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社会 2018年03月04日 14時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 海部俊樹・幸世夫人(下)
「クリーン」イメージで出発、内閣支持率も高かった海部政権ではあったが、政権発足1年目、突然の舞台の暗転を余儀なくされた。 折から、東西冷戦雪融けの象徴であったベルリンの壁の崩壊、ソ連邦の解体といった激動の中で、イラク軍のクウェート侵攻に始まった湾岸戦争に直面した。ここから小派閥出身ゆえ政権基盤の脆弱さを暴露、最大派閥・竹下派の意向に翻弄され続け、独自色をまったく放擲してしまったのが暗転への舞台裏だった。 海部首相は湾岸戦争に際し、当初、米国の強い要求により米軍など多国籍軍に90億ドルを拠出、その後、再度の要求を呑んで総額130億ドルものカネをつぎ込んだ。しかし、米政府と自民党の一部から「カネだけでなく人的貢献もすべき」との突き上げを受けると、こんどは掃海艇の派遣を決めるといった具合で、政権の主体性はズルズルと後退した。 そうした中で、竹下派内で剛腕ぶりを発揮し続けていた当時の竹下派会長代行にして幹事長の小沢一郎が主導し、自衛隊を国連のPKO(平和維持活動)の「協力隊」という名目で、PKO協力法案を提出することになった。だが、この法案の中身がなんとも杜撰、さらには、自衛隊の海外派遣を危惧する世論の反対も根強く、法案は衆院段階で廃案を余儀なくされるなど、海部政権はもはや主体性を完全に失っていったのである。 同時に、竹下派内も小沢氏の“突出”ぶりから大揺れ。結局、海部政権では自民党はもはやもたずということで、竹下派主導で政権に幕が引かれ、後継首相に宮澤喜一を担ぐという手に出たのだった。 その宮澤政権にも不満だった小沢は、「もはや政権交代可能な新党を結成するしかない」として、のちに新進党を立ち上げることになる。そこではナント、自ら失望したハズの海部を党首にという“奇策”に出たのだった。自民党内からは、「一体、海部はどうなったんだ」の声も飛んだのである。 この時点、平成7年(1995年)1月の通常国会では、折からの「阪神・淡路大震災」関連が焦点だったが、晴れがましくも衆院予算委員会質問のトップバッターに立った新進党党首の海部には、もはやかつてのような弁舌のキレはなく、存在感再び、もなかった。 一方で、妻の幸世と言えばこの新進党でも「オルガナイザー」の戈を発揮、新進党衆院議員10人の夫人部隊を結成するや、被災地の神戸に入って豚汁などの炊き出しに赴いたものだ。もっとも、この「内助の功」も現地にいたのはわずか半日。メディアからも、「こんなにすぐ帰ってしまうのは、単なるパフォーマンスではないのか」の声も出たのだった。 その後、案の定というべきか、この新進党も党内問題が勃発して迷走、支持率も低迷する中で出たのが「女性党首」案であった。当時の新進党担当記者のこんな証言が残っている。 「どうやら小沢一郎の案のようだった。女性支持層の拡大のため、思い切って女性党首として海部の幸世夫人を立ててはどうかということでした。『元ファースト・レディの肩書きは強いぞ』という読みでもあったようだ。ところが、幸世夫人は外見もハデ目だったことから、『もう少し庶民派のにおいが欲しい』という声が多数出、結局、ご破算になった」 実は、海部が首相の頃、ウソかマコトか海部の女性問題に関する一部メディアの報道が出たのだが、なるほど当時の竹下派議員からは、こんな声が聞こえたものだった。 「あのカーチャンでは、海部が浮気なんかできるはずがないね。海部は恐妻家にして愛妻家、敬妻家で、あの記事は一発でデタラメと思った」 一方、長く海部と親しかった政治部記者のこんな証言も残っている。 「海部は若いときから肉が大好きで、野菜類はほとんど食べず、三木内閣の官房副長官時代、激務も手伝ってぶっ倒れたことがあった。それを知っていた夫人は、結婚後、『そんなことではダメ』と一喝、野菜中心のオリジナル惣菜を無理に食べさせた。それ以後、海部は元気モリモリに変身したのです。 一方の夫人と言えば、長い間、美容体操、愛犬を連れての約5キロ、皇居1周の散歩も欠かさぬ日々を続けた。加えて、ファッション・センスもなかなかで、還暦を超えても10歳くらいは若く見えた。音楽も趣味の一つで、ベートーヴェンを聴いて『今日1日のヤル気が鼓舞される』と言っていた。夫人あっての海部、夫人に尻を叩かれ続けた海部と言っていいのではないか」 海部は、結局、新進党で小沢と合わず、また自民党に復党するという迷走を続けた。そのうえで、平成21年(2009年)年8月の総選挙で落選、政界引退を余儀なくされている。それを境に、幸世の話題も海部の得意の弁舌も、以後、パッタリ姿を消したのだった。=敬称略=(次号は宮澤喜一・庸子夫人)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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芸能 2018年03月04日 12時50分
美山加恋、加藤清史郎… 脱子役から成功するパターンが増加中?
女優の美山加恋が8月15日から開演する“2万人の鼓動 TOURSミュージカル「赤毛のアン」”で、主演を務めることが発表された。美山の主演は、昨年に引き続き2年連続での抜擢となる。 同作ではこれまで、女優の神田沙也加をはじめ、歌手の島谷ひとみ、映画『君の名は。』で声優を担当した上白石萌音などがアン役を担当。有名人を多数輩出してきた登竜門的作品だ。美山も「今年は去年を越えていきたいです!」と意気込みを見せている。 美山といえば、2004年放送のドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」(フジテレビ系)に出演。天才子役として注目を集め、ドラマ以外でも映画、舞台などで活躍してきた。さらに、近年は声優としても活動しており、昨年放送されたアニメ「キラキラ☆プリキュアアラモード」(テレビ朝日系)では、主人公役を1年間務めあげている。 「美山は4月からスタートするアニメにも出演が決まっており、声優も順調のようです。まさに、子役から女優のシフトチェンジに成功した例でしょう。舞台女優や声優をこなすという点で、将来的に戸田恵子のようなポジションの女優に成長するかもしれませんね。」(芸能ライター) また、美山同様、子役から俳優への脱却で注目されているのが、CMキャラクター「こども店長」で知られる加藤清史郎だ。現在16歳となった加藤だが、今月7日放送の人気ドラマ「相棒」(テレビ朝日系)に出演することが話題を呼んでいる。前回放送の予告では、加藤の名前と映像が紹介。その成長ぶりに、ネット上では「かっこよくなりすぎてる!」「イケメン俳優の有望株だな」と歓喜と期待の声が寄せられた。 「人気子役の場合、その後、イメージを引きずり過ぎ、成長期に仕事がなくなるパターンあります。しかし、最近では美山や俳優の神木隆之介など、うまく役者にシフトチェンジするパターンも増えてきています。ビジュアル・演技力の成長ももちろんですが、活躍できる場自体も以前より広がっているのかもしれません。」(同・ライター) たくましい青年に成長した加藤も、今後、脱子役に成功する姿を期待したい。
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社会 2018年03月04日 12時30分
借りる側の意識の問題?増え続ける奨学金破産者!その原因を徹底究明
先月、日本学生支援機構は、過去5年間で奨学金を返済できず自己破産した人が1万5000人もいたことを発表。この事態を受け、3月1日に放送された『ノンストップ!』(フジテレビ系)では、奨学金問題に詳しい聖学院大学政治経済学部教授の柴田武男氏が、奨学金破産の原因を紹介した。 まず、柴田氏は「大学の授業料が高騰して、それに応じて奨学金の借入金額が大きくなっている。それで返済が困難になった」と学費の高騰に原因があると話す。 柴田氏が示した文科省資料によると、1975年の国立大学の初年度にかかる費用は8万6000円だったのに対し、2016年には81万7800円と約73万円も高騰している。私立大学では、1975年に27万8261円だったのが2016年は113万1196円と、約85万円も高くなった。 ただ、柴田氏は借りる側の意識にも奨学金破産を引き起こす原因があると指摘。「だいたい高校3年の4月5月に奨学金の説明がある。その説明を受けて夏休み明けに書類を出して金額が決まっていくが、高校3年生ではなかなか理解できませんから、親が申し込みをほとんどしてしまう」と、学生が若さゆえに制度を理解できていないことを問題視した。 「本当は利用者本人がどんな制度なのか、しっかり勉強して『これは借金だ』『返済義務があるんだ』ということを理解しなければいけない。しかし実際は親が書類を書いてしまう」と柴田氏は説明。借りる張本人である学生の「借りる意識」が芽生えにくいのも問題の一つであると指摘した。 視聴者はインターネット上で「借りる側の意識が低いんだよ」「奨学金の返済が苦しいのは自業自得。借りたら返せ」「近ごろ、奨学金で大学って安易に考える学生が多すぎる」などと反応した。奨学金を借りる側に問題があると考える人は多いようだ。 一方で「賃金の低さを改善する必要がある」「奨学金が返せないような給与の会社が多いのが問題なのでは?」と国内企業の給料の低さを問題視する声も少なくなかった。 高卒の平均生涯年収は約2億4,000万円で、大卒の平均生涯年収は約2億8,000万円とも言われている。高卒のほうが、大卒に比べて4年ほど長く働いているにもかかわらず、4,000万円も差が付いてしまうのだ。 こういうデータを見ると、「借りたお金を返せないなら大学に行くな」と安易に切り捨てるのは安易なのかもしれない。借りる側の意識だけでなく、日本の教育環境や労働環境も一緒に考えなくては、解決の糸口は見つからないだろう。
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その他 2018年03月04日 12時00分
帽子をかぶらないほうが禿やすい?て本当
帽子をかぶるとハゲる」という俗説がある。これは帽子をかぶることで頭皮が蒸れたり、こすれて髪が薄くなるというイメージから来ているのだろう。 確かに、過度に頭皮が蒸れたり、こすれたりすることで、ハゲるということはあり得る。しかし、いくら頭皮が蒸れたところで髪をちゃんと洗えば問題はないし、帽子の着脱くらいで頭がハゲるほどこすれることはない。 むしろ帽子をかぶることで、夏は紫外線による頭皮へのダメージを防ぐことができるし、冬には頭皮の乾燥、寒さからくる血行不良を予防してくれるなど、メリットも大きい。正しく使えば、帽子はハゲの強い味方なのだ。
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スポーツ 2018年03月04日 07時13分
メインはジョー対宮原の三冠戦!全日本プロレスがたまアリ初進出!諏訪魔対藤田が再戦【全日本】
秋山準社長率いる全日本プロレスが、3月25日にさいたまスーパーアリーナ(コミュニティアリーナ)に初進出を果たす。『2018ドリームパワーシリーズ』の最終戦として開催される初のたまアリ大会だが、当日はDDTプロレスも両国国技館でビッグマッチを行うことが決まっている(開始時間はともに15時)ため、興行戦争となる。しかし、日本国内では“ひとり勝ち”が続いている新日本プロレスに、DDT、ドラゴンゲート、大日本プロレスのインディー団体が奮闘している状況下の中、この1年間で一気に復調し台頭してきたのが、新日本プロレスに続く老舗団体、全日本プロレスだ。 全日本はアントニオ猪木が新日本を旗揚げした7か月後、1972年10月に故・ジャイアント馬場が旗揚げ。馬場が1999年1月に死去すると、故・三沢光晴が社長に就任するも、プロレスリング・ノア設立のため退社。その後、馬場元子氏を経て、新日本から電撃移籍した武藤敬司が社長に就任するが、2012年に白石伸生が買収すると、団体が混迷。武藤一派の離脱などもあり、2014年に秋山準が新会社を立ち上げる形で老舗団体を継承した。秋山全日本は石川修司をはじめインディーの選手にも積極的に門戸を広げ、健介オフィスから移籍した宮原健斗を次代のエースに据えて、本来の全日本の持ち味である期待を裏切らない試合内容を提供し続けたこと、マニア心を節々にくすぐる選手を参戦させたり、マッチメイクを行うことが評判を呼び、一時は閑古鳥が鳴いていた後楽園ホールを定期的に満員にできる力をつけている。 今大会は、メインイベントで外国人エース、ジョー・ドーリングに宮原健斗が挑戦する三冠統一ヘビー級選手権試合が決定。昨年10月に諏訪魔に敗れて同王座から陥落した宮原が、その諏訪魔に勝って第59代王者になったジョーの壁を越えることができるのか注目される。セミファイナルは世界タッグ選手権試合、第81代王者のゼウス&ボディガーが、崔領二&ディラン・ジェイムスの元ゼロワン勢の挑戦を受ける。 スペシャル6人タッグマッチでは諏訪魔が、佐藤光留、岡田佑介とのトリオで、因縁深い藤田和之、ケンドー・カシン、NOSAWA論外と6人タッグで対戦。諏訪魔と藤田は、2015年11月に天龍源一郎引退興行でタッグマッチが組まれたが、お互いに空回りしてしまい、観客からはブーイングと罵声が飛び交う試合になっている。今回は諏訪魔のホームリングである全日本マットで対戦するだけに、2年4か月ぶりの再戦は、今度こそシングル実現への布石を打つような凄い試合になるのか?まずは試合を成立させてもらいたい。 その他の注目は、2.3横浜文化体育館大会で、野村直矢&崔領二からアジアタッグ王座を奪取した第104代王者、秋山準&永田裕志(新日本)が、大森隆男&中西学(新日本)の挑戦を受ける。欠場中だった大森はこれが復帰戦となり、中西との久々のタッグにも期待が膨らむ。また、第47代世界ジュニア王者、青木篤志は最強の挑戦者、近藤修司(WRESTLE-1)と対戦。こちらも激戦は必至だ。 他にもKAI、ヨシタツ、火野裕士、渕正信、TAJIRI、西村修、ウルティモ・ドラゴン、鈴木鼓太郎、丸山敦、吉江豊から佐野直まで役者がズラリと揃っている全日本さいたまスーパーアリーナ(コミュニティアリーナ)大会。この大会が終わると、馬場全日本時代から続いている『チャンピオンカーニバル』が4月7日仙台サンプラザホールで開幕するとあって、単なるビッグマッチでは終わらない大会になるだろう。文・どら増田カメラマン・舩橋諄
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その他 2018年03月04日 06時00分
パリ市民からは不満続出不人気だったエッフェル塔
エッフェル塔は、パリを象徴する有名な観光スポットだ。この塔は1889年にパリ万博が開催された記念に建てられたものなのだが、当時のパリ市民にはすこぶる不評であった。「パリの美しい風景に、鉄骨むき出しの姿が似つかわしくない!」「パリをダサくしないで!」という声が、多数上がったのだ。 創建当時のエッフェル塔は、邪魔者扱いだったのである。そのためエッフェル塔はパリ万博後、すぐに取り壊す予定となっていた。しかし、軍隊が軍事通信用に使用することになり、取り壊しは中止されて、現在に至るというわけだ。昔の邪魔者も現在では超人気者。運命とは皮肉なものである。
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その他 2018年03月04日 00時05分
より強い快感を得るためにいやらしい声でシャウトォーッ!!
深夜に隣の部屋からトンデモないあえぎ声が聞こえてきて、ドン引きした経験はないだろうか。マジワリのときに女性は、どうしてあんなに大きな声を出すのだろう? 実はあえぎ声は、自己暗示にかけるために発せられているという説がある。より大きな快感を得るためには、自分自身を陶酔させなければならない。快感で思わず出てしまうのではなく、もっともっと気持ち良くなりたいと、自分であおりまくっているのだ。 抑圧された日常からの解放を求めて、我を忘れるほどの快感にどっぷり浸かりたいとばかりに、今日も隣の部屋ではスケベ声が響く。何という欲張りさん!
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ミステリー 2018年03月03日 23時05分
【TVでおなじみ山口敏太郎の実録“怪”事件簿】怖い話〜笛の音〜
「あんなに恐ろしい体験はないですよ」 筆者、山口敏太郎が京都のイベントでご一緒させていただいたとき、結城さんは口元の髭を揺らし、にこやかに語ってくれた。 京都から車で二時間、S地区という緑豊かなエリアがある。山に覆われたその里を縫うように流れる八丁川は、ツキノワグマが棲息するような秘境を水源にしている。この川の豊かな恵みからは、天然のヤマメなど川魚も豊富に育ち、それを狙った腕利きの釣り師たちが、奥深く分け入ったりしていた。 結城さんも釣りには目がなく、ヤマメを求めてよくこの川に通っており、中流域から上流へ、そして沢の水も細くなる源流まで足をの伸ばしたことがたびたびあった。無論、その川が晴れた日とどんより曇った日では、まったく違う表情を見せることも知っていたし、川を知り尽くしていたつもりであった。 あの日、あれに出逢うまでは…。 数年前には、結城さん自身がこの川沿いの八丁林道で事故を起こしたことがあり、レッカー車でけん引されたこともあった。この時、彼は地元の修理業者から、ヘアピンカーブを曲がりきれず、谷底に落下した事故車について詳しく話を聞いたという。 人里離れた山奥で、冬場は豪雪で知られた同所は、冬場の自殺者・遭難者の遺体が毎年のように回収されている。「そこですわ、いつも死体を置いておく所は。この前も家族連れがテントを張ってたけど、何も知らんからできるんやろねぇ」 その業者はキャンプにうってつけの河原を指さしながらつぶやいた。そんな結城さんに怪異の影が忍び寄る。 ある年の事、シーズン何回目かの釣行は、八月のお盆の真っ最中であった。お盆には殺生をしないと決めていたのだが、今回はフライフィッシングを始めたばかりのT君の日程上、その日に行かざるを得なかった。(まあいいか、T君にフライフィッシングの楽しさを教えてやろう) 結城さんはそんなことを考えていた。 その日は、絶好の釣り日和だった。はやる気持ちを抑えて、二人はクルマを林道の入り口で止めると川に分け入る。二人で交互に毛針を流しながら、ゆっくりと上流へ向かっていく。車ならわずか三十分ぐらいの距離をたっぷり一日かけて釣りを楽しんだ。釣り仲間の間で「八丁の出合い」と呼ばれる、川が二つに分岐している場所までたどり着いた頃には、とっぷりと日も落ち、毛針がほとんど見えなくなっていた。 「お、やばいなぁ、日が暮れてしまう……」 結城さんとT君は急いで竿を収めると、車を置いた場所に戻るため、林道に向かった。釣りに夢中になっていたせいか、いつのまにかだいぶ遠くまで来ており、林道を急いで歩いても車までは一時間ほどかかってしまう。 「あのポイントでライズしたヤマメは、いい形だったなぁ」 などと、今日の釣りの話に花を咲かせながら、川に沿ってくねくねと蛇行する林道を並んで歩いた。だが歩く速さよりも闇が忍び寄るほうが早く、ものの三十分もしないうちに、あたりは夜の世界に変わってしまった。会話が途絶えると、周囲には不気味さが漂う。二人は、知らず知らずのうちに早足になっていた。 と、そのとき音が聞こえた。 「ピーッ、ピリピリ……!」 ほの暗い川から、唐突に笛を吹く音が聞こえる。 (…なんやろ) しばらく間を置いて、少しためらうかのようにまた聞こえた。 「ピー、ピリピリピリ!」 「ああ、まだ川に誰かがいる。こんなに暗いのに釣り好きなやつだなぁ」 結城さんは、川釣りの仲間が合図に使う笛の音に仲間意識を感じた。すると、三回目に聴こえてきた音は、さらに弱々しくなっている。 「ピー、ピリピリピリ」 結城さんは自分のフィッシングベストから自分の笛を取り出し、その人の仲間でもないのだが、俺たちも釣り人だよ、もう帰る途中だよ、という気持ちを込めて、ピリピリピリッ!と川の釣り人の笛に応えてやった。 闇に吸い込まれていく笛の音。その刹那、彼は何か、してはいけないことをしてしまったような気がした。うまく言えないが、その場の空気が突如変わったような気配を感じたのだ。 (あっ、なんか、まずい事をしたかなぁ……その人の仲間と勘違いされると困るな) 結城さんがそう思っていると、突如、二人の背後、つまり歩いてきた林道の奥から、とてつもなく激しい笛の音が聞こえた。 「ピーッ、ピリピリピリッ!」 (えっ、どうして、今まで下の河原から聴こえていた笛が移動したんだ。瞬時にそれも、全く音をたてずに移動するなんてことは不可能では…) 混乱しながらも彼は心を落ち着かせた。ぞくぞくする悪寒を抑えながらも必死に歩く結城さん。相棒のT君もこの異常事態を理解したらしい。ワーッと叫んで、走り出したくなりそうな気持ちを抑えてひたすら二人は歩いた。 (どういうことだろう、昼間には釣り人も、車も見かけなかった、あの笛の音の主はいったい…) そう思った瞬間、結城さんはとうとう後ろを振り返ってしまった。だが、そこには、夜の林道があるのみであった。なんとなく胸をなでおろし、歩をさらに速めようとした時…。 「ザッ、ザッザッザッ……ザッザッザッザッ」 何か、闇の奥から足早に近づいてくる。まるで、われわれ二人に追いつこうとするかのように急いでいる。 (やばい……これは、全くしゃれにならない) 畏怖した結城さんは、T君にも伝えた。 「ぜったい、後ろを見るなよ!」 顔面蒼白でうなずくT君。恐ろしさを少しでも紛らわせるために、わざと砂利道で派手な音を立てた。小石を蹴飛ばし、大声で歌を歌い、拾った枝で木や草をバシバシと叩き、後ろの足音が聴こえないように必死になった。 すると、ようやく前方に車が見えてきた。背後の音も聞こえなくなっている。 「怖かったですね」 T君は震える声で、そう言った。 あの日、この耳で聞いた笛の音、着いてきた足音の正体は何者であったのであろうか。今もお盆になると、夜の川に笛の音が響き渡っているのではないか。闇の川べりで永遠にさまよう笛の音。そう思うとふと結城さんは悲しくなった。 「あの日、僕らは釣り人ではなくて獲物だったのかもしれませんな、笛の音で釣られたのは僕らの方だったんですよ。姿の見えぬ釣り人にね」 結城さんは、にやりと笑った。監修:山口敏太郎
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芸能 2018年03月03日 22時20分
ひっそりと行われていた有賀さつきさんのお別れ会
1月30日に52歳の若さで亡くなった元フジテレビアナウンサーの有賀さつきさんだが、先月下旬、都内のレストランでお別れ会が行われていたことを、発売中の「女性セブン」(小学館)が報じている。 同誌によると、その日集まったのは有賀さんと同期入局した10人ほどの女性たち。有賀さんとともに「女子アナブーム」の火付け役となった現在はフリーの八木亜希子アナと貴乃花親方の妻・景子さん、それに政治家に転身した元議員の三宅雪子さんら。八木アナの呼び掛けで集まることが急きょ決定したという。 お別れ会では、出席者たちが有賀さんと一緒に撮影した写真を持ち寄り、有賀さんとの思い出を語ったのだとか。 残された有賀さんの1人娘は15歳。本来ならば、有賀さんの上司・元夫である元フジテレビ解説委員の和田圭さんと暮らすのが妥当な選択。 しかし、八木アナらは有賀さんと和田さんの関係が決して良好ではなかったことを熟知。お別れ会では有賀さんの1人娘の将来にも話が及び、「全寮制の学校はどうなんだろう」、「(有賀さんの娘を)経済的に支える方法はないだろうか」という話にまで及んでいたというのだ。「一部報道によると、有賀さんが亡くなっていなければ、近いうちに有賀さんの父・洋さんも交え、娘と和田さんと会う予定だったという。おそらく、死期が近いことを悟った有賀さんが娘の将来を和田さんに託そうとしていたのでは」(芸能記者) 先日、一部スポーツ紙の取材に対し、洋さんは残された孫の今後について、「孫から見たら私は第三者。(父親の)和田さんといるのがいいと思う。彼(和田さん)とは前向きに話し合いができています。ただ、孫の気持ちが何より大事ですから」と説明。近日中に3人で今後について話し合うことを明かしていたが、有賀さんの娘の選択が注目される。
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芸能 2018年03月03日 22時10分
フリーになった満島ひかり…独立組の成功例は
1日、女優の満島ひかりが所属事務所「ユニマテ」から独立したことが発表された。同事務所はHPで、「このたび、満島ひかりが弊社の所属を離れ、フリーとして活動をしてゆくことになりました」と報告。「双方誠実に向き合い生まれた結論」と円満退社であることを強調した。 満島といえば、7人組ユニット「Folder」の一員としてデビューするも、その後は女優へと転身。ドラマや映画で主役を務め、多くの賞を受賞するなど、実力派女優として一目置かれていた。 「他の事務所への移籍ではなく、個人事務所を立ち上げることになる場合、理由の多くは“お金”です。満島さんはユニマテに所属してから売れたと言っても過言ではない。そこから離れるとなれば、ギャラの配分などに不満があったのかもしれません」(芸能記者) だが、横の繋がりが強い芸能界では、独立してすぐはなかなか声がかからない。今こそ露出が多いものの、2007年にオスカーのマネージャーとともに独立した南明奈や、2005年にバーニングプロダクションから独立した水野美紀は、一時干される状態が続いていた。 ただ、満島の場合は、お金の問題よりも仕事を選びたかったのでは?という声もあがる。実際、テレビ出演やCMのギャラは高額であるが、女優として一本でやっていきたい満島の意向には沿っていなかったのかもしれない。 女優では2016年に水川あさみが個人事務所を立ち上げているが、今のところ仕事は順調なようだ。女優としての需要が続けば、干されることなく、今後は自分が思うように仕事をこなすことができるのかもしれない。 最近では、芸能人の働き方改革を訴える声も多く、俳優の小栗旬やダウンタウンの松本人志は声をあげて、「芸能人の労働組合を作るべき」と訴えている。現状、芸能人と事務所の契約には労働基準法が適用されない場合が多く、芸能人は事務所の言いなりという状況が続いているのだ。 今後は、芸能人らが労働契約を勉強し、個人事務所を立ち上げるケースも多くなっていくだろう。満島はその先駆けとなれるのか…。
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