美形の執事がワガママな主人に仕えるパターンは「執事物」とも言うべきジャンルを形成しているが、その連載開始は2004年で執事ブームよりも古い。執事ブーム以前からの作品であり、典型的な執事物とは異なる性格を有する。
主人公らが通学する白皇学院を舞台にした学園物の要素も大きい。何よりも可愛らしい女性キャラが多数登場する萌え漫画になっている。ハヤテとナギの関係も最初から執事と主人ではなかった。誤解からハヤテを恋したナギがハヤテの借金を立て替え払いして執事に雇ったことが出発点である。
さらに物語の進展によって、ナギ達は三千院家の豪邸から出て、古アパート「ムラサキノヤカタ」に住むことになる。ハヤテに恋する桂ヒナギクやハヤテの初恋の人である天王州アテネらが「ムラサキノヤカタ」の賃借人になり、ハーレム設定が強まった。
さらに、この巻では女装させられたハヤテを女性と勘違いした水蓮寺ルカが積極的にアプローチする。これまでもハヤテは女装させられ、綾崎ハーマイオニーなる偽名まで存在する。しかし、今回の女装は従前とは一味異なる。準ヒロインの西沢歩の私服を着るという新鮮味のあるものであった。
その女装したハヤテが再会したルカは大人気アイドルという設定である。漫画に登場する芸能人キャラクターは性格が悪くて高慢という設定が定番であるが、ルカは対極に位置する。不幸な境遇で育ちながらも、他人を信じる心を持ち続ける。そのまっすぐな性格は人見知りが激しいナギとも会ってすぐに打ち解けたほどであった。
他人を信じるが故に嘘が嫌いなルカに、男性であることを隠すハヤテは嘘に嘘を重ねる状況に陥ってしまった。ルカとハヤテの今後の関係に注目である。
(林田力)