本拠地初戦となる第4戦をエース上沢直之で落とした後、ちょっとヤバかったのだ。新庄監督は「札幌からが開幕だと思っているんで」とコメントしてきた。開幕カードのソフトバンク3連戦では救援投手を大量投入するオープナー作戦も敢行して凌いだ。「ここからが本番」とも言ってきた札幌でも連敗。本拠地初の3連戦も全敗となれば、「采配批判も出始めるのでは?」と危惧されていたのだ。
「もう少しドラマが欲しかった。最後にひっくり返すストーリーがすごく好き。あと5(回)ぐらい負けても(笑)」
試合後の勝利監督インタビューでそう笑い飛ばしていた。
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もっとも、批判噴出を危惧していたのはメディアだけだったが、インタビューでは興味深いコメントも聞かれた。
「淺間(大基)クンって、あんなだったっけ?」
この日、スタメンに抜てきした淺間は2回に先制の2ランを放っている。新庄監督が「おや?」と思ったのは、スタンドインのベース一周。淺間は一塁ベースを蹴った後、何度も右腕でガッツボーズを作ったのだ。
どちらかと言えば、寡黙なタイプである。それが感情を露わにしたのだ。
「そのガッツポーズで打線もノッたと言ったら、褒めすぎですかね?」(球界関係者)
新庄監督は前向きな姿勢を買う。感情を表に出し、結果が伴えばそれが自信にもつながっていくと考えている。
同日の試合を思い返してみると、淺間以外にもタイムリーヒットを放った選手たちは、ベース上から自軍ベンチに向かってガッツポーズを見せていた。
ベンチにいた選手たちも声を張り上げ、握り拳を突き上げていた。この明るさと勢いが新庄監督の求めていたチーム像なのだろう。
「新庄監督は監督室や自宅で、負け試合を何度も映像で見直していました。全試合、フルタイムで、ですよ。そこからスターティングメンバーを決め、決めてはまた考え直すというのを繰り返してきました」(前出・同)
試合前のパフォーマンスも“思いつき”でやっているのではない。
本拠地開幕戦でのセレモニーで見せた空飛ぶマシン「ホバーバイク」にしても、実は専門家が遠隔操作していて、入念な打ち合わせが必要だった。どのタイミングで浮上し、どこで着地飛行に入るのかなどきちんと把握しておかなければ、事故にもなりかねない。
「メディアの取材要請も多く、本当に毎日が分刻みのスケジュール状態です。ファンが『何かやってくれる』と期待しているので、その期待を裏切ってはいけないと思っているようです」(前出・同)
現役時代も「カメラの回っていないところではマジメな人」だったが…。
勝利監督インタビューでは「あと5ぐらい負けても」なんて笑わせていたが、負け試合の映像を見直して考え込む様子に、若い選手たちも打たれたのだろう。
ハッキリ言って、日本ハムは戦力面では投打ともに厳しい。経験値の浅い若手を試合の中で育てている真っ最中だ。これからも苦しい試合展開が続きそうだが、新庄監督は惨敗も含めて野球を楽しんでいるのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)