いたように、私は昨年11月から“株価バブル”に警鐘を鳴らし続けてきた。ただ、私は株価バブル崩壊のタイミングを見誤っていた。崩壊は、あと半年くらい先だと思っていたのだ。 その理由は、バブル崩壊のきっかけだ。私が考えていたのは、都心不動産のバブル崩壊。都心のタワーマンションは、売り物が増えて、バブル崩壊寸前の状態にあるが、まだ暴落はしていない。今回の東京市場暴落のきっかけは、ニューヨーク株式市場の暴落だった。 米国の実体経済が悪化したわけではない。景気過熱とともに上昇した長期金利が、3%近くにまで達するなかで、資金が株式市場から債券市場に流れ出したのだ。 ただ、日米で、これだけの暴落が起きるということは、日米ともに投資家が株価の高所恐怖症にかかっていたことを意味する。 バフェット指数という株式指標がある。世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェット氏が活用していると言われるこの指数は、株式の時価総額がGDPの何倍になっているのかという指数だ。 1月末の株式時価総額は710兆円、GDPは549兆円だから、バフェット指数は1.29倍だ。バフェット指数は“1倍”が正常と言われることから、日経平均は29%も割高だったことになる。 ちなみに、バフェット指数が1倍に戻るためには、日経平均が1万8000円まで下がらないといけない。バブル崩壊の場合は、しばしばオーバーシュートするから、日経平均が1万8000円を割り込むようなことがあれば、株式投資のチャンスになるだろう。 私は、安倍総理はつくづく運のよい人だと思う。今回の株価下落は、米国ではリーマンショック並みと呼ばれている。昨年の解散総選挙の際、安倍総理は、「消費税率は2019年10月から予定通り10%に引き上げる。ただし、リーマンショック並みの経済危機が訪れれば、話は別だ」と言った。つまり、今回の株価暴落は、安倍総理に消費税率の凍結、あるいは、引き下げのための絶好の口実を与えたということだ。 私は、年内に安倍総理が消費税増税の凍結、もしくは引き下げの記者会見をすると考えている。そうすれば、内閣支持率は大幅に上昇する。その環境の下で、憲法改正の国民投票を仕掛けるのだ。 消費税を引き下げれば、景気は絶好調になる。いま安倍政権は、国税庁の佐川宣寿長官を人質に取っている状態だから、財務省は安倍総理に対してはまず逆らえない。逆らったら、佐川長官が逮捕される可能性が出てくるからだ。 それでも財務省の強固な反対に遭って、消費税は引き下げではなく、凍結という結論になったとしても、景気は回復する。すでに、消費税の引き上げを前提にした教育無償化などの2兆円の財政出動を決めているからだ。 株価下落は不幸だが、これで、いよいよデフレ完全脱却のための役者が揃ったのだ。
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社会 2018年02月20日 08時00分
南海トラフ大地震が台湾M6.4でいよいよ最終段階に入った!
