死と生という普遍的なテーマを扱いながらも凄まじい日常と衝撃なラストを迎える『動くな、死ね、甦れ!』は日本でも支持が熱い。しかし当時、カネフスキー映画を観ている現役女子高校生が何人いたことだろう。都内の大型ツタヤでさえも、ビデオテープの在庫が1本あるかないかだったと思うので気軽に観ることができない。そんな状況の中でも、渋すぎるチョイスをした彼女に監督は興味を持ったのかもしれない。このように二階堂ふみは普段から様々な映画を観ている。そこに彼女を落とすチャンスがある。
映画好きの彼女を落とすには、自宅で一緒にDVDを見ようと誘うのが一番。しかし共に映画を観ただけでは彼女は落ちない。そこで使いたいのがサブリミナル効果である。サブリミナル効果とは人間が通常認識不可能なレベルでビジュアルなどを提示し、潜在意識に影響を及ぼすことが出来るとされる効果だ。コーラのビンは女体をイメージしていたり、シェイクのストローは平均的な乳首サイズなど、意識へ訴えかける仕掛けは世の中に溢れている。映像サブリミナルで有名な現象だと映画館で『ポップコーンを食べよう!』という文字のフィルムを1コマだけ差し込んだところ、売店の売り上げは急増した。このことから意中の女性にさりげなくサブリミナル映像を見せれば、心情の変化を引き起こすことが可能である。
一緒に観る映画は無難に恋愛映画の古典『カサブランカ』でいいだろう。まずはあらかじめ、別の所から持ってきたイジリー岡田が舌を高速で上下に動かしている映像を用意。その映像を編集ソフトを使って、『カサブランカ』の名シーンの途中にさりげなく挿入しておこう。あとは彼女を部屋に呼び、普通に映画を視聴すればOK。やがてあの名セリフのシーンがやってくる。
「君の瞳に(レロレロレロ!)…乾杯(レロレロレロ〜〜ン!!)」
一瞬、なにが起こったかわからない二階堂ふみ。まさかこんな美しい恋愛映画の中で、イジリー岡田が舌をレロレロしてるだけのアップが流れるはずがない! そう思い込んでいるため映画がイジリー風に編集されているとは夢にも思わないだろう。すると彼女は“私の中のペロペロされたい深層心理が幻覚を生んだんだわ”と勘違い。ここまで来れば、二階堂ふみはペロペロしてほしそうにこちらを見てくるはずだ。こんな美人に個室でペロペロしてほしそうな顔をされたら、ジッとしているわけにはいかない。うぅ〜ん、ペロペロ! もういっちょ、ペロペロ〜ン!
というわけで数々の人間が無意識にサブリミナル現象に触れ、目覚めている現実。そんな場所では何が起きてもおかしくはない…。映画好きの芸能人を落とす際は名作映画とイジリー岡田を重ね合わせ、サブリミナル映像を作る。それが恋の始まりの第一歩である。
(文・柴田慕伊)