ゲゲゲの鬼太郎という作品が、これほどまでにすべての世代から愛される作品となった理由には、何といっても、40年に渡って度々テレビアニメ化されてきたことが大きいでしょう。ゲゲゲの鬼太郎はこれまでに5回、テレビアニメシリーズとして放送されているのですが、今のところ最新作であるアニメ版ゲゲゲの鬼太郎・第5シリーズ(2007年4月1日〜2009年3月29日放送)は、実に中途半端なところで最終回を迎えてしまったのです。
そもそも、この第5シリーズのゲゲゲの鬼太郎は『ダイの大冒険』の原作者であり、最近では『仮面ライダーW』などのメインライターとしても有名な三条陸が担当しており、基本的には一話完結の作りでありながらも、その裏には多くの伏線が張られ、今までの鬼太郎では見られなかった壮大な物語が描かれていることを、多くのファンは感じていました。
視聴率も好調で、視聴者からの支持も得ていたのですが、突然の放送終了が決定。この放送終了の話は本当に突然であったらしく、スタッフも、当初の予定通りに伏線を消化して話をまとめて物語を完結させることは諦めるしかなかったようで、多くの強敵妖怪との決着も、5期鬼太郎の売りの一つでもあった、各都道府県から一体ずつ代表の妖怪が選ばれ鬼太郎の仲間となっていくという「妖怪四十七士」も、四十七人の妖怪が揃う前に終わってしまうという中途半端ぶりでした。
そもそも、この第5シリーズのゲゲゲの鬼太郎は、特に旧作からのファンの間では物議を呼んだシリーズでした。『ドラゴンボールのような熱いバトル展開』、まるで近年の萌えキャラクターのようなビジュアルに変化したネコ娘などを見て「水木しげるの原作を冒涜している!」と怒りを露わにするファンも一部にはいました。
しかし、これはゲゲゲの女房でも描かれていることですが、そもそも水木しげるは、時代や読者のニーズに合わせて鬼太郎というキャラクターを柔軟な思考で変化させていたのです。当初は怖くて、けっして人間の味方でなかった鬼太郎を、愛嬌のあるデザインに変えて、当初はなかった妖怪とのバトルも、見せ場として描くようにしていました。怪獣ブームの頃には、巨大な怪獣のような姿の妖怪を多く登場させたし、成人向けの雑誌では、原作者である水木先生自身が、鬼太郎を欲望(主に性欲)に忠実なキャラクターとして描いていたりもします。
ゲゲゲの鬼太郎・第5シリーズは、水木先生の精神をちゃんとリスペクトしている良作であり、だからこそ、多くのファンが、ゲゲゲの鬼太郎・第5シリーズの放送再開を熱望しているのです。
(「作家・歩く雑誌・水木しげる信者」中沢健 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou