『ろくでなしBLUES』は森田まさのりが1988年から1997年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載したヤンキー漫画が原作である。演劇を通してEXILEのテーマを伝えるパフォーマンス集団「劇団EXILE」によって2010年に舞台化された。主演の前田太尊役の青柳翔を始め、舞台のメンバーがドラマのキャストになっている。
単行本の累計発行部数5000万部という往年の人気漫画の映像化ということで話題になったが、原作が連載された当時と現代では若者文化が大きく異なっている。現代では不良やヤンキーは廃れ、ダサいものと認識されている。代わってチーマーやギャル男が登場し、今では男性が草食化したと指摘されるようなった。
時代状況が変化した中で『ろくでなしBLUES』を古典として描くのか、現代化するかが注目されたが、ドラマでは登場人物紹介時に漫画のカットを挿入するなど原作を意識した演出になった。主演の青柳翔らの不良高校生は前時代的なヤンキー・ファッションで身を固めている。青柳はヒゲを生やしており、原作の前田太尊以上にバンカラな印象を与える。
もしドラマを現代化してイケメン・ホストのような不良高校生を登場させたならば原作ファンから猛反発を受けることになる。この点では原作ファンの反発を回避できるが、やはり現代の高校生とのギャップは残る。そのギャップを埋めた存在が、ヒロインの七瀬千秋(大政絢)と今井和美(北原里英)である。
雑誌モデル出身の大政絢や国民的アイドルグループに成長したAKB48の北原里英は文字通りにイマドキの女の子であり、ドラマでも現代的な女子高生を演じている。特に千秋はドラマでは太尊の暴力的傾向に抗議して蹴りを加えるなど、寡黙で純情な原作のキャラクターから離れている。
前時代的なヤンキーである男子高校生に対して、女子高校生だけが現代風である。登場人物は男子が圧倒的に多く、現代風の女子高生二人はドラマから浮いてしまう危険もある。この二人が前時代的なヤンキー作品に現代の視聴者を引き込む橋渡しになるのか注目である。
(林田力)