【Q】引退しても復活するAV女優やプロレスラーの引退記念DVDや引退興行は詐欺にならないの?
個人的には「アウト」です、この案件は! 何度「引退」という宣伝文句につられてDVDを買ってしまったことか(涙)訴えてやる! 愛甲恵介弁護士、どうですか? 訴えたら勝てますか?
【A】巷で「辞める辞める詐欺」といわれているやつですね。結論から言うと、詐欺とされる可能性は低いのではないでしょうか。詐欺罪(刑法246条)が成立するためには、(1)欺罔行為(騙すこと)、(2)錯誤(騙されること)、(3)お金を支払うこと、(4)因果関係、(5)詐欺の故意が必要です。ここでいう故意とは、本当は引退する気はないけど引退すると装ってお金を取ってやろう、という認識のことをいいます。一時的であれ、表舞台から姿を消したという事実があるのであれば、上記の故意の立証は難しいでしょう。民事上の詐欺取消し(民法96条1項)が認められるかという問題も同様です。
◆「故意の詐欺」立証は難しい
そもそも、引退記念DVDを購入したり引退興行に足を運んだりするような熱心なファンであれば復活は素直に嬉しいものですから(私自身も幾度となく経験しました)、このような法律問題が紛争まで発展することは実務上あまりありません。
◆大仁田厚は6回引退した…引退・復帰もエンターテイメントと捉えれば
例えば、大仁田厚氏は通算6回も引退をしていますが、引退・復帰もエンターテイメントであるプロレスの一部と受け止めているファンの方が多いのではないでしょうか。これは何もプロレス業界に限った話ではなく、引退と活動休止の違いが曖昧になってきている昨今ですから、将来の復帰も予期できたということになれば、そもそも「騙された」という前提すら欠くことになり、詐欺とは認められないことになります。
ギョーカイ的には「お約束」みたいなもので、目くじらを立てるのは野暮というものでしょうかねえ…。
【弁護士プロフィール】
愛甲恵介(あいこう・けいすけ)弁護士
明治大学法科大学院卒業。司法修習第65期。東京弁護士会所属。行政書士、宅地建物取引主任者の資格も持つ。趣味は野球観戦で、球場で声援を送るだけにとどまらず、セイバーメトリクスという手法を用いて選手の成績を分析している。また特技は少林寺拳法で、キックで木製バットを折ることもできる。
所属事務所:弁護士法人アディーレ法律事務所 http://www.adire-bengo.jp/