2月6日、台湾東部の花蓮県をM6.4、最大震度7(現地基準)の地震が襲い、死者17人、けが人280人の被害が出た(11日時点)。台湾では一昨年にもM6.6規模が発生(台湾南部地震)して117人の死者が出るなど、度々巨大地震が襲うことで知られているが、専門家の間では“今回の地震は日本での南海トラフ巨大地震の前触れではないか”との声が上がっている。 そもそも台湾と日本はプレートの境界付近に位置し、活断層が複雑に入り組む点で非常に似ており、地震大国でもある。また、日本で1923年に南関東を震源とした関東地震(M8.2=諸説あり)が発生した3年前には、M8.3という同規模の巨大地震が花蓮県沖で発生、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)の前年には台湾中部で死者2000人を超える巨大地震が起きるなど、時期を前後して互いに大きな揺れが襲っている。 「台湾はもともと、いくつかの島がフィリピン海プレートと大陸側のユーラシアプレートが衝突することによって集まった島で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んだ際に今の地形が形成されました。花蓮県辺りは、まさにこの2つのプレートの接点の上に位置し、これとまったく同じ状況にあるのが、南海トラフ巨大地震が発生する地域です」(サイエンスライター) 東海地震、東南海地震、南海地震を発生させ、それらの連動性も指摘されている南海トラフは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートと衝突して沈み込んでいる一帯を言う。 地震学が専門で武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏も、こう警鐘を鳴らす。 「台湾の地震は日本で起きる地震のタイプとまったく同じで、言ってみれば兄弟分のようなものです。現段階で学問的には証明されていないが、フィリピン海プレートで起きた大地震のため、日本全体に与える影響は少なくない。やはり、中でも南海トラフでの地震が心配です」 しかし、今回台湾で起きた地震の直接の原因は、直下の活断層の活動だ。果たして、南海トラフの震源地になるであろう静岡県から2000キロ近く離れた場所で起きた地震と関連性などあるのだろうか。 防災ジャーナリストの渡辺実氏は、こう説明する。 「確かにあの地震は花蓮県直下の活断層が動いたことによるもので、建物の被害は活断層の近くに集中しており、過去の教訓が建築技術に活かされていなかったことは残念でなりません。ただ、活断層が動いたそもそもの原因は、フィリピン海プレートが押す力です。それは日本も同じことで、プレートテクトニクスから見れば、2000キロ、3000キロ離れているといっても、さしたる違いではない。しかも、同じ力で押してくわけです。つまり、巨大地震が起きてしまうかどうかは、プレッシャーに耐えられない弱い部分があるかどうかにかかっているのです」 折しも、政府の地震調査委員会は9日、南海トラフで発生するM8〜9級の巨大地震が、今後30年以内に起こる確率が「70〜80%」に高まったと発表した。 調査委では毎年発生の確率を見直しており、南海トラフ地震の場合、平均間隔が88年。これに加え、最後に起きた1944と'46年の昭和東南海地震、昭和南海地震からの経過時間を使って計算すると、昨年は74.2%となり、発表としては「70%程度」だった。しかし、今年は1%上昇したことにより、四捨五入の関係で「80%」と、一つ高いランクの表記になったという。この計算方法でいけば当然、確率は時間の経過とともに上昇するため、“今後50年”となれば90%の確率となる。 「30年で80%というと、今生きている人が遭遇するかもしれないという数字になってきます。ただ、今回の発表でいきなり発生確率が上がったわけではない。南海トラフ地震のようなプレートどうしの間で起こる海溝型地震は、プレートが動き続けているために年々、確実に発生確率が高くなる。そのことを忘れてはいけません」(前出・島村氏) さらに気になるのは、昨今しきりに起きている、いわゆる「環太平洋造山帯」での噴火や地震だ。 「環太平洋造山帯とは、太平洋の周囲を取り巻く火山帯。