「ひと昔前は、ミリタリー好きになるきっかけの多くはプラモデルの影響でした。しかし、今はゲームやアニメから。それらが好きなヲタク層がとっつきやすい表現の方法が萌え系のイラストだったんですよ」と話すのは、同シリーズを発行するイカロス出版の浅井大輔氏。実は浅井氏も「松本零士やガンダムが好きで軍事マニアになりました」というから説得力がある。
2005年6月に出版したシリーズ1作目「萌えよ!戦車学校」の発売時は「正直、爆弾を投げる気分でしたね」という。最新作「萌えよ!戦車学校IV型」と比べれば一目瞭然なのだが、1作目ではイラストの量や表現はかなり控えめだった。しかし、読者に好評だったこともあり、どんどんパワーアップ。“美少女系ミリタリー”という新ジャンルを確立した。
シリーズの別冊的位置付けで刊行されたハイパー美少女系ミリタリーマガジン「MC☆あくしず」などはぶっとびの極致といえる。カラーイラストを大量採用。ただし、萌えキャラが軍服を着ていると思ったら大間違い。
なんと頭上に戦車を乗せていたり、手足が銃器になっている。かわいいオデコからなぜか戦車の砲台が飛び出すなど完全に戦車を擬人化している。このイラストに“萌える”のは相当なマニアだろうが、細部まで丹念に描き込まれている。
なかには「どうして?」と思うほかない過激なイラストも。最新作「萌えよ!戦車学校IV型」の表紙は、素肌の美女が乳首をサスペンダーで隠しているだけ。帯のキャッチコピーも「次もイタリア込みでやろうぜ!」と日独伊三国同盟を想起させる文言でパンチが効きすぎている。
しかし、勘違いしてはいけない。イラスト以外はいたって本格的な内容となっている。自称ベテランのミリタリーマニアは「最初はバカにしてたけど、読んでみたら情報量が豊富でしっかりしてましたね」と評価。一見、ふんだんに盛り込まれた萌え系イラストに目を奪われがちだが、記事がしっかりしている。変わり種には違いないものの、初心者にもとっつきやすくマニアの期待も裏切らない充実ぶりだ。
勢いに乗る同シリーズ編集部の悩みは「戦車の型には細かい設定があり、イラストを描いてもらうのに相当時間がかかってしまう」こと。それだけ本物にこだわっている証しともいえる。
最近では、18禁ゲームのシナリオライターがミリタリーライターを兼任するケースが複数あるとか。一般的にミリタリー分野ははやりすたりがなく、保守的で根強いファンに支えられるとされる。しかし“萌え系”という新しい風が吹き、新時代を迎えようとしているのかもしれない。