「やっぱり、早瀬さん、オカルト的な話が好きなんだね」
えっ、オカルト?
「今、うれしそうな顔してたよ」
ほんとに…、私、そんな顔をしていたんだ。
それに、もしそうなら、うれしそうな顔をしているところ、吉原君に見られた。
吉原君、どう思ったんだろう。
吉原君が目を細めている。ほっぺたも、楽しそう。
「やっぱり、オカルト、好きなんだね」
どうしよう。なんだか、恥ずかしい。
別のことを話したい。
吉原君に聞いてみた。
「吉原君は、何が好きなの」
吉原君のことだから、歴史かな。
あっ、急にまじめな顔になった。
「早瀬さんのこと、好きだよ」
言われちゃった。でも、「好き」って言ってくれたの、初めて。
うれしい。
けど、私、こういうとき、どうすればよいのかわからない。
同級生の人たちなら、かわいらしく笑って、気の利いた言葉を返すのだろうけど、私にはできない。
黙ったまま、下を向いてしまった。
土の道のなかで、少し大きめの石が、頭を出している。
石に落ち葉がつかえている。落ち葉は風に飛ばされて、吉原君の靴に引っかかった。
落ち葉が、風で揺れている。吉原君の靴を、くすぐっているよう。
でも、落ち葉って、かさかさしている。手に取って親指と人差し指でつまんだら、ぽろぽろ崩れてしまいそう。
落ち葉は、靴からも飛ばされて、がけの下へ消えていった。
静かだ。
ここには、私と吉原君しかいない。
吉原君、今、どんな顔をしているのだろう。
私のことを見て、どう思っているのだろう。
けど、私、真顔でうつむいちゃったから、吉原君、私が吉原君のことを好きじゃないって、思ったかも。
吉原君が、せきばらいをした。何か、しゃべる。
「キスしていい?」
それで今日は一日、様子がへんだったんだ。
けど、どうしよう。こういうとき、どうしたらよいのだろう。手をつないだこともないし、それに、まだ昼間だ。
でも、いやだって言ったら、吉原君に、吉原君のことを好きじゃないのだと思われてしまう。
風だ。石が笑っているみたい。
(つづく/竹内みちまろ)