太平洋プレートを中心としたフィリピン海プレートなどの海洋プレートが、隣接するプレートに沈み込んでいるために火山や地震活動が活発で、日本列島はもちろん、台湾もその域に入っています」(前出・サイエンスライター) 日本時間で1月22日には、フィリピンのルソン島南部にあるマヨン山が大噴火を起こし、翌日23日にはインドネシアのジャワ島でM6.0、さらに米アラスカ沖の太平洋でM7.9の巨大地震が連続して起きており、これらもすべて環太平洋造山帯に位置する。 「不気味なことに、時を同じくして23日、あの白根山(群馬県)噴火も起きている。29日には宮城県と山形県境の蔵王山の火山活動が活発化、2月9日にも宮崎県と鹿児島県境の霧島連山の御鉢で火山性地震が増加している。地球規模で見ても、危うい状態が続いているのです」(同) 南海トラフ巨大地震は確実に迫っている。
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社会 2018年02月19日 12時00分
なぜ危険?プロ野球の放映権を獲得するDAZN
2月16日の『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)は、2018年からプロ野球11球団の全試合の動画配信を発表したDAZNを特集。 DAZNは一昨年、Jリーグと10年で2100億円という巨額の放映権契約を締結し注目を集めた動画配信サービスで、サッカーだけでなく、F1やテニスなど様々なスポーツの配信も行っている。 番組は、今回プロ野球の放映権を獲得した狙いを、DAZNのCEOのジェームズ・ラシュトン氏にインタビューした。ラシュトン氏は「野球がなくてもコンテンツは充実していたが、完成形にするにはどうしても野球が必要だった」とコンテンツをより強化するために、野球の放映権を獲得したと語る。 ただ、「最初は利益が出ないことはよく分かっている。投資回収が遅れることもよく分かっている」とここ1年間で約100万人のユーザーを獲得したが、まだ採算はとれていない現状を口にした。今後は数年をかけて巨額の投資を回収する見込みのようだ。 DAZNに入会すれば、多くのスポーツを楽しむことができる。ただ、DAZNが多くのスポーツの放映権を青田買いしている現状は、スポーツ界にとって大きな問題になりかねない。 昨年、DAZNはJリーグに「金曜日にも試合をしてほしい」という要請をした。土日は様々なスポーツの試合も多く行われるため、土日開催が基本のJリーグの試合日を平日にスライドさせれば、DAZNの視聴数を増やせる可能性があるからだ。 Jリーグとしては、土日のほうが集客が望めるため、平日に試合をするのは避けたい。だが、10年2100億円の契約をしている“お得意様”相手に意見するのは難しく、今シーズンから「フライデーナイトJリーグ」と称した金曜日開催の試合が数試合組まれている。 もちろん、DAZNがプロ野球にも試合時間や試合日の変更を要求する可能性は大いに考えられる。 様々なスポーツを手軽に見られるのはありがたいが、視聴者だけでなく、チーム運営も意識した戦略を展開してくれることを祈りたい。
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社会 2018年02月18日 22時10分
スターバックスの企業向け新戦略 ネットでは不評?
2月15日に放送された『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)では、スターバックスの新たな戦略を特集。 スターバックスは、オフィス内でもスターバックスのコーヒーを楽しんでもらうおうと、専用のマシンを企業に有償で貸し出しする新たなサービスを発表した。 この新サービスの狙いをスターバックス ジャパンのCEO・水口貴文氏は「お店という形態では出られなかった、閉鎖商圏だったり小規模な商圏を取っていくことが大きなメリット」とスターバックスを利用しづらい地域の人にも、スターバックスの良さを知ってもらう良い機会になると考えているようだ。 大浜平太郎アナウンサーから、店舗を離れた戦略は、これまで築いてきたブランドイメージを損なってしまうのではないかと質問される。水口氏は「我々はこれがコモディティー化(大衆化)を推し進めるとは思っていないんです。品質を落とすとか、むやみに広げるとコモディティー化が起こると思っているんです。だけど、今回のコーヒーのレベルは相当高いので、(ライバル社はその味を)出せないと思います」とオンリーワンであることは変わらないと力強く語った。 ただ、ネット上では「スターバックスはよく行くけど、コーヒーはほとんど頼まない」「スタバってコーヒーの美味しさじゃなくて、心地よい空間を売ってるんじゃないの?」「別にスタバのコーヒーメーカーじゃなくて良い気がする」とスターバックスに特段味を求めていない人は少なくないようだ。 また、ネスカフェでもオフィス向けにコーヒーマシンを貸し出しするサービスは既に行われており、スターバックスと違い、こちらは無償でマシンの貸し出しをしてくれる。 これまで順調に店舗数を増やしてきたスターバックスだが、戦略に多少の陰りが見え出してきたのかもしれない。
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社会 2018年02月18日 14時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第258回 日本とイギリスの移民問題
改めて、日本の高度成長期の経済成長率が、同じく高度成長していた欧米の「2倍」だったという事実は、日本人の資質、才能、勤勉性、優秀性などでは全く説明できない。日本の高度成長(厳密には欧米の2倍の経済成長率)は、需要が供給能力を上回り続ける高圧経済の下で、「移民」により人手不足をカバーできなかったからこそ、達成されたのである。 何しろ、移民が入って来ない以上、溢れる需要を「今いる国民」の生産で満たすしかない。当然ながら、社会全体に「生産性向上」の圧力が掛かり、実際に公共投資、設備投資、人材投資、技術投資という「資本主義の基本」である4投資が拡大し、需要が肥大化。肥大化した需要を埋めるために、さらなる生産性向上の投資が行われる循環構造で、日本は世界第2位の経済大国に成長した。 そもそも、 「日本の高度成長は、高圧経済下で移民を入れなかったからこそ達成された」 を否定する人は、50年代から55年代に至る西ドイツの成長率の「失速」(それでも欧米平均並みの成長率に下がっただけだが)をいかに説明するのだろうか。西ドイツの国民の能力とやらが、いきなり落ち込んだせいなのか。 違う。西ドイツは50年代中頃から「移民」を外国人労働者として受け入れ始め、生産性向上のペースが鈍った。ただ、それだけの話である。 移民を受け入れないことで、生産性が高まる。実は、昨今のイギリスが証明してくれた。イギリスは'16年6月23日にEU(欧州連合)からの離脱(いわゆる「ブレグジット」)を国民投票で決めた。それ以降、イギリスから移民が大流出。'17年6月までの1年間で、12万人以上がイギリスを去った。また、EU市民の中で、イギリスに移り住む純移民の数は43%の減少。特に「A8」と呼ばれる東欧8カ国の市民に限定すると、減少率は8割を超えた。 結果的に、イギリスでは人手不足が深刻化し始めた。そして、人手不足を「技術投資」などの生産性向上で乗り切ろうとする動きが始まる。'17年7〜9月期のイギリスの労働生産性は、対前期比で1%近くも上昇した。グローバリズムに背を向け、移民制限(事実上の)により人手不足が深刻化したからこそ、イギリス国民の生産性は向上。本連載で繰り返している通り、生産性向上こそが実質賃金の上昇をもたらす。 イギリスにおけるグローバリズムの旗手たるエコノミスト誌も、 「労働力の減少は、英国に良い効果をもたらすとの主張もある。近年、外国人労働者であふれてしまったことが、低賃金の職種において賃上げの抑制要因になっていたと考えられるからだ。移民労働者が減れば、企業も地元の低熟練労働者を訓練すべく、技術投資を増やさざるを得ないだろう。そうなれば、現在低水準にある英国の労働生産性も改善すると考えられる('18年1月26日『英で移民流出加速 企業は頭抱える』より)」 と、書かざるを得ない状況に至ったのである。 さて、翻って日本。'18年1月26日に厚生労働省が'17年10月時点の外国人雇用者数を発表したのだが、何と127万人超。'16年10月と比較し、18%も増えた。日本の憲政史上、安倍政権ほど「移民」を受け入れた政権は過去に例がない。野田政権期と比較し、すでに外国人雇用や数は60万人(!)も増えた。ほぼ、倍増である。 厚生労働省は、増加の要因として、●政府が推進している高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること●雇用情勢の改善が着実に進み、「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分に基づく在留資格の方々の就労が増えていること●技能実習制度の活用が進んでいること を挙げているが、根本的な原因は異なる。