事件が発覚したのは午前4時25分頃。近隣住民から「近所の民家が燃えている」と消防署に119番通報が入った。消火活動により火はまもなく消し止められたものの、焼け跡から当時38歳の母親、当時15歳の長男、当時13歳の長女、当時9歳の次男、計4人の遺体が発見された。当時、父親は仕事のため外出しており無事だった。前日の午後11時に父親が母親に「残業で遅くなる」と電話で連絡した際には、特に異変はなかったという。
当初は事件性のない火災事故だと思われていたが、警察と消防の現場検証により恐ろしい事実が浮かび上がってきた。室内には灯油が意図的に撒かれた跡が残されており、遺体からは損傷の痕跡が残されていたのだ。警察はすぐさま殺人放火事件と断定し、特別捜査本部が設置された。
しかし、捜査はすぐに難航してしまう。事件発生時が未明だったこともあり、ほとんど目撃証言が集まらなかったのだ。現場に残された痕跡はというと、犯人に繋がる証拠はほとんど見つからない一方で、不可解な点が次々と浮かび上がってきた。
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犯人の侵入した形跡が見つからなかったのだ。被害者宅の1階にある窓や玄関などは全て施錠されており、2階から侵入した形跡も残されていなかった。家の外にある車庫には、父親の指示で勝手口の鍵が置かれていたというが、警察が調べたところ、鍵は物置に残されたままだった。犯人がこの鍵を使用したかどうかは分かっていない。
不可解な点はまだ存在する。被害者宅では犬を飼っており、見知らぬ人にはよく吠えると近所で評判だったのだが、事件発生時に犬の鳴き声を聞いた近隣住民は1人もいなかった。火災時、犬は首輪が外されていたといい、被害者宅の車の下に隠れているところを保護された。
遺体の殺害方法も異様だった。被害者の性別により凶器が使い分けられていたというのだ。母親と長女には刃渡り約20センチのナイフで顔や背中などを執拗に刺された跡が残されていた。2人の死因は出血性及び外傷性ショック死と判断された。長男と次男は刺し傷がなく、金属製の鈍器のようなもので殴られた痕が見つかった。頭部の陥没骨折が確認され、急性クモ膜下出血と脳挫傷が死因と見られた。
現場には、貴金属類や預金通帳が残されたままになっていた一方で、被害者らの財布には現金が入っていなかったという。犯人が抜き取ったかどうかは分かっていない。
警察は延べ4万3000人以上の捜査員を導入し大規模な捜査を行ったものの、結局犯人に繋がる証拠はみつからなかった。ただし、警察は身内が事件に関与していると考えていたようだ。2005年に詐欺容疑で逮捕された父親が会見で、「捜査の過程で家族が殺された事件についての取り調べを受けた」と語っている。
父親の不倫を巡り、母親と不倫相手が話し合うこともあったと当時の週刊誌が報じたこともあったが、事件との関係は確認されていない。4人を殺害し、住宅を燃やすという大胆な犯行。一体、犯人は何者で、なぜこの家族を狙ったのか。