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吉原界隈を真面目に散策する(2)

 悲しい魅力にあふれた町、吉原。伝奇小説や落語では、情死などにまつわる幽霊話もたくさんある。
 似たような話はないのだろうか。

 昭和59年に界隈にあったウイークリーマンションは7つ。平成5年になると20に増えた。そして現在では、吉原エリアに程近いウイークリーマンションには、嬢さまの長期借り手が殺到。およそ「空きが出ることはない」(地元不動産屋)というのが現状のよう。

 その借り手のひとりが、美和さん(25歳)だ。明るい茶髪・色白で華奢な体躯の彼女は、非常に人なつっこい女性。ヘルスなどの風俗のフルコースを経て、大阪からやって来たらしい。
 彼女が、こんな話をした。
 「今でも、欝になってウイークリーマンションから飛び降りる子はいますよ。表ざたにならないだけなんです」

 色々と内部ならではの複雑な人間関係なども理由にはあるのだろう。でも中には、現代の情死、ということもあるのだろうか…。
 幽霊については、

 「ボーイさんは、『見た!』ってしょっちゅう言っていますね」(同)
 ということだった。
 筆者が界隈で見たのは、ズダボロの着物のような服を着たまだ若い女性。やはりもうこの世にはいないはずの人物だったのかもしれない。

 なお、急に話は変わるが、伝統のある町だけに食の名店も多く、桜鍋の中江や天ぷらの伊勢屋などのほぼ遺構建築と言ってもいいような外観の店を訪ねてもいいし、三ノ輪や南千住あたりまでエリアを拡げて散策すれば、ハンバーグを食べてもケーキをいただいてもそばをすすっても、中身ぎっしり・ご主人凄腕、という隠れた名店にあたる確立も極めて高かった。実際、そんな意味でも、意外に若い層の新規住人が増えているのがこういった周辺エリアの実情でもあるようだ。

 秘史の散歩はいろいろと楽しい。

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