実質賃金の低迷が日本人の「働くべき人たち」を労働市場に導いていないのだ。 何しろ、わが国には「高齢者世帯」「母子世帯」「障害者世帯」「傷病者世帯」以外の「その他の世帯」の生活保護受給が27万世帯もいる。生産年齢人口「男子」の生活保護受給者が労働市場に戻るだけで、少なくとも'17年の外国人労働者の増加分はカバーできたはずだ。 さらに、「子供・若者白書」によると、15歳から34歳までの「非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」、いわゆるNEETの数は、57万人('16年時点)。日本では、いまだに「働くべき人が働いていない」がゆえに、人手不足という現実があるのだ。むろん、主たる理由は少子高齢化による生産年齢人口比率の低下なのだが。 外国人労働者について伸び率でみると、最も高いのがベトナム人(対前年比39.7%増)で、2位がネパール人(同31%増)であった。中国人は、もちろん人数は最も多いが、増加率は対前年比8%。すでに、日本は中国人民の労働者にとって賃金的に「魅力的な国」ではなくなりつつあるのかもしれない。大変むなしいことに、コンビニ業界や運送業界、土木建設業界を先頭に、人手不足を補うための「生産性向上」のための技術開発、設備投資は進みつつあるのだ。 ちなみに、日本で増えている外国人労働者は「技能実習生」「留学生」など、将来的には「帰国する人々」ばかりである。彼らは長期的な企業の戦力にはなりえない。 未来について真摯に考えるならば、わが国の人手不足対処は、短期的に技能実習生、留学生でしのいだとしても、将来の生産性向上のために「今」技術投資、設備投資、公共投資、人材投資という4投資を拡大しなければならないことが理解できるはずだ。 人手不足を、生産性向上のための投資でカバーする。まさに、これこそがわが国に高度成長をもたらした「経済成長の黄金循環」なのである。この「現実」に、日本国民がいかに早く気が付くか。わが国の運命は、まさにその一点にかかっているのである。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2018年02月17日 22時00分
フリーアドレスで生産性上がる?物理的な労働環境も見直す時代に
2月12日に放送された『THE NEWS α』(フジテレビ系)では、先日移転したばかりの三菱地所株式会社のオフィスを特集。不動産のプロが手掛ける働きやすいオフィスの実態を追った。 オフィス内は、部署ごとの仕切りがなく、開放的な空間になっている。仕切りを設けない理由について、ファシリティマネジメント室長の竹本晋氏は「フリーアドレスということで、その部署の緩やかゾーンの中で『大体この辺に座ってください』というルールは作っておりますけど、その中ではどこに座っても構わないという形にしています」と働きやすいリラックスした雰囲気を作るため、仕切りや個人の席を作らないようにしていると説明。 また、フロアの中央に大きなテーブルがある理由を「例えば20人くらいのプロジェクト会議を急にやらないといけない時に、パッとここでやったり、一番、人が集まりやすいところに、自然に集まれるような空間を作ったということで、あえてビッグテーブルを置いてあります」とすぐに会議が行えるようテーブルの設置場所にもこだわりを持っているようだ。 ただ、フリーアドレスになってしまうと、用件がある人を探すのに苦労してしまうのではないかという疑問も沸いてきそうだ。だが、竹本氏は「今回の移転に合わせて(社用携帯を)iPhoneに一本化しまして、これで内線・外線・携帯電話の機能をすべて集約している。このiPhoneのBluetoothと会社の至る所に仕込んであるセンサーを同期させてですね、社員のおおよその位置がわかるシステムを入れています」と社内GPSを導入しており、フリーアドレスで生じるデメリットを減らす取り組みも行っているらしい。 人間の行動は環境に依存しやすい。閉鎖的なオフィスだとコミュニケーションも生まれにくく、仕事へのモチベーションも高まりにくい。働き方改革が叫ばれているが、残業時間や女性の就業率だけでなく、オフィスのあり方を見直す必要がありそうだ。
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社会 2018年02月17日 14時00分
