そのマンションは鎌倉時代以来、墓地や処刑場、戦時の死体捨て場として使われた土地に建てられている。実際、マンション建設前の発掘調査では大量の人骨が出土した。刀創・刺創・打撲創のある人骨も出土し、戦死者と見られている。
マンション建設地は、関東大震災では津波に洗われた場所でもある。そのような土地であるため、ずっと更地であった。地元住民は「手を付けてはいけない土地」「人が住む場所ではない」と語る。マンション建設時には「あんな土地にマンションを建てるなんて世も末」との声も出た。
最初の異変は、マンションの広告チラシを配布するアルバイト時に起きた。その人物はマンション建設地の由来を知らなかったが、昼過ぎから胃が重たくなるような感覚になり、倦怠感に襲われたという。
勤務前に「現地で大量の人骨が発見されたらしいよ」と言われた同僚も、同様の症状に見舞われた。そこで彼も建設地の由来を知ることになる。最初は都市伝説のようなものと考えていたが、体調を悪くしてから急激に罪悪感が強くなった。最後は仕事しているフリだけで、ほとんどチラシを渡さなかったという。
マンション住民にも怪現象を指摘する声がある。自分一人しかいないのに、夜中に目を覚ましたら目の前に顔があって自分を見つめていた、誰もいない隣の部屋に人影を見た、急にテレビの電源が入ったなどである。
そのマンションの販売時のキャッチコピーでは「思い出」が強調されていた。鎌倉という歴史ある街にちなみ「思い出」を強調したと推測されるが、葬られた人々の怨念も思い出されたようである。
(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)