厩橋というだけあって、橋の随所に馬のレリーフがちりばめられている。子供ウケを狙った幼稚なアニメ絵ではなく、美術工芸品を思わせる本格的なタッチ。馬の親子などが立体的に描かれており、都を流れる隅田川にふさわしい細工といえる。かつて西岸にあった米蔵用の厩にちなんで命名されたという。
隅田川には何本もの橋が架けられている。厩橋の上流にあるのは、大きなアーチ1つの駒形橋。浅草駅に近く、毎年7月に東京の夜空を彩る隅田川花火大会を見学する絶好のポイントとして知られる。下流には、アーチ橋ではなく橋脚部のしっかりした蔵前橋。いずれも比較的近い距離にありながら、橋のかたちが異なるからおもしろい。屋形船から仰ぐ橋はどれも雄々しく、なかでも厩橋は橋全体が芸術作品のようなダイナミックさを醸し出す。
地上に目を移すと、厩橋の周辺にはおもちゃや工具、材料の問屋が集まる。あくまで業者向けのおもちゃ問屋だが、散歩がてら店内をのぞくと、古き良き昭和時代の懐かしいおもちゃと再びめぐりあえた。馬にちなんだおもちゃがないか探してみたが、残念ながら見当たらなかった。橋のふもとには老舗の大手玩具メーカーであるエポック社のビルがそびえている。