「民業圧迫」の声が続出するジリ貧日本郵便のコインパーキング展開の波紋
民営化から10年を経た日本郵政。そのグループ子会社で全国各地に遊休一等地を持つ日本郵便が、それらの土地を活用して『ポスパーク』と称するコインパーキング、有料駐車場を全国展開することを決め、全国の大手駐車場業界に波紋が広がっている。 日本郵便の計画では、『ポスパーク』は今年3月までに、東京都など首都圏を中心に20カ所の時間貸し駐車場を設置する。4月以降は全国に拡大させ、5年間で約150カ所の駐車場を設置する予定だという。 「日本郵便は、毎年減り続ける手紙やハガキ、今年も1億通減った年賀状など、ネット全盛時代の煽りを食い、郵便事業はジリ貧の一途をたどっている。その穴埋めとして何とか展開したかったのが、不動産事業。しかし、こちらも野村不動産の買収話が合意に至らないなど、いま一つ展開がにぶい。3年前には、よかれと思って約6200億円を投じたオーストラリアの物流会社買収が実質失敗し、昨年、ようやく減損処理したばかり。宅配便はネット通販の伸びで成長が期待できるが、それ以外はなかなか厳しい。そうした状況を少しでも回復させたいという思いからなのでしょう」(業界関係者) 有料駐車場事業が、実際に穴埋めとして役立つのか。全国の貸し駐車場の市場規模は現在、5兆円以上あると見られている。しかし、業界大手と言われるのは数えるほどで、業者数は1500とも2000とも言われ細分化している。 「大手トップは、なんといっても黄色い“Times”の看板でお馴染みの、パイオニア的存在でもあるパーク24。次いで、2位が三井不動産販売系列のリパーク、第3位に愛知県のトヨタグループの地域で強い名鉄協商パーキングが続く。しかし、この3社を合わせても売上高はトータルで約2300億円程度。数兆円は多くの中小企業によって占められているのです」(企業誌記者) そのため、競争は激化しているものの、まだ日本郵便が割って入る余地が十分にあるということだ。 「東京都における路上駐車が毎秒6万3000台という統計もある一方、例えば、月極駐車場はあっても時間貸し駐車場は絶対的に不足している状況。荷物の積み下ろしに高い料金を払わざるを得ないなど、駐車場は需要と供給がうまくマッチングしていないケースがまだ非常に多いのです。そこで、全国の都市部を中心に優良地を持つ日本郵便が、起爆剤として駐車場事業を打ち出したということです」(同) しかも日本郵便は、今回の駐車場運営に限って言えば、かなり周到な準備を重ねている。 「'12年の時点で、郵便局の不正駐車を防ぐ目的も合わせ、最大手のパーク24と組み駐車場業務の在り方を模索してきた。それから5年間、ノウハウを大いに蓄積したことで、ポスパークの展開に至ったのだと思われます」(前出・業界関係者) また、今回の動きを本格化させた背景には、昨秋に日本郵政の投資子会社、日本郵政キャピタルが、東証マザーズ上場のフィル・カンパニーに5億円を投資、業務提携していることがある。 フィル社は、ここ数年、“空中店舗”という新コンセプトで東京・原宿などの繁華街に次々に若者向けの店舗展開をしているデベロッパーで、大都会に多くみられるコインパーキングの上に店舗を設けている。 「駐車場の土地所有者が、駐車場だけではなく、テナントからも収益を受けられるというのがコンセプト。しかも、駐車場の台数スペースに影響がないように、建物の柱にも一工夫を凝らしている。さらに、店舗は流行に敏感な若者などが訪れてみたいと思えるよう、全面ガラス張りなどのお洒落な設計になっている。そのため、フィル社が手掛ける店舗には、テナントが殺到するといいます。そうしたことから、新たな事業に投資する土地所有者も増えているのです」(デベロッパー関係者) このフィル社と提携したということは、今後、日本郵便は駐車場事業に“空中店舗”を加えて全国展開するという可能性もあるという。 「フィル社の過去の店舗展開が成功してきただけに、各方面の期待も高まっています。しかし一方で、駐車場事業者間からは、反発の声も高まっている。そもそも日本郵便が持つ一等地は民営化前の国の財産であり、それを使って駐車場事業や店舗展開をすることは、民業圧迫になるのではないかという意見です。そうした意味で、今回の日本郵便の有料駐車場展開への動きは、業界に波紋を呼んでいるのです」(業界関係者) いずれにせよ、ポスパークは日本郵便の思惑通り、業績回復の材料となるのか。肝いりの事業だけに、他の有料駐車場企業との争いとともに行く末に注目だ。
