先日、東京都と埼玉県にまたがる“里山”こと、「狭山丘陵」へ行ってきた。「トトロの森」として親しまれているこの森は広大で、“そのまま”の自然がある。雑木林や畑、美しい花たち。さらには、キツネやタヌキ、渡り鳥がここに住み着く。五感を研ぎすますと、僕らと同様に「森」の呼吸を感じる。時間を忘れさせ、異空間に誘い、 優しく包み込む。
雑誌『BRUTUS』でも、以前に「森」が特集されたが、その中で、かの宮沢賢治も自然科学者としての顔も持ち、自然界の生命の神秘を語るストーリーテラーとして、「森」に小さな宇宙として畏敬の念を込めていた、とあった。だが、そんな“宇宙”は、人々の手によって破壊されつつある。この「トトロの森」を懸命に守ろうと、ナショナルトラスト運動として、市民による環境保全がなされている。
歩いている途中、まるでガイコツのような模様を持つ蜘蛛に遭遇した。森を守る番人か。何だか身震いがした。「死」と隣り合わせの「森」。次は、この森で幻想的なホタルを見てみたい。
かつて、誰しも一度は訪れたことがあるだろう「森」。歳を取れば取るほど、また森に来た時、懐かしさと感動が深く染み渡る。そして、子どもができたら、この森へともに訪れ、心と身体に「森」の空気を染み込ませるとよい。「森」の大切さは、こうして受け継がれていく。
帰り道、列車が都会の中を走る。先ほどまでいた空間との違いに、戸惑いを隠し切れない。そして、ふと思う。小学生の時に一緒だった、クマのような「森」くんは元気にしているかな…と。
(「旅ライター」海飛車鱗(うみとしゃりん)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou