自分の気持ちに素直になった純平は柳沢春菜(黒木メイサ)に告白するが、一度振った立場であり、「今頃、言わないでください」と取り合ってもらえない。一方で矢代英彦(藤木直人)も春菜からプロポーズの回答を待つ身であった。何としても春菜に会いたい純平は、矢代にプロポーズの返事を聞く場所への同席を頼み込む。それを断られても「矢代さんが振られたら教えて下さい」と頼む。恋のライバルに対して非常識極まりない頼みである。
そもそも矢代は純平から「彼女を幸せにしてやってください」と頼まれた身である。純平が今更、自分が彼女を幸せにすると言うことは身勝手である。それを指摘された純平は、あっさりと「前言撤回します」と答えた。矢代が春菜から振られたことを知ると、嬉しそうな表情をする。自分の思いだけで突っ走り、他者の反応を考えていない。
その後も純平の暴走は続く。春菜の勤務先を知る春菜の弟の優次(玉森裕太)に会いに高校へ行き、下校中の高校生の自転車を奪って勤務先に行く。文字通りの暴走である。オフィスに勝手に入り込み、春菜を探し出して同僚のいる前で告白する。これだけ純平が一生懸命になる理由は、「今、会えないと、もう二度と会えないような気がした」という思い込みからであった。
純平の告白そのものは名シーンである。このドラマは純平のモノローグが多かったため、特定の相手に向けた長台詞があること自体に新鮮なインパクトがある。その内容もタイトルの『幸せになろうよ』に込められた深い意味を明らかにするものであった。第一話で春菜が間違って持っていった純平のペンが最後に大きな意味を持ったことと共に、最初から制作者が描きたかった方向に向けて大団円となった最終回であった。
感動的な告白シーンであるが、大勢の人の温かい理解と協力がなければ成り立たない展開である。純平の身勝手な頼みに対し、矢代の対応は大人であった。矢代は序盤では春菜に酷い仕打ちをするヒールで、後半では温かい家庭を作ろうとした妻に裏切られ、やつれてしまった。イケメン俳優の藤木直人にとってプラス・イメージになる役ではないが、最終回でカッコ良さを見せた。
春菜の勤務先での告白も、警備員につまみ出されても不思議ではない。春菜の同僚が拍手して祝福することも出来過ぎである。もともと純平が自分の気持ちに正直になった契機も桜木まりか(仲里依紗)の情熱的な説得であった。まるで純平を中心に世界が回っているような展開である。
本来ならば反感を抱きたくなるものだが、SMAPの最年少メンバーとして皆から可愛がられる末っ子キャラの香取慎吾が演じると憎めない。香取の持ち味を活かしたドラマになった。
(林田力)