セ・リーグのペナントレースの行方が懸かった一戦に対し、神宮球場の注目は、40代での初白星をめざす石川雅規。主催者発表によれば、同日の観客動員数は4972人。上限ギリギリのファンが集まったのだから、ヤクルト、DeNAも「巨人追撃の思い」を新たにしたはずだが…。
「4回裏、ヤクルト先発の石川に代打を送られた時、スタンドからため息も聞こえてきました。11カード連続で、ヤクルトは初戦を落としています」(プロ野球解説者)
これで、チームは6連敗(引き分けを挟む)だ。高津臣吾監督は「勝負どころでボールが高めに浮いていた。そこが違えば…」と、いつになく石川のピッチングを厳しく評していた。
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「石川に勝ってもらえば、チームの雰囲気も好転してきます。打線低迷の原因は、石川に勝ってもらいたいとの思いが空回りしているせいもあると思います」(前出・同)
石川で連敗ストップと行きたかったが、その重責は、16日先発が発表された歳内宏明投手に託された。昨年オフ、阪神から戦力外を通達され、四国アイランドリーグplus・香川を経て、NPB復帰を果たした新加入選手だ。
石川が勝ち星を逃した15日、歳内はベンチ入りしていない。高梨など他の先発ローテーション投手たちと神宮外苑を走り込むなどし、最終調整を進めていた。
「ヤクルト首脳陣が歳内に期待しているのは本当です。走者を背負うと慎重になりすぎてコントロールを乱すクセもあり、チームの連敗、打線の低迷などマイナス思考にならなければいいんですが」
阪神時代を知るプロ野球OBが心配していた。
「勝たせてやりたい」「勝ってもらいたい」と思われているピッチャーは、石川だけではなかった。
「高津監督はドライチルーキーの奥川恭伸に期待していました。メディアにマイクを向けられると、今季中の一軍登板はないような口ぶりでしたが、本当は、1日も早く一軍に昇格してもらいたいと願っていました。周囲が諫めていたほどです」(球界関係者)
8月以降、奥川は二軍でもスローペースの別メニュー調整が続いている。「無理はさせない」とする育成ビジョンには高津監督も納得していたが、右肘の炎症、体力不足までは予想できなかった。故障すれば、調整は遅れる。ちょっと気が早いが、こんな声も聞かれた。
「今の奥川の状態では、秋季キャンプでも投げ込み数に制限を掛けなければなりません。そうなると、来季の一軍登板も厳しいのではないか」(前出・同)
投手難の苦しい台所事情にあって、唯一のプラス材料とも言える小川泰弘も国内FA権を取得した。昨年オフの契約更改で複数年の提示を蹴っており、「山田哲人よりも流出の可能性が高い」(前出・スポーツ紙記者)とも囁かれている。勝てない石川のモチベーションも気になる。奥川の育成も遅れている。この日の神宮球場の敗北は、単なる1敗ではない。ヤクルト投手陣の大転換期を予感させるものだった。(スポーツライター・飯山満)