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社会 2018年02月16日 14時00分
ジャパンパワーの復調を担う「アイワ」ラジカセの復活
バブル期に流行した商品のリバイバルブームが起きている。任天堂の『ミニファミコン』などは、あまりの売れ行きに発売後すぐに品切れとなってしまったほどだ。そんなブームの追い風に乗っているのが、バブル以前の頃から若者を音楽の世界へといざなっていた、アイワのラジカセだ。 「当時、軒並み10万円クラスの高価なステレオコンポが店頭に並んでいる中、それらに手が届かない若年層を狙ったのがアイワでした。高価な他社製品に対抗して5万円以下のラジカセを販売し、'80年代に大ヒットしました。FMラジオの洋楽番組をカセットに録音して楽しむというライフスタイルを10代の若者に浸透させたのは、ソニーやケンウッドやビクターではなく、アイワといえるでしょう」(ガジェット誌編集者) 商品スペックに記された『スーパーウーハー』『メタル対応』『低ワウ・フラッター実現』などの言葉にトキめいた人も多かったことだろう。しかし、'90年代後半からより低価格で攻める中国をはじめとした海外メーカーなどに押されてしまい、販売が低迷したため2002年にソニーに吸収合併された。その後も、ソニーブランドとすみ分けが模索されたが、'08年にアイワブランドの製品はすべて終了、休眠状態となっていた。 そんなアイワブランドを、もともとソニーの小型ラジオの生産を一手に引き受けるなどしていた秋田県の『十和田オーディオ』がソニーから譲り受け、復活させたのだ。昨年末から『アイワ』製品を続々と発売させ、現在、好調な売れ行きを見せている。 「低価格路線を貫いていたアイワだったからこそ、当時の若者にとって初めて所有した電化製品がアイワという人が多い。今後、アイワはラジカセにとどまらず、4Kテレビ、ネットスピーカーなどの販売や、かつてシェアの高かったアジアや中東への進出も予定しています」(同) アイワ製品の復活は「バブル再び!」というノスタルジーも含みつつ、ジャパンパワー完全復活の狼煙となるのか。今後の動向を見守りたい。
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社会 2018年02月16日 12時40分
「ながらスマホ」で自転車…77歳女性を死亡させた女子大生のあまりにもひどい状況
15日、神奈川県川崎市の路上で「ながらスマホ」をしながら自転車に乗り、歩いていた77歳の女性と衝突し、死亡させたとして、20歳の女子大生が重過失致死容疑で書類送検された。 送検された女子大生は昨年12月、川崎市内で左手にスマートフォン、右手に飲み物、左耳にイヤフォンという状態で電動アシスト自転車に乗り、路上を走行。スマホをポケットに入れようと前方から目を離したところ、歩いていた女性と衝突した。 女性は病院に搬送されものの、強い衝撃を受けた模様で、残念ながら息を引き取る。女子大生は取り調べに対し、「人影が見えたがぶつからないと思った」などと述べているという。 両手が塞がっている状態ではブレーキをかけることができないため、ぶつかると思っても止まれなかった可能性が高いのだが…。 自転車による事故は、昨今社会問題化。「ながらスマホ」やイヤフォンを耳に付けた状態で乗ることは超危険行為だが、何食わぬ顔でそれを見かけることは、多々ある。 また、道路の逆走や歩道の走行、さらには信号無視など、一部の人間による違法運転も目につき、今回のように死亡事故に発展することも。 道路交通法の改正で自転車の運転に対する取り締まりは強化されているが、学生には認知が不十分であると思われることもあり、事故まではいかなくとも、歩行者や自動車運転者が危険を感じるケースは多いといわれる。 それだけに今回の「ながらスマホにイヤフォンに飲み物」で自転車に乗り、死亡させた女子大生については、ネットユーザーからは批判が噴出。「同じことを防ぐ意味でも厳罰にするべき」「刑が軽い」「殺人と変わらない」「この子が将来人の親になるのは許せない」など、過激な意見もあった。 自転車を軽く考えている人間は少ないと思われるが、ぶつかれば重大事故を招く「凶器」。「ながらスマホ」やイヤフォンなどはもってのほか。 通勤・通学で自転車を使っている人は、ぜひ気をつけて運転してほしい。
