事故当日、MH370便は、3月8日の午前0時41分に12人の乗員を含む239人を乗せてクアラルンプール国際空港を出発した。目的地である北京首都国際空港には同日午前6時半に到着予定だった。しかし、離陸から50分後に行われた管制当局との交信を最後に連絡が途絶え、突然管制当局のレーダーからMH370便の機影が消失した。交信を担当した職員によると、パイロットに変わった様子は見られず、交信終了時には「おやすみなさい。MH370」とあいさつを交わしたという。
この時、MH370便から救難信号などは出されなかったものの、通常の飛行コースを大きく外れた奇妙な動きをしていたことがマレーシア空軍のレーダーで判明していた。マレーシア当局によると、MH370便は目的地の北京とは逆方向に引き返したとみられるという。すぐに複数の国による大規模な捜索活動が開始されたが、MH370便はおろか墜落の形跡も見つけることはできなかった。
事件から16日後の3月24日には、マレーシア首相がイギリスの衛星通信会社とイギリスの航空事故調査局による衛星情報の解析の結果、MH370便がインド洋南部に墜落したとみられると発表した。同機が向かった先はカザフスタンとトルクメニスタンの国境からタイ北部にかけての地域、あるいはインドネシアからインド洋南部の海域という見方がされているが、目的は分かっていない。
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2015年7月29日、フランス領レユニオンでようやくMH370便の残骸が発見された。その後、モザンビーク、モーリシャス、マダガスカルなどでも残骸が立て続けに見つかった。マダガスカルで発見された残骸は焼け焦げた状態だったため、MH370便の機内で火災があった可能性が浮上した。しかし、機体の大部分は発見できないまま、2017年1月にマレーシアおよび協力国による捜索は打ち切られた。
原因の究明につながる機体の残骸は発見されておらず、2020年12月現在もMH370便に何が起きたのかは分かっていない。オーストラリアの放送局などは、当時のマレーシア首相が「操縦士の自殺」による事故だったとみていたと報道している。この事件前日に、マレーシアの政治家が同性愛行為によって有罪となっていたのだが、操縦士は彼の熱烈な支持者だったという。政治家の有罪に対する抗議として乗客を巻き込み自殺をしたという報道だったが、確たる証拠は見つかっていない。
また、中国からアメリカに亡命した中国人富豪・郭文貴氏は「中国の高官らによる違法臓器移植の隠蔽」が関わっていると証言。中国で高官らのために囚人や市民を殺害して、臓器移植をしていたグループがMH370便に搭乗していたのだという。他にも航空機のハッキング説など多数の噂が流れているが、証拠となるものは見つかっていない。現在、捜査が打ち切られているため真相は分からずじまいだ。