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本好きのリビドー(236)

◎快楽の1冊
『祝祭の日々︱︱私の映画アトランダム』高崎俊夫 国書刊行会 2600円(本体価格)

★猛烈にそそられまくる作品ばかり

 かつて清流出版から花田清輝、武田泰淳、虫明亜呂無といった〈地味なビッグネーム〉的書き手による映画がらみのエッセイのみを集めた本が続々と刊行された時は心弾んだ。まして夭折の作家、山川方夫の、やはり映画論が中心の「目的をもたない意志」まで出た際には思わず「渋過ぎる…」と呟いてしまったが、いわばそのすべてのレーベルを仕掛けた編集者が著者の、まこと罪作りな1冊だ。

 どのページを任意にめくっても、映画・文学・音楽、みなにまたがって見てみたい、読んでみたい、聴いてみたい気分に猛烈にそそられまくる作品ばかりで困る。たとえば“これからのジャズ・ファンにすすめたいこの一枚”という某誌のアンケートに「クリント・イーストウッド監督の『真夜中のサバナ』(’97)のサントラ盤」を挙げ、「(映画は)イーストウッド作品としては珍しいユルユルの失敗作だが、サントラ盤は超傑作」と語って作曲家ジョニー・マーサーとアメリカ映画史の関わりを紐解く手際のカッコよさ。いっぱしイーストウッドファンを自認し、「ペイルライダー」(’85)以降は全作、封切時に映画館で見ている筆者も「真夜中のサバナ」のつまらなさには閉口した記憶が残るだけに「アレ? 音楽、そんなに良かったっけ?」と焦って探しに出たくなるではないか。

 若き日の村上春樹宅でなぜかLDで小津安二郎の「秋刀魚の味」とリドリー・スコットの「ブレードランナー」を見ることになる話など、人物スケッチも堪能できるが、中でも気になったのは伊丹十三の評価。「お葬式」から「マルサの女」までは楽しめたが、その後はスカスカな感じで正直、見るに堪えなかった。あらゆる才能に過剰に恵まれた観の彼だが、実は何より優れた「テレビ人」だったとは。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 すでに何冊も著書を上梓している「ナンパ塾」塾長・草加大介氏の最新刊『「ナンパ塾」秘伝 口説きマニュアル【完全版】』(河出書房新社/1450円+税)が刊行された。

 今回は【完全版】と題されただけあって、すぐに使える口説きの“話術”がてんこ盛り。口説ける男と口説けない男の違いは何か、デートを盛り上げる会話術や言葉の駆け引きなど、これまで以上に実戦的な内容となっている。

 さらに相手が「新入社員の場合」「居酒屋店員の場合」「ファミレス店員の場合」など、ターゲット別のケーススタディー。LINEの交換やスマホの電話番号をさりげなく聞き出す方法、食事の約束をするにはどういったトークが有効かなど、オクテの男にも至れり尽くせりの秘伝が満載である。

 書かれている内容は、どれもいたって簡単に見えるマニュアルだ。問題は、それを使いこなす今一歩の勇気のない男が多いこと。草加氏いわく「意思を封じ込めてしまうブレーキが自分の心理に発生する」からだそうだ。

 つまり「断られたらかっこ悪い」などの理由から行動を抑制してしまうこと。

 草加氏は言う。「その女性とどうしても付き合いたいという執着心を抱くな」
「時間をかけずに口説け」

 つまり、失敗したら次の機会があるということ。女性は“星の数”ほどいる。ダメなら次の女性へ…と思うのが、どうやら成功への近道らしい。

 今年はいっちょヤッてみるか、そう思わせる1冊。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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