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芥川賞作家・金原ひとみ×東工大助教授・往住彰文×文芸評論家・藤田直哉ワークショップを観てきた

 9月13日(月)に東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)で行われた、小説家・金原ひとみ氏と東工大「文学機械」グループ・往住彰文氏(東工大大学院社会理工学研究科価値システム専攻助教授)、藤田直哉氏(SF・文芸評論家)の3名によるワークショップを観てきた。

 金原氏の芥川賞受賞作『蛇にピアス』は、タトゥーやピアスなどの「人体改造」がエスカレートし、蛇のように舌を真っ二つに裂いてしまう「スプリットタン」が登場する異色作で、蜷川幸雄監督・吉高由里子主演の映画も話題を呼んだ。往住氏は第12回日本感性工学会大会の実行委員長である。人間の機械化と機械の人間化という点で工学と人体改造は似ていて、今日の顔ぶれに繋がったようだ。藤田氏は現在発売中の月刊誌『ダ・ヴィンチ』10月号から小説家・新井素子氏とSFについて語る連載を始めており、第1回目のテーマは「美容」で、こちらも人体改造とリンクしている。美容と人体改造には美意識の違いこそあれ、根底にあるのは美の追求であろう。

 「なぜ人体改造に興味を持ったのか」との徃住氏からの質問に対し、金原氏は「病気になって健康の大切さを知るように、自分を痛めつけることで逆に生の実感を得たいのだろう」と答え、現に執筆に悩みストレスを感じるとピアス拡張をするそうである。酒や煙草で内臓を虐めることやピアスやタトゥーで皮膚を苛めることは、筋肉を鍛えるために筋組織を壊し再生させるのと同様、自信のある部位ほど強くしたい願望によるのだろうか。

 藤田氏によれば「創作の始まりには様々な動機がモヤモヤしていて、その起因は無数にある」とのこと。往住氏は『蛇とピアス』における女1人男2人の関係性を図式化して解説していたが、この場における女1人男2人の考え方の違いは、金原氏が描く人間関係の難しさとも重なる。この対話が金原ワールドの今後に影響を及ぼすこともあるのかもしれない。(工藤伸一)

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