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社会 2018年02月16日 08時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 宇野宗佑・千代夫人(下)
前号で宇野宗佑が千代と出会って間もなく、「本当に早く(結婚の)返事をくれなかったら君と刺し違えて死ぬ」と“迫力満点”で口説いたことを記したが、なぜ千代にそこまで惚れたのかについては、宇野自身の次のような告白がある。 「まあ、一目惚れですナ。面食いじゃないけど、やっぱり顔がよかった。それに、着物から見える首筋かな。逢い引きでは、京都の松尾大社にも行った。昭和23年(1948年)頃は、まだ男と女が手をつないで歩く人は少なかったが、ちゃんと手をつないどる。後ろから手を回して、ちゃんと家内が私の腕を持っておった」(『宝石』平成5年6月号) 千代は京都の茶道・裏千家の13世円能斎の実弟、広瀬拙斎の次女という名門の出である。京都府立第二高等女学校を卒業、製薬会社に就職したが、終戦の年に退職してしばらく兄の家にいた。そこに、シベリアで一緒に抑留されていたその千代の兄の京都の家に宇野が立ち寄ったのが、2人の出会いであった。挨拶に出てきたのが、千代だったのだ。宇野は神戸商大のとき学徒出陣で北朝鮮へ行き、終戦とともに捕虜になってシベリア抑留を余儀なくされていたのだった。出会って間もなく、前述のような経緯があって、たった1カ月程で結婚ということになった。ヤルことは素早い宇野である。 しかし、新妻の千代にとっては、嫁ぎ先の宇野家というのがなかなかタイヘンであった。宇野家は近江・滋賀県で明治初期からの造り酒屋。宇野は4代目当主であった。祖父母、両親、弟や妹など合わせて16人の家族のほか、酒の仕込みの杜氏などの従業員も冬場にはドッと集団で集まることから、食事、洗濯などでテンテコ舞いの日々を送らされた。 ちなみに、宇野は酒にめっぽう強く、「呑ませれば一升も軽い。政界でも酒豪“3本指”に入った」と、のちに衆院議員となった中曽根派の担当記者の証言がある。総理になって神楽坂の芸者を「3本指」(月の手当て30万円)で口説いて大スキャンダルとなり、その座を追われた宇野だったが、「3本指」にはどうもエンがあるようだ。 結婚から2年目、宇野は滋賀県議選に打って出、29歳でトップ当選を飾ったが、このときも千代は長女を出産して間がなかったが、メガフォンを持って夫の選挙戦に巻き込まれた。まさに、休む間のない新妻生活であった。 宇野はその後、県議2期を経て衆院議員に転じ、何をやらせても手堅くこなす実務型政治家として定評があり、防衛庁長官、通産、外務など大臣を5ポストも歴任、そのうえで総理の頂に立ったのだった。そしての、「3本指」スキャンダルによる失脚であった。 このスキャンダルにより総理在任中の69日間を「針のムシロ」ですごした千代としては、退陣直後の総選挙はいよいよ“背水の陣”でもあったのだった。当時の中曽根担当記者の証言がある。 「それまで楽勝の選挙を続けてきた宇野は、演説が終わると必ず壇から下りて聴衆と握手、頭の下げっ放しだった。まさに、プライドを捨てた選挙だった。夫人は、連日、お願いの電話をかけまくっていた。まま街頭に出たときは、宇野の女性問題には一切言及せず、『夫は年とともに私を大事にしてくれるようになりました』などとだけで頭を下げていましたね」 フタを開けると、新聞各紙の戦前予想は「ギリギリ当選か」というものだったが、前回票を大きく上回る形で、なんとトップ当選を飾ることができたのだった。新聞はおおむね「女性問題をバネに、攻めの姿勢で臨んだのが功を奏した」と総括した。 宇野という政治家は、実は一方で趣味人、粋人との評があった。言うなれば、「文人政治家」ということである。自註句集など、俳人として10冊ほどの著作もあり、ピアノ、ハーモニカは玄人、絵画、書もよくやるし、麻雀、カラオケ、ダンスも巧みで、剣道も正真正銘の五段の腕前といった具合だった。また、人形の収集はじつに2万5000体に及び、自ら器用に郷土人形の制作もやってみせたものである。 その上で「犂子」との俳号を持ち、その句集『宇野犂子集』には、次のような“名句”が散見できるのである。なにやら、ここでもまた「3本指」をホーフツさせるような粋な一句である。小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。