◆あまりにも侮蔑的な就職面接は罪に問えないのか?
<Q>会社の入社試験で圧迫面接。自分が気にしている貧乳や身長が低いことなど身体の特徴までコキおろされました。もちろん不合格。悔しいから侮辱罪で訴えられる?
女子大生に就職のアドバイスついでにホテルまで連れ込んだって大手通信社の前人事部長もいましたね…。それはさておき、就活中の女子大生にはツライはなしです。そこで、労働分野に精通している刈谷龍太弁護士に聞いてみると…。
<A>これはひどいですね。圧迫面接によってストレス耐性をみる…にしてはやりすぎです。
最近では、経験に乏しい人事部員が、圧迫面接を勘違いしてこういったことを行うケースが増えていますが、私も「面接の方法としては不適切でしょうけど、何か罪に問われたりするのでしょうか?」という質問をよく受けます。
結論から申し上げますと、犯罪は成立しません。名誉棄損罪、侮辱罪になりそうなのですが、大衆の面前にさらされているわけではなく、面接官と面接の場所という限られた空間で行われたものにすぎないことから成立はしないと思われます。
◆名誉棄損罪は成立しない。でも貧乳指摘は言い過ぎ! 人格権侵害で慰謝料請求できる。ただし立証が…。
ただ、犯罪は成立しなくても、身体的特徴を指摘することによって個人を貶める発言に対しては、人格権侵害を理由として慰謝料を請求することができます。貧乳は悪いことではありませんが、女性の性的特徴を指摘することは、よほどの理由がない限り正当な行為ということにはなりません。面接のためだった…なんて言い訳は通用しないでしょう。ただ、ネット情報などから圧迫面接があると事前にわかっていて、密かにボイスレコーダーをフトコロにしのばせておく、という準備ができないと残念ながら立証は難しいです。
これからの就活中の大学生は、男女問わず“自己防衛”も必要な時代なのだろうか。
【弁護士プロフィール】
刈谷龍太(かりや・りょうた)弁護士
中央大学法科大学院卒業。司法修習第64期。東京弁護士会所属。
入所直後からセクハラ・パワハラ・不当解雇などのいわゆる「労働問題」を専門に扱う部署に所属。特技はものまねで、事務所内ではムードメーカー的存在でもある。公式ブログ「こちら弁護士刈谷龍太の労働相談所」も更新中。
所属事務所:弁護士法人アディーレ法律事務所 http://www.adire-roudou.jp/