「石井一久GMが仕掛け人です。当初、『ファーム担当のディレクター』に平石洋介前監督(20年よりソフトバンクの打撃兼野手総合コーチ)を充てようとしていました。この時点では、一軍指揮官を平石氏から別の誰かに代えたいだけで、結果を出した監督に解雇を通達するのは忍びないから、ファーム担当なんて聞き慣れない役職を与えたのかと思いましたが」(ベテラン記者)
大村氏を迎え、石井GMがファーム担当の統括者を本当に必要としていたことが分かった。とは言え、大村氏はロッテOBであり、現役時代に楽天とは縁のなかった人物だ。
「大村氏の楽天フロント入りも、19-20年オフ、美馬・鈴木の実質的な交換トレードのように、まとまったフリーエージェント移籍の延長でしょう」(前出・同)
美馬学投手は楽天から千葉ロッテへ、鈴木大地内野手は千葉ロッテから楽天へとそれぞれ移籍し、その後、人的補償や涌井秀章投手の金銭トレードなどが行われた。その結果、両球団の間で7人の選手が大量交換されたことになる。
その過程で、“大村氏の要望”を楽天が知らされたようなのだ。
大村氏は16年の現役引退後、千葉ロッテの「スペシャルアシスタント」の肩書をもらっている。そのアシスタント職の契約は「1年ずつの更新」となっており、19年12月の満了をもって、今回の発表となった。
そのアシスタント職について、他球団からではあるが、こんな内情を教えてもらった。
「元有名選手、監督、コーチを経験したOBが『アシスタント(ないしアドバイザー)』になるケースは他球団でも見られます。そのアシスタントとは、球団の営業か、広報のスタッフなんですよ。要するに、球団の関連会社が企画するイベントに出向し、協力をするのが仕事です。ロッテさんも変わらないはず」(在阪球団スタッフ)
球団のアシスタントになっても、他の仕事は許される。日程が重複した場合は球団の要請を優先しなければならないが、大村氏は専属契約を結ぶ大手メディアに「やりたい!」と要望し、高校野球の取材活動も行っていた。その高校野球の取材を希望した理由というのが、興味深い。
「将来はゼネラルマネージャーや、トレードやドラフト、外国人選手の獲得を統括する様なフロント職に就きたいそうです。その一環で高校野球の取材を介し、将来のスカウティング活動や、自分なりの育成ビジョンを構築したかったようです」(球界関係者)
千葉ロッテは大村氏の希望を聞いていたようだが、チーム編成職に「空き」がなかったそうだ。
「石井GMはチーム強化、大村氏は育成という棲み分けになり、2人が情報を共有して行きます。大村氏はドラフトにも関わることになるので、希望する仕事に就けたわけです。ボビー・バレンタイン元監督の時代を知るロッテOBは、メジャー式のブルペン調整、キャンプ練習を体験しています。それは今でも『ロッテ球団の財産』として、一部が継承されています」(前出・同)
大村氏の移籍により、“ボビー式の調整法”も楽天に流出することになる。
楽天イーグルスは、ソフトバンク、巨人、80年代の西武とも異なる強靱な球団組織を構築しつつある。2020年のペナントレースは楽天が台風の目になりそうだ。(スポーツライター